上島 玲子 理事長、渥美 正彦 院長、上島 真以子 副院長の独自取材記事
上島医院
(大阪狭山市/金剛駅)
最終更新日:2024/12/04
昭和の開院以来、この地で40年近く続く「上島医院」。患者に身近な精神科・神経内科クリニックをめざし、地域の心のケアに力を注いできた。人々の癒やしの場となるハートフルな診療を信条としつつ、現在は睡眠障害を専門に診る部門やデイ・ナイトケア施設を院内に併設し、より重層的なサポートに全力を傾ける。こうした活動の中心となるのは、いずれも精神医学のスペシャリストである3人のドクターたち。先代から引き継いだクリニックの支柱となる上島玲子理事長。その夫で睡眠医療の専門家である渥美正彦院長。理事長の妹で分院の院長も兼任する上島真以子副院長。それぞれに魅力的な3人に、クリニックの診療の特徴や現時点でのテーマをざっくばらんに語ってもらった。
(取材日2024年9月9日)
愛と信念と希望を持って、関わる人の人生を導きたい
まずはクリニックの成り立ちや、現在までの経緯をお聞かせください。
【上島理事長】当院は1986年に父が開業したのが始まりです。その当時は精神科と銘打つと誰も来てくれない時代でしたから、内科・神経内科という看板でスタートし、患者さんは地域のご年配の方がメインでした。それから10年後にこちらへ移転して3階建てのクリニックとなり、堂々と精神科を掲げて診療とデイケアを行うようになりました。精神科とデイケアの併設は、当時は大阪府下でも珍しかったと聞いています。2017年に私が理事長を引き継ぎましたが、地域密着型で気軽に通える精神科という位置づけは開院時から変わりありません。メインの診療スペースは2階で、1階は通所施設のデイ・ナイトケア施設。3階は睡眠障害を専門とする南大阪睡眠医療センターで、宿泊可能な2床の病床も用意しています。
院内はカフェのようなリラックスした雰囲気ですね。
【渥美院長】いかにも病院といった堅苦しいイメージを避け、精神科受診のハードルを少しでも下げたいというのが狙いです。当院は夜8時まで診療していますが、なるべく皆さんにリラックスしてもらうため夕方以降の待合は間接照明のみ。ラウンジみたいなムーディーな雰囲気に、初めての方は驚かれます。また、私専用の診察室では診療も照明を落とした中で行っています。夜間に明るすぎるのは睡眠にも良くありませんし、こうした環境でこそ出てくる話もありますから。ちなみに、受付や待合に飾ってある花のオブジェは副院長が手作りした作品です。なかなかの力作なので、ぜひ近寄ってご覧ください。
先生方は皆さん、精神科のエキスパートと聞いています。
【上島理事長】当院にはほかに非常勤の先生方もおられますが、私たちは3人とも日本精神神経学会認定精神科専門医です。そして、当院の理念は「愛と信念と希望」。「愛」は妹の副院長、「信念」は理事長の私、「希望」は夫である院長がそれぞれ担当となっています。戦隊ヒーローみたいとよく言われますが、それぞれの性格を生かし、関わった皆さんの人生に良い変化をもたらし続けることを本気で追求しています。
【真以子副院長】私は「愛」担当ですが、思ったことを割とズバッと言うタイプです。でも、あくまで「愛あっての言葉」なので安心してください(笑)。すべてを受け止めることはできなくても、愛をもって聞き手に徹することなら私にもできます。もちろん、精神科の役割はカウンセリングだけではありません。服薬で治療を行う症状もありますから、そうした知識も愛をもってお伝えしています。
若年層や働き盛りにこそストレスが忍び寄る
近年、どのような症状の患者さんが多いですか?
【真以子副院長】小児発達障害や高齢者の認知症は、全国的にも受診環境がかなり整いつつあります。ところがストレス社会にもかかわらず、肝心な中間層である若年層や働き盛り世代、子育て世代に対するケアが意外に不足していると感じます。ここ数年来の新型感染症の影響も大きいですね。オンライン授業やリモートワークからいきなり平時の体制に戻ってしまったために、リアルな通勤・通学や対人関係についていけずにうつ病や引きこもり、適応障害、パニック障害などを起こす人が増えました。環境への適応に時間がかかる人もいますから、そこをよく理解し、病気か怠慢かという結論を急ぐことなく見守ってあげる必要があるでしょう。
引きこもりの方には、どのような注意を払うべきですか?
【渥美院長】引きこもっている限り私たちもお会いできませんから、いかに外来までこぎつけるか、受診のハードルを下げてお待ちすることは重要です。ただし私たちが徹底しているのは、「本人が来なければ話にならない」とは絶対に言わないこと。ご本人との面会を急ぐ必要はまったくありません。ご家族であれご友人であれ、ここに来られている相談者さんこそが主役であり患者さんです。今は中年以降の引きこもりの方がずいぶん増えました。嫌なことがあった時に外へ向かって攻撃的に出るのではなく、自分から身を引いてしまうような優しい性格の人が多いからかもしれません。
こちらのデイケアについて教えてください。
【上島理事長】精神科のデイケアは、精神的な傷を負った方の社会参加や復帰、復学や就労などを目的としたグループ活動を行う場です。スタッフは臨床心理士や精神保健福祉士、ひきこもりピアサポーターなどがプログラムを考え、人に慣れるためのゲームやクリニック周辺の清掃などを行っています。また、就労意欲や自信をつけてもらうために父の代から行っている取り組みの一つが、院内にあるカフェスタッフ体験です。お客さんは、外来でお見えになる一般の患者さん。コーヒーを入れたりワッフルを焼いたり、最初は緊張するかもしれませんが頑張って接客をしてもらいます。孤立しがちな人々を、こうした現実的なサポートで応援していくことも私たちの大切な使命と心得ています。
心の病や悩みがある人をチーム全体でサポート
院長は睡眠医学に長く携わっておられるとか。
【渥美院長】不眠症や睡眠時無呼吸症候群といった睡眠障害は今ではよく知られています。しかし日中に強い眠気が起こるナルコレプシー、朝起きられずに不登校につながる障害など、まだまだ認知度の低い病気も存在します。そこで睡眠の専門を打ち出し、睡眠に関係するトラブルや不安は原因に関係なく全部診ましょうというのが3階にある南大阪睡眠医療センターです。対症療法ではなく、あくまで睡眠側からアプローチするのが特徴で、必要に応じて終夜監視下での睡眠ポリグラフの入院検査にも対応しています。睡眠障害の原因はいろいろありますが、日本人の睡眠時間は先進国では一番短く、それを1時間延ばすことが私の目標です。ちなみに私は自分の動画投稿サイトを週4回更新しています。ためになる情報を楽しく公開していますので、ぜひのぞいてみてください。
現時点でのテーマがあればお聞かせください。
【真以子副院長】私は堺市の泉ヶ丘にある分院の院長も兼任していますが、双方で多いのは子育てママの育児の悩みや産後のうつ症状などのご相談です。姉も私も2児の母親ですし、女性ドクターとして今後も愛ある応援を続けていきたいですね。
【上島理事長】信念担当としては、とにかく精神科の敷居を下げたい。それが目下最大のテーマです。診察と身構えず、その手前の相談窓口という感覚でお越しいただければと思います。クリニックの雰囲気も、今後はさらにソフトにしたいと考えていますのでご期待ください。
【渥美院長】人生には苦しい時もあれば調子の良い時もあるでしょう。せっかく当院に来られた患者さんに、1点分だけでもプラスして帰ってほしいというのが私の願い。「1点でも確かな前進」「人生なんとかなる」と、明るい希望を持つことが大切です。
最後に、受診を迷っている皆さんへメッセージをお願いします。
【真以子副院長】もう少し早い段階で来てもらえたらと思うことが多々あります。誰かに悩みを聞いてもらいたいと思ったら、どうかそのタイミングで私たちに相談してくださいね。
【渥美院長】いかに黒歴史であろうと、人の歩みは生きた証であり、かけがえのない財産です。それをお聞かせいただけるのはとても光栄なこと。必ずお力になりますので、話せることから打ち明けてみてください。
【上島理事長】当院には看護師や検査技師、受付、デイケアの心理士や精神保健福祉士から厨房スタッフまで、総勢で40人ほどが働いています。役職の垣根を越え、互いに信頼し合えているのは当院の自慢の一つ。今後も良質なチーム医療を実践していきたいと考えていますので、心の病や悩みを放置せず、どうか気軽にご相談ください。