吉増 隆之 院長の独自取材記事
大槻医院大伴診療所
(富田林市/富田林駅)
最終更新日:2025/11/14
近鉄長野線・富田林駅から車で10分の「大槻医院大伴診療所」は、大槻家が何世代にもわたり地域医療を支えてきた歴史あるクリニック。2024年10月にはさくらの樹グループの運営のもと、吉増隆之院長が就任した。内科、循環器内科を中心に、幅広い診療経験を持つ吉増院長は「患者さんと同じ目の高さで診療していくこと」を大切に、傾聴の姿勢で根気良く治療を進めている。前院長時代からのスタッフとともに地域に根差した医療を継承し、家族ぐるみで通う人も多いそうだ。高齢化が進む地域のニーズに応えようと尽力する同院の取り組みについて話を聞いた。
(取材日2025年10月24日)
地域に根づいたクリニックを継承
このクリニックの歴史と、院長就任の経緯を教えてください。

もともと大槻先生のお父さんが開業されたクリニックで、開業年がわからないほど長く地域に根差してきた歴史があります。大槻先生が体調面の事情で診療継続が難しくなった際に、さくらの樹グループが昨年6月から運営をお手伝いすることになり、私は10月から院長に就任しました。地域密着型の診療という大槻家の理念はそのまま引き継いでいます。スタッフさんも以前からの方がいらっしゃるので、患者さんとの信頼関係もしっかり継続できており、ベテランスタッフの存在は本当に心強いですね。何世代も前から住む家族もいれば、新しくできた団地に引っ越してきた方もいるという多様な地域性の中で、皆さんに親しまれてきた医院を継承できることに責任とやりがいを感じています。
先生が医師を志したきっかけと、これまでの経歴について伺えますか?
高校時代は野球をしていてスポーツ選手に憧れていましたが、人のためになるような仕事をしたいという思いもあり医学の道に進みました。1989年に近畿大学医学部を卒業後、そのまま近畿大学病院に10年間在籍しました。最初は救命救急センターに配属され、その後、放射線科で研鑽を積みました。大学を出た後は美原区の田中病院と我孫子の鳥が谷病院で内科を、北区の平成クリニックでは内科、外科、整形外科を学びました。その後、T内科クリニックで訪問診療も経験させてもらいました。こうした経験が今の幅広い診療に生きています。放射線科での経験も、現在の検査における見落とし防止に大いに役立っていると感じます。
地域の患者さんの特徴について教えてください。

ご高齢の方が多く、大槻先生が内科をご専門にされていたこともあって内科疾患の患者さんが中心です。高血圧・高コレステロール血症・糖尿病といった生活習慣病が多いですね。ご家族、あるいはご夫婦で受診される方が非常に多いということも大きな特徴です。北区で診療していた時はほとんどなかった光景でしたが、ここでは定期受診でもご夫婦そろって来られることが日常的です。何世代も昔から住まれているご家族もいれば、新しい団地に移ってきた方もいて、新旧の住民が混在している地域です。共通しているのは家族の絆が強いということ。10歳以上のお子さんから高齢者まで幅広く診ていますが、お子さんやお孫さんと一緒に来たりと、まさに家族ぐるみでかかりつけにしていただいています。
幅広い診療経験を生かした総合的な医療
こちらではどのような診療を行っているのですか?

当院では、外来診療において内科・循環器内科を中心に幅広く対応しており、特に、高血圧や糖尿病は一生懸命勉強してきたので、しっかり診させていただいています。傷ややけども診ますし、整形疾患では変形性の椎間板症や脊椎の問題も診ることがあります。検査体制も充実していて、エコー検査や心電図検査、ABI検査、エックス線検査などが院内で可能です。私自身が放射線科医なので、エコー検査もエックス線検査もダブルチェックを行い、見落としがないよう注視しています。放射線技師さんも月に数日来ていただいて、より質の高い検査ができるよう体制を整えています。また、訪問診療においては、整形外科・精神科・皮膚科・泌尿器科の専門家が在籍しており、認知症や高齢者施設の患者さんにも専門的な診療を提供しています。地域の皆さまに寄り添った医療を提供できるよう、専門家が連携して診療にあたっています。
訪問診療にも力を入れているそうですね。
大槻先生の時代から在宅医療に取り組まれていましたが、私が来てから施設に伺うようになり訪問数がどんどん増えています。地域の訪問看護ステーションとも連携させてもらって、在宅診療の依頼も受け入れています。訪問診療では日々のバイタルや体調を見ながら、定期的に血液や心電図を採るのですが、「大丈夫」と言う人でも実は体調が良くないことがあるので、見落としがないように気をつけています。転倒してあざができていたり、褥瘡(床ずれ)ができていたりすることもありますが、恥ずかしくてご相談されない方も多いんです。お話の中から聞き出せるよう工夫しています。ご家族には食事や水分摂取、夏の熱中症対策、冬の感染症予防など、家族ぐるみでフォローしてもらえるようお伝えしています。
診療で大切にしていることを教えてください。

患者さんと同じ視点に立って診療をしていくこと。その人にとって何が一番良いのかを根気良く話を聞きながら治療をしていければ、精度も上がると思います。これが私の基本姿勢です。「どうですか」と聞くだけでなく、困っていること、つらいことから始まって、ご職業や生活習慣まで伺い、その方その方に合う治療をするよう心がけています。ご高齢の方は足の筋力が落ちていたり視野が狭かったりする場合も多いので、看護師さんに手伝ってもらって付き添いながら診察治療をしています。健康寿命を長くできるよう支えたいという思いから、ストレッチや、フレイルに対してでき得る運動もお教えしています。できるだけその人らしく健康に過ごしていただけるよう、一人ひとりに寄り添った診療を心がけています。
チーム医療で地域の未来を支える
スタッフさんの体制やグループ連携について教えてください。

看護師が6人、受付が5人いて、放射線技師にも月に数日来ていただいています。特にありがたいのは、大槻先生の時代からのスタッフさんがメインでいらっしゃること。地域の方のお顔も知っているような方々なので、本当に助かっています。患者さんとの信頼関係もしっかりできていて、スムーズに診療が進められています。さくらの樹グループの院長であることのメリットも大きいですね。グループ内に医師がたくさんいるので応援に来てもらうこともありますし、専門的なことは精神科や歯科の先生にアドバイスをもらったり診てもらったりすることも。運営会議や新しい資材の使い方などの勉強会もあって、スタッフのスキルアップにもつながっています。一つのクリニックではできないことも、グループの力を借りることで実現できています。
今後の展望についてお聞かせください。
高齢化が進んでいるので、訪問診療にさらに力を入れていきたいと考えています。高齢の人の割合が多い地域なので、その人たちが5年10年たった時に通院できないような状況になることを見据えて、システムを考えていかなければならない。今は過疎になってきてバスも通らなくなったので、将来的には車を出して送迎なども行えればと思っています。通院の不便をなくすための送迎サービスを検討していきたい。通院できる人には時代のニーズに沿った治療を心がけていきたいです。新薬や新しい治療法を取り入れながら、近隣の富田林病院、大阪南医療センター、羽曳野の城山病院などとも連携して、患者さんにとって必要な検査や治療をしっかり提供していきます。地域の医療格差をなくし、皆さんが安心して暮らせるような環境をつくっていきたいですね。
地域の患者さんへメッセージをお願いします。

これからも皆さんに寄り添って、何かあればどんなことでもでき得ることはさせていただければと思います。この気持ちを大切に、日々診療にあたっています。できるだけ健康寿命を延ばすために力になりたいという思いで、ストレッチやフレイル予防の指導もしています。何か困ったら気軽に連絡をもらって、通院できない人は訪問診療で対応させていただきます。今後も当院をより便利に使ってもらえたらありがたいですね。大槻先生が築いてこられた地域密着の医療を、新しい体制でさらに充実させていきます。高齢になってもこの地域で安心して暮らせるよう、スタッフ一同、皆さんの健康を支えていく所存です。一人でも多くの方を幸せにしたいという思いで、これからも地域医療に貢献してまいります。

