全国のドクター13,967人の想いを取材
クリニック・病院 156,691件の情報を掲載(2025年7月27日現在)

ドクターズ・ファイル会員でできること

予約情報をマイページ上で管理できます!

過去の予約を一覧化

予約内容の確認

予約の変更・キャンセル※

※一部対象外の医療機関もありますので、あらかじめご了承ください

会員登録がお済みでない方は

すでに会員の方は

  1. TOP
  2. 大阪府
  3. 泉大津市
  4. 泉大津駅
  5. 医療法人泉清会 川端医院
  6. 川端 徹 院長

川端 徹 院長の独自取材記事

川端医院

(泉大津市/泉大津駅)

最終更新日:2025/07/15

川端徹院長 川端医院 main

毎年10月には勇壮なだんじりが市内を駆け巡り、熱気に包まれる泉大津市。普段は静かな街並みにある「川端医院」。和の雰囲気が漂う院内で患者を迎え入れるのは、院長の川端徹先生。父の急逝に伴い同院を継承。外来診療とともに在宅医療にも力を入れながら、地域医療を支えてきた。また、だんじりで育まれた地域のつながりを生かして「だんじり認知症サポーター」の養成、拡大にも注力。今や泉大津市では、だんじりの曳き手の大半が認知症サポーターの証であるオレンジリングをつけ、祭りに参加するのだという。「認知症の人が暮らしやすい町は、誰にとっても暮らしやすい町なんです」と快活に語り、健康寿命を実現できる地域づくりに奔走する川端先生に、現在の診療の様子や、地域医療への思いを尋ねた。

(取材日2025年6月5日)

脳神経内科の専門性を生かし、訪問診療にも注力

こちらは、お父さまの代から診療を続けてきたそうですね。

川端徹院長 川端医院1

当院は、私の父が今の建物の隣で1961年に開業しました。母も薬剤師でしたので、両親が医療に関わる姿を見ながら育ちました。進路に迷った時期もありましたが、私も滋賀医科大学へ進んで脳神経内科を専門に。卒業後は京都や滋賀の病院で勤務し、その後は父を支えていずれは地元へ戻るつもりで、堺のベルランド総合病院へ移ったのです。ところが2008年4月に父が急逝したので急きょ当院を引き継ぎ、もともと予定していた建て替えを進めて、2009年6月に現在の建物へリニューアル。待合室に畳のスペースを設けたり、処置室から小さな石庭を眺められるようにしたりと、くつろぎやすい和風のデザインにしました。また別棟として「一隅を照らす庵」という多目的ホールを設け、普段は第2待合室として利用しています。混み合う際にはそちらで待ってもらえますし、認知症カフェなどのイベントを開催するコミュニティーの場としても活用しています。

診療内容や患者さんについて教えてください。

現在は、外来の診察と訪問診療を行っています。外来では一般内科の日常的な症状に加え、高血圧や糖尿病、脂質異常などの生活習慣病にも力を入れています。また私の専門である脳神経内科では、認知症やパーキンソン病、脊髄小脳変性症などパーキンソン病の関連疾患を診ていますし、頭痛やめまい、脳卒中の後遺症などでの受診も多いです。患者さんは、父の時代から通い続けてくださる方やそのお子さん、お孫さん、私自身の同級生やご家族も多いですね。泉大津はだんじり祭が盛んな土地で、地域内でのつながりがとても密なんです。私も子どもの頃からだんじりに深く関わっていますので、そういったご縁もあり多くの患者さんが受診されています。

訪問診療もなさっていると伺いました。

川端徹院長 川端医院2

脳神経内科では神経難病や寝たきりで通院が難しい方も多く、病院で勤務していた頃から在宅医療の重要性は感じていました。現在は個人のお宅の他、サービスつき高齢者向け住宅にも訪問し、50〜60人の在宅患者さんを訪問診療や往診で診ています。患者さんの数は今も外来のほうが多いですが、時間や労力という面では訪問診療のウエートが年々高まっていますね。ただ在宅医療は医師だけでは成り立たず、訪問看護や訪問介護、訪問リハビリテーションなど、地域の多職種との協力が欠かせません。幸いにも泉大津市と隣の忠岡町では以前から医療介護連携が活発で、関係者は顔を合わせる機会も多く連携が充実しています。ですから、他院の患者さんでも脳・神経疾患の方が在宅医療へ移行する場合には、当院へご紹介いただくことも増えています。

だんじりの絆を通し、認知症患者を支えていく

在宅医療では、どのような点に意義ややりがいを感じていますか?

川端徹院長 川端医院3

何よりも、患者さんに一貫して関われることです。当院の外来患者さんで認知症やパーキンソン病が疑われれば、総合病院にも詳しい検査をお願いし、こちらで診断・治療を行っています。その後徐々に通院が難しくなれば、訪問診療に切り替えられます。病気の発症からその方の人生最期まで伴走できるのは、地域の中で脳神経内科の診療を行うからこそでしょうね。国の政策でもあるのですが、「住み慣れた地域で、家族や親しい人に囲まれながら、自宅で最期まで過ごしたい」という患者さんのニーズに応えていきたいです。

先生は「認知症サポーター」の普及にも注力されてきたとか。

ここで診療を始めた時に、泉大津市からの依頼で「認知症サポート医」の認定を受け、地域ケア会議に参加するようになりました。認知症の正しい知識を学び、当事者の方や家族を地域で温かく見守るための「認知症サポーター」という制度があるのですが、市内で認知症サポーターを増やすにはどうしたら良いか、と会議で相談を受けたんですね。そこで「だんじり祭の関係者に、認知症サポーターになってもらえば良いのでは」と。市内には20の町にだんじりがあり、各町で200~300人がだんじりを曳行します。だんじりの伝統は世代を超えて継承され、日頃から顔を合わせて話し合いを重ねています。私自身も上之町のだんじりの一員ですので、このコミュニティーと連携できれば、大きな力になると思ったんです。

地域の特色を生かした、ユニークな取り組みですね。

川端徹院長 川端医院4

思いつきのようなところもありましたが、だんじりの組織力を知っていたから出たアイデアかもしれません。窓口である地域包括支援センターに連絡し、養成講座を受けて認知症サポーターになると、その証であるオレンジリングが交付されます。だんじり関係者にはオレンジリングをつけて祭りに参加してもらいました。2014年は上之町のみでしたが、その後は参加してくれる町が急速に増え、市外にも拡大。2024年には大阪府下で2600人ほどのだんじり関係者が「だんじり認知症サポーター」になっています。オレンジリングは目立ちますし、祭りの衣装にも映えます。祭りや地域を支える皆さんの誇りがオレンジリングに象徴されているように感じます。さらに企業やさまざまな団体でも「認知症サポーターを増やそう」という機運が高まっていきました。私も地域のFMラジオで5年間番組を担当しましたし、最近は市外で講演や啓発活動を行う機会も増えています。

誰もが生活しやすく、健康寿命延伸をめざせる町へ

「だんじり認知症サポーター」を始めて10年、変化を感じることはありますか?

川端徹院長 川端医院5

以前はご家庭で認知症患者さんを抱え込み疲弊することも多かったのですが、今は地域全体で認知症を支えようという雰囲気が広まっていると思いますし、さらに当事者の方が体験談を語るような姿もあります。泉大津市では、当事者の方にも養成講座を受けてもらい、オレンジリングをつけて活動してもらっています。また、だんじりや職場を通じて認知症サポーターになった方は、健康づくりや地域のイベントにも積極的に参加するようになる印象があります。社会とつながることで、認知症になりにくかったり、進行を遅らせることも期待できそうです。今、泉大津市は魅力的な町づくりに力を入れていますので、「だんじり認知症サポーター」の取り組みが地域の活性化にも寄与していればうれしいですね。

さまざまなアイデアと行動力を発揮される、先生の原動力は?

実際には、目の前の仕事をこなすことで精いっぱいなところもありますが(笑)。もともと「頼まれたら断れない」という性格で、だんじりに関しては私の生涯の趣味のようなものでもあります。趣味と実益を結びつけたことで、楽しみながら取り組めますし、結果的に良い方向にどんどん広がっていきました。また大学時代に取り組んだラグビーでは「One for All, All for One」のスピリットを学びました。それも在宅医療でのチーム医療や、「だんじり認知症サポーター」の活動の根源になっているのかもしれません。

今後、医院で取り組みたいことや地域に寄せる思いをお聞かせください。

川端徹院長 川端医院6

認知症の方やご家族が生活しやすい町にするということは、年齢や病気の有無に関わらず、すべての方が暮らしやすい町になることにつながってきます。多くの方が地域とのつながりの中で活動の場を得て、泉大津市が健康寿命延伸を実現できるような町になれば良いですね。診療に関しては、パーキンソン病や認知症の患者さんに、リハビリテーションや運動ができる場所を設けられればと考えています。実は、医院を4年前に法人化しました。自分の年齢を意識して縮小するのではなく、これからも地域の方といろんなかたちで連携しながら、当院や法人が地域のお役に立てるよう活動を続けたいと考えています。

Access