山東 勤弥 院長、小城 庄平 さんの独自取材記事
きただクリニック
(守口市/守口市駅)
最終更新日:2025/04/03

京阪本線守口市駅から徒歩5分の住宅街に位置する「きただクリニック」。内科・外科・心療内科・精神科を標榜し、生活習慣病の管理や内科疾患中心に診療を行う。心臓外科から小児外科まで幅広い外科分野での経験を経て、中心静脈栄養管理の専門性を生かし、大規模病院の勤務医や大学教授として歩んできた山東勤弥院長。物腰がやわらかく、患者へは親身な対応を大切にしている。地域医療サービスセンター長の経験を積み、医療連携の現場を知る事務長の小城庄平さんや看護師とともに、地域に根差した医療を展開。同院が特に注力するのが訪問診療である。「医療は対人サービス業。患者さんあってこそ」をモットーに、地域の人々の健康を支えている。患者が本音で話せるかかりつけ医として医療サービスの向上をめざす山東院長と小城事務長に話を聞いた。
(取材日2025年2月20日)
「患者に親身に寄り添いたい」という地域医療への思い
クリニックを継承されるまでの歩みについてお聞かせください。

【事務長】2019年に前院長の中尾先生が松尾医院を継承しました。2020年より現在の「きただクリニック」へと名称変更しております。私は事務長として就任する以前、地域連携室の室長を務めた経験があります。当時、病院側の救急受け入れ拒否の社会課題に直面し、医師会と地域医療連携システム「ブルーカード」の構築に関わりました。その経験から大規模病院の視点も持ち合わせながらも、かかりつけ医院が地域の受け皿となることの大切さを実感しています。
【院長】2023年から当院に勤務医として着任し、2025年1月から院長に就任しました。大学生時代、前任の中尾先生が助教授で、私の恩師でした。大阪大学第一外科では心臓外科、呼吸器外科、一般外科、小児外科と幅広い分野を経験。その後、臨床栄養学の分野で知見を深め、医科学・外科学・栄養学を統合したアプローチを実践してきました。
クリニックにはどのような方が来院されますか?
【院長】主に内科系の症状で来院される方が多く、生活習慣病の定期的なフォローや発熱を伴う風邪症状の患者さんが中心です。中でも高齢者の女性が約6割を占めますね。高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病の方が定期的に通院しています。また泌尿器科系で膀胱炎や、腹部に熱源がある方なども来られます。外科的な処置が必要な場合は、関西医科大学附属病院や松下記念病院をご紹介するなど地域の専門医療機関と連携をしています。
【事務長】当院は小規模ですが、それを生かして患者さん一人ひとりのニーズに合わせた対応を意識しています。入院から在宅復帰を考えておられる方には、ご家族の状況に合わせた相談にも応じていますね。地域に根差したかかりつけ医として、患者さんやご家族の不安に寄り添って解消できる存在でありたいと考えています。
患者さんとの関わりで大切にされていることは?

【院長】大阪大学第一学科のモットーである「熱意と誠意を持ってさらに創意工夫をする」という言葉を胸に、患者さんが話しやすい、本音を言いやすい環境づくりを第一に意識しています。例えば気になる症状など「ついでにこのことも聞いておきたい」と思った時に、気軽に尋ねられるような関係性が大切だと思っています。診察時は適切なアドバイスを念頭に置きながらも、患者さんが持っている不安を話してもらえるように傾聴していきます。
【事務長】私たちは「医療もサービス業である」という認識のもと、チーム全体で患者さんをサポートする体制を整えています。医師、看護師、薬剤師などの多職種が協力し合える環境づくりを重視し、患者さんに関する情報共有を密に行っていますね。患者さんやご家族が「この先生がいてくれて大丈夫」と安心していただけるよう、スタッフ一同、日々努めています。
チーム体制で訪問診療に取り組み在宅医療を支える
訪問診療に力を入れられているそうですね。

【事務長】ええ。主に内科を中心に展開していますが、今後特に力を入れていきたいのは居宅への訪問診療です。居宅では、一人ひとりの生活環境に合わせた対応が必要で、それこそが地域医療の本質だと。「自宅で最期まで穏やかに過ごしたい」という方々のニーズに応えていきたいと考えたからです。
【院長】在宅医療では、患者さんの状態を診て、いつ病院での治療が必要かを判断することが重要です。特に週末や連休前などは慎重な判断が求められます。私の場合、外科系の経験も生かしながら、症状を診て「この段階で病院へ行ったほうが良い」といった判断もしています。病院から在宅へ戻る方の受け皿として、安心して療養生活を送れる環境づくりを重視しています。
実際の訪問診療の様子を教えてください。
【事務長】山東院長、看護師、私の3人体制です。施設では皆さんが集まれる場所で複数の患者さんを診察することもありますが、居宅ではご自宅でじっくりと診察や会話の時間を持っています。その中で、より深い対話が生まれ、患者さんの本当のお困り事や不安を聴かせてもらいます。
【院長】訪問診療では、その場で可能な検査や処置は限られています。そのため、訪問看護師からの情報や、患者さんの普段の様子を丁寧に観察することが重要です。緊急時の対応については、あらかじめ患者さんやご家族と相談し、状況に応じた判断基準を共有しています。何か異変があった場合は、訪問看護師が様子を確認し、必要に応じて私が指示を出す体制を取っています。
多職種との連携で心がけておられることはありますか?

【事務長】訪問診療の要は「連携」です。訪問看護師、薬剤師、ケアマネジャーとの情報共有を密にし、患者さんが安心して在宅療養できる環境づくりに注力しています。例えば薬の処方は、薬剤師に自宅へ訪問して持って行ってもらいます。常に医療は連携がないと成り立ちませんから。その重要性は実感していますので、多職種間のスムーズな連携体制を今後も築いていきたいですね。
【院長】確かに医療は一人では成り立ちませんね。以前は医師を中心として他の医療職を「パラメディカル」と呼んでいましたが、今は「コメディカル」が一般的です。これは「ともに協力する」の意味合いが強くなってきているからでしょう。当院では、形式的な連携ではなく、お互いに「苦言も言い合える関係性」を大切にしています。なぜなら看護師や他の職種からの意見や気づきを積極的に取り入れることでより良い医療が提供できると考えているからです。
より良い医療サービスをめざして
今後の展望についてお聞かせください。

【院長】今後は城東区野江地区への移転を計画していて、エックス線やCTなどの機器も充実させていく予定なんです。ただ移転は、機器の充実だけが目的ではありません。新しい環境でより充実したサービスを提供することで、これまで大切にしてきた患者さん一人ひとりに親身に向き合い、地域の皆さまの健康づくりに貢献していきたいという思いもあります。
【事務長】当院の診療圏は半径5km圏内を想定しているんです。移転後は旭区や城東区、東淀川区なども含まれますから、より多くの患者さんの受け皿になれると思います。特に力を入れたいのが、病院から在宅への移行をスムーズにサポートする体制づくりですね。
地域医療の課題に対してはどのようにお考えでしょうか?
【事務長】高齢化が進む中で、医療を取り巻く環境は年々変化し、在宅医療のニーズは確実に高まっています。日常的な健康管理は地域のクリニックが担い、専門的な治療が必要な場合は病院へ。それぞれの適切な役割分担と連携があってこそ、切れ目のない医療提供体制ができるのではないかと考えています。
【院長】当院では、症状や状態を見極めて、必要な場合は専門医療機関への紹介も行っています。また、退院後の在宅療養のサポートなど、患者さんの生活に寄り添った医療を心がけていますね。
最後に読者へメッセージをお願いします。

【院長】医療は患者さんあってこそ成り立つものです。規模が小さいクリニックだからこそできるこまやかな対応をしています。些細な症状や不安なことでも気軽に相談できるホームドクターとして、皆さまの健康づくりをサポートしていきます。
【事務長】私たちは「医療はサービス業である」という認識を大切にしています。患者さん一人ひとりのニーズに寄り添った対応を心がけているんです。「ここに相談して良かった」と思っていただけるよう、これからも努めてまいります。在宅での療養をご検討の方もどうぞお気軽にご相談ください。