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尾花 俊作 院長の独自取材記事

尾花医院

(堺市堺区/浅香山駅)

最終更新日:2021/10/12

尾花俊作院長 尾花医院 main

浅香山駅から徒歩5分の場所にある「尾花医院」が開業したのは1948年のこと。現在は皮膚科専門の医師である尾花俊作先生が2代目院長として、地域の患者の健康を守り続けている。幅広い皮膚症状に対応するほか、多くの患者に親しまれる理由は、コミュニケーションを大切にして患者の心の動きにも気を配る診療方針だ。尾花先生は「アーティスティックな診療」と表現しており、その人が何を望んでいるのかイメージしながら診察する「人を見る医療」が、患者の安心につながっているといえるだろう。長身で若者たちと一緒にヒップホップダンスを踊るのが楽しみだという、個性的な一面も持つ尾花先生に話を聞いた。

(取材日2020年7月29日)

幅広い皮膚症状に対応する地域のかかりつけ皮膚科

まずは院長就任までの経緯についてお聞かせください。

尾花俊作院長 尾花医院1

1948年に父が内科医院として、この地に開業しました。クリニックの2階が自宅でしたので私自身この場所で育ち、子どもの頃から父が診療する姿を見てきました。神戸大学医学部卒業後は大阪大学医学部の皮膚科に入局し、その後は尼崎市の関西労災病院などで勤務医を勤めました。病院では悪性腫瘍や重度のやけどなど、重篤な患者さんを中心に臨床に携わり、皮膚の治療だけでなく全身管理も行いながら診療にあたっていました。病院勤務を7年ほど続けた後、父が亡くなったのを機に医院を引き継ぎ、皮膚科を中心とした診療を続けて35年ほどになります。

こちらの医院にはどのような方が受診されていますか?

患者さんはお年寄りから赤ちゃんまで、幅広い年齢層が来られています。大半は近隣にお住まいのご家族で、子どもだとアトピー性皮膚炎や水イボ、とびひなど、成人では水虫や湿疹などの相談が多く、難しい病気で受診するというよりも、気になる症状があるのでちょっと診てほしいと受診する人がほとんどです。主訴としては、強いかゆみがあって訪れる人が多いように感じています。特にかゆみに対する専門治療はしていないのですが、かかりつけの患者さんから、「特別な薬を出してくれたんですか?」と聞かれたこともあります。特殊な薬を使っているわけではなくその方にお薬がぴったり合っただけなのですが、喜んでいただけた時はうれしいですね。外科的な手術はしていませんが、凍結療法によるイボの処置や、やけどや傷が治った後に残る瘢痕(はんこん)に対する形成外科的な治療に対応しています。

こちらでの診療において、特徴的なことがあれば教えてください。

尾花俊作院長 尾花医院2

基本的には一般的に起こりやすい皮膚疾患を幅広く診ており専門治療が必要と思われる患者さんには、適切な病院を紹介するようにしています。当院はご覧のとおり昔風の建物で、バリアフリーと正反対の段差もあります。最新の検査機器もなく、高度な治療技術を提供するような医院ではありませんが、豊富な経験を持つスタッフに恵まれていることは当院の誇りです。30年以上、トラブルでの退職者が1人もいないことは私の自慢ですね。診察室と待合室は分厚い扉で仕切られているので、プライバシーの保護はしっかり保たれています。

人を見る「アーティスティックな診療」がモットー

先生がめざす「アーティスティックな診療」とは、どのような診療スタイルですか?

尾花俊作院長 尾花医院3

患者さんの心理に対し、想像力を働かせて診療することを「アーティスティックな診療」と私は呼んでいます。診療技術の面では、昔は多弁にあれこれ訴える患者さんに戸惑うこともあったし、もの言わぬ患者さんにはうつの傾向を想像する程度でしたが、30年以上診察をしてきた今では、患者さんの心の動きや対応方法をイメージできるようになりました。患者さんの心理は人によってさまざまで、例えば自分の都合を優先したい人、薬がたくさん欲しいだけの人がいる一方で、仕事が休めなくて来院できず困っている人、つらい症状をどうにか治したいと思っている人もいます。診察の際は会話のスピードや話し方から想像力を働かせて、「この人は何を求めてここに来たのか?」をイメージしながら診るようにしています。また外国の方や高齢の方には忙しくても明瞭な日本語をゆっくり、繰り返ししゃべって伝えるようにしています。

「アーティスティックな対応」は、診察中だけのことではないそうですね。

人は会話のスピードや仕草、そこに流れる時間を心地良く感じて人や物やその場所を好きになるものです。また気に入ったらそれを繰り返したくなる習性があり、それは医院も同じで、「あそこに行けば自分がイメージする時間が流れている」という期待を持って、患者さんは来院していると思います。そんな患者さんに対して私たちがやってはいけないことは、予想外の展開で面食らわせてしまうことです。「混んでいて待たされた」というような想定内の出来事ではなく、「今までと違う態度を取られた」「思いがけないことを言われた」といった想定外の流れで期待が断ち切られると、その違和感は帰宅後に拡大して、傷ついてしまう方もおられます。「ここへ来れば心地良い時間の流れが繰り返される」という患者さんの想いを裏切らないよう、スタッフみんなで対応に注意し、精神面でのアーティスティックな対応というものを大切にしています。

間違った診断をしないために、心がけていることはありますか?

尾花俊作院長 尾花医院4

たまに「インターネットにこんな写真が載っていて、症状がそっくりだから自分も同じ病気だ」と言って受診される方がいます。確かに写真と同じ見た目かもしれませんが、皮膚科疾患は時間を経て変化するものなので、現在の状態を診ただけでは診断がつかないことも多く、別の病気である可能性もゼロではありません。皮膚科専門の医師としては、一時的な状態だけでなく症状の変化を見せてほしいのでその点は患者さんにも丁寧にお伝えします。また治療にあたっては、1週間後、1ヵ月後の患部の状態を見据え、治療段階に応じて変化する患者さんの要望も予想しながら治療を進めていきます。

患者を思いやる切れ目のない医療を提供

夜遅い時間まで診療されていますね。

尾花俊作院長 尾花医院5

午前は9時から12時まで、夜は18時から20時まで診療時間を設けています。夜は通勤帰りに受診されることも多く、「遅い時間まで診療している皮膚科があると助かる」と言われますが、昔は「大阪時間」と呼ばれ、この辺りでは20時くらいまで診療するのは珍しいことではなかったんです。昔からの名残で夜診を続けていますが、夜遅くまで診療しているとそれだけスタッフの負担も大きいので、今後は診療時間の見直しも考えていく必要があるかもしれませんね。あと院内処方も、昔からの名残で続けています。ちょっと歩けば処方箋薬局はあるんですが、近くではないので高齢の方には喜ばれています。

プライベートはどのようにお過ごしですか?

ダンスと音楽が趣味で、診療以外の時間はほとんど、難しいリズムの練習に明け暮れています。以前、サルサというペアダンスをやっていたことからダンスをするようになり、中でも私が好きなのはヒップホップダンス系のアニメーションダンスです。私と同世代の人でヒップホップ系のダンスをしようという人は皆無で、ダンスメンバーは20代が中心。そこでは「先生」ではなく名前で呼ばれていて若者たちと同じマインドでダンスを楽しんでいます。あと、子どもの頃からピアノを弾いていて最近は忙しくて演奏会などに参加していませんが、以前は合唱団の伴奏などもしていました。今はカンテというフラメンコの歌を歌うことに夢中です。日本ではフラメンコと言えば踊りのイメージですが、歌も踊りに劣らず重要です。歌なしで踊りとギターだけではフラメンコは成り立ちません。一筋縄ではいかないところが魅力で、すっかりハマってしまいました。

最後に、今後の展望をお聞かせください。

尾花俊作院長 尾花医院6

知り合いの先生から廃院を知らせるはがきが届くと、寂しい気持ちになります。かかりつけにしていた患者さんもこれまで関係性が築けていた先生から、別の新しいクリニックを見つけないといけなくなりますよね。私としてはできるだけ長く診療を続けていき、医療が途切れることがないようにしていきたいと考えています。具体的な話はまだなんですが、娘と娘婿も医師なのでいずれはここで診療を引き継ぐ流れになればいいなと思っています。もし娘たちがここで診療しない場合であってもできれば廃院という形は避け、ほかの皮膚科の先生にお願いすることも考えていきたいと思っています。今後も新型コロナウイルスにめげずに、今の診療を続けていきながら、さらに経験を積み重ねていきたいですね。

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