水野 俊樹 院長の独自取材記事
水野産婦人科
(豊中市/豊中駅)
最終更新日:2025/04/22

門をくぐると緑の木々や草花が迎えてくれ、友達や親戚の家のような気軽に入れる雰囲気を醸し出す「水野産婦人科」。2025年には開業100周年を迎える、歴史ある地域密着型クリニックで、豊中駅から徒歩3分という利便性の良さも魅力だ。同院は婦人科を中心に産科、内科、小児科も扱い、市立豊中病院産科二人主治医制に参加。話好きで優しい印象の水野俊樹院長は、治療に漢方薬を積極的に取り入れ、患者それぞれに話を聞き、場合によっては超音波検査や触診などで症状を把握した上で処方する。そんな水野院長に、診療内容や漢方の処方などについて詳しく聞いた。
(取材日2025年2月28日)
医師の誠意として、リスクについても説明
クリニックを継承された経緯を教えてください。

大学卒業後、1989年に医師の免許を取り大学病院で研修医を2年、大阪市立住吉市立病院と大阪市立十三市民病院で研究医を計4年していました。研修医が終わる頃に父から「手伝ってほしい」と言われて日曜日には帰っていたことはあるのですが、本格的に当院の医師になったのは1995年です。父親が体調を崩したので、研究医時代の上司が「お父さまが元気なうちに帰ってあげなさい」と言ってくださって。それで父のもとで働いていました。ところが1996年8月に父親が亡くなり、同年の9月1日から院長を継承することになったんです。
どんな診療をされているのですか。
婦人科をメインに診療を行っていて、更年期のトラブルや月経不順、性行為感染症、避妊相談などに対応しています。産科については、父の代まではここで分娩を行っていたのですが、今は市立豊中病院産科二人主治医制に参加しています。どういった制度かと言いますと、妊娠中期までは当院で妊婦健診を行い、妊娠32週目から市立豊中病院へ通院し、そこで出産する方法です。また当院は子宮がん検診に力を入れていて、検査の結果、何らかの問題があった場合の二次検診も行っています。治療が必要な場合は市立豊中病院やご希望の病院にご紹介しているんです。婦人科と産科のほか小児科や内科も標榜していて、豊中市の1ヵ月児健診や、1歳未満が対象の乳児後期健診の取扱医療機関でもあります。中には昔ながらのかかりつけ医として来院される方もいらっしゃるんですよ。
診療で大切にされているのはどんなことですか。

産婦人科は、ちょっと特別な科だと思います。月経の状況など、かなりプライベートな部分に踏み込むことが必要な科です。普通ならちょっとためらうようなことも聞かないといけない。私は特に妊娠に関係することは、命に関わることもあるので細かく聞くようにしています。そこは私の医師としての誠意です。それから生死やマイナスなことも情報をはっきりと言うようにしています。新しい命に恵まれる人もいれば、悲しい現実もあるので簡単に「大丈夫ですよ」と言って流さないということが大事だと考えているんです。
約50種類から患者それぞれに適した漢方薬を処方
漢方薬も積極的に使っていらっしゃるそうですね。

常時50種類ほどを置いています。使い出したのは研究医時代です。知り合いの医師が使っていたのがきっかけなのですが、不定愁訴がたくさんあり更年期障害ではないかと思われる患者さんに漢方薬を出すようになりました。女性特有の症状に適応するものを数多く取りそろえていますし、風邪などの流行性疾患にも対応しています。妊婦さんの場合、薬を使うことに抵抗がある方が多いんですよ。だからといって症状を放置していると、悪化してしまう場合も少なくありません。そうならないよう薬を飲んでもらいたいという時に、漢方薬は力を貸してくれることが多いです。
患者さんが漢方薬を希望された場合、どのような手順で処方されるのですか。
漢方薬を処方するときは、それぞれの方の体質に合わせて、少ないものを足すイメージなんです。患者さんにはまず、何を問題にされているのかをお聞きします。状況によっては超音波検査や血液検査もしますし、触診で張っているところを探したり、目の下を見たり、手足を触って冷えがないかなどを調べることもあります。そして、この方だったらこれが合うだろうと判断して処方しているんです。この薬が欲しいとピンポイントでご要望されても、もし違う漢方薬のほうがふさわしい場合は、電子カルテに入力した症状をお見せしながら、なぜこちらのほうが良いのかをきちんとお話しします。
こちらのクリニックはご自宅の庭に伺っているような温かさがありますね。

婦人科に行くのは緊張する、ハードルが高いと感じられる方が多いと思うので、気軽に来院できるクリニックにしたいんです。だから庭に花を植えて、院内ではジャズやクラシック、癒やし系ミュージックなどを流しています。夏はハワイアンミュージックも流しているんです。「先生の所でハワイアンを聴きたいから来たよ」とおっしゃる患者さんもいますね。また、実際に歩いたときの感覚と見た目がやわらかくなるよう、カーペットを敷いています。お子さんが転んだ場合も痛みを抑えられるのがメリットです。
地域に寄り添うゲートキーパーでありたい
妊婦さんの診察のために先進的な機器を導入されているのですね。

4Dの超音波(エコー)画像診断装置を導入しています。従来の超音波断層像の情報を集積し構築した疑似立体画像を動画にすることができます。白黒で平面の超音波断層像写真では一般の方にわかりづらかった、おなかの赤ちゃんの姿をカラーの動画で見ていただけます。タイミングによっては、動いている姿をご覧いただけるかもしれません。
子どもの頃から産婦人科の医師になりたいと思われていたのですか。
産婦人科で起きる出来事が日常の景色として育ってきました。朝も夜中も関係なく家の前に救急車が止まる音もよく聞こえていたので、「父は今、誰かのために働いているんだな」と思うことも。小学生にもなると、輸血のための血液が入っているボックスを絶対に放さないようくぎを刺されながら、両手で抱えて運ぶ手伝いをしたりしたこともあります。そんな環境で生活をしていたため、自分が産婦人科の医師になるのはある意味で既定路線だったような気がします。ごく自然に産婦人科の医師になった感じですね。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

とにかく、何かおかしいと思ったらお越しいただきたいです。豊中駅からすぐですし、夜も午後8時まで診療しています。そして、先ほども申し上げたとおり、気軽に来ていただくために環境を整えています。スタッフから「さっきの患者さんは先生のお友達ですか」とよく聞かれるんですけど、それくらい、ざっくばらんな雰囲気で対応しているクリニックです。また、当院が大きな病院に紹介した場合も、大きな病院から当院を紹介された場合も、受診期間を守ってください。3ヵ月以内にと書かれているのに、半年後とか1年後に来院されるような場合、良くない状態になっていることがあるかもしれません。患者さんが診察を受けやすいよう、基幹の病院と診療所が密に連携する病診連携がきちんと構築されていますから。受診期間を守り、症状が悪くなるのを回避していただきたいですね。