増田 明子 院長の独自取材記事
うめだ駅前アイクリニック
(大阪市北区/大阪駅)
最終更新日:2025/10/10
大阪駅前第2ビルの静かな2階フロアに「うめだ駅前アイクリニック」はある。院長の増田明子先生は兵庫医科大学で20年以上、斜視診療に携わってきた眼科医。「人は情報の8割以上を視覚から得ている。見えることの喜びに携われる仕事がしたかった」と穏やかに語る。数多くの斜視手術を手がけてきた経験から、見過ごされがちな斜視症状の診断に努める。「斜視への理解がまだ十分でない」と、正しい知識を広めたいという思いも強い。大学病院との連携により手術前から術後まで一貫して診る体制や、小児眼科、ボツリヌストキシン製剤による注射治療への取り組みなど、困っている患者の受け皿となるべく尽力する増田院長に話を聞いた。
(取材日2025年9月10日)
縁が導いた大阪駅前での開業
こちらでの開業に至った経緯を教えてください。

ここはもともと「粉川眼科」という、30年以上続いた地域密着のクリニックでした。前院長とは直接の面識はありませんでしたが、共通の知人を通じてお声がけいただきました。大阪駅前という便利な場所で開業できるとは思っていなかったので、ご縁に感謝しています。以前から「いつかは開業したい」という思いがあり、開業するなら自分の専門である斜視に特化したクリニックにしたいと考えていました。これまで培ってきた経験を生かし、少しでも多くの方の力になれるとしたら、やはり斜視診療だと思っています。この場所は近畿一円からのアクセスも良く、遠方からでも来院しやすい立地です。こうしたご縁をいただけたことに、本当に感謝しています。そして、長年地域に根差してきた前クリニックの良いところも、しっかり引き継いでいきたいと思っています。
先生が眼科医を志したきっかけと、斜視を専門にした理由をお聞かせください。
子どもの頃から強い近視で眼科に通っていました。身近な存在だった眼科の先生に憧れ、自然と医師をめざすようになりました。最終的に眼科を選んだのは、「見えること」の大切さに深く心を動かされたからです。人は情報の8割以上を視覚から得ているといわれており、その視覚を支えることで、人の生活の質や喜びに貢献できると感じました。斜視を専門にした理由は、母校である兵庫医科大学の環境が大きく影響しています。入職当初から神経眼科と斜視に力を入れていたため、自然と斜視の患者さんを診る機会が多くなり、手術も数多く経験させていただきました。外来にも毎回多くの患者さんが来院され、非常に貴重な経験を積むことができました。
開業にあたって、クリニックの内装や設備で工夫された点は?

「誰でも気軽に通えるクリニック」をめざして、内装や設備にさまざまな工夫を凝らしました。特に気に入っているのが、受付横に設けたカフェ風のカウンター席です。ベビーカーを置けるスペースがあり、お子さんは絵本を読んだり、大人の方はパソコンを充電して仕事をしながら、快適に待ち時間を過ごせます。ビジネスパーソンが多い地域性も考慮しました。設備面では、小児眼科に対応できるよう5メートルの距離で視力検査ができる液晶視力表を導入しています。新しい自動視野計は両目を開けたまま楽な姿勢で検査が可能です。さらに、前クリニックから譲り受けた大型弱視鏡も活用し、斜視診療に必要な機器をしっかり整えています。
斜視への理解を広げ、受け皿となる診療を
斜視診療にかける思いと、その重要性について教えてください。

斜視に対する理解はまだ十分に広まっておらず、「どうせ治らない」と諦めてしまう方も少なくありません。しかし、適切な診断と治療を受けることで改善が期待できることを、もっと多くの方に知っていただきたいです。斜視を専門的に診られる施設が少ないことも課題で、患者さんが相談先に迷い、医師側も紹介先に困るケースがあります。斜視は白内障のように誰もが経験する病気ではありませんが、確実に困っている方がいて、その方々の受け皿になりたいという思いで診療しています。最近ではスマートフォンの長時間使用による斜視も増えており、中高生の患者さんも多く来院されます。進行がゆっくりなため初期は気づきにくく、親御さんが異変に気づいて受診に至ることもあります。当院では日帰り手術にも対応しており、不安の強い方には鎮静麻酔も可能です。患者さん一人ひとりの不安や状況に寄り添い、安心して治療を受けられる環境づくりを心がけています。
小児眼科や、ボツリヌストキシン製剤を使った注射治療についても教えてください。
大学では斜視・弱視を専門に扱う外来を担当していたため、小児の患者さんも多く診てきました。その際、「近所のクリニックでは子どもを診てくれない」といった声を聞き、小児眼科に対応する施設の少なさを実感しました。勤務医時代の経験を生かし、現在も積極的に小児の診療を行っています。また、眼瞼けいれんや片側顔面けいれんに対しては、ボツリヌストキシン製剤を用いた注射治療も行っています。この治療は定期的な通院が必要なため、通いやすい環境で受けられるよう体制を整えました。大学病院まで遠方から通っていた患者さんが、地域で継続的に治療を受けられる体制づくりも大切だと考えています。もちろん、白内障や緑内障、ドライアイなどの一般的な眼科診療にも幅広く対応しており、地域の方々が安心して相談できる場をめざしています。
診療で心がけていることは何ですか?

まず、患者さんが今何に困っているのかを丁寧に聞くことを心がけています。たとえ手術の適応があっても、本人が不自由を感じていなければ無理に勧めることはありません。選択肢を提示し、できる限り希望に沿った治療を提案するよう努めています。斜視の症状は人によって異なり、「二重に見える」とはっきり訴える方もいれば、「ピントが合いにくい」といった曖昧な表現の方もいます。そうした症状が「乱視のせい」と誤解され、不定愁訴として扱われてしまうケースもあり、患者さんがつらい思いをされることもあります。最終的に斜視が原因だったとわかったときの安堵感は大きく、「自分の症状は斜視によるものかもしれない」と気づいてもらえる場になれればと思っています。視力が良くても斜視で困ることは多く、そうした方々の力になりたいと考えています。
大学病院との連携で一貫した診療を実現
兵庫医科大学との連携体制について教えてください。

私は現在も兵庫医科大学で診察と手術を継続しており、全身麻酔が必要な小児の手術や複雑な症例は大学病院で私が執刀し、術後のフォローは当院で行う体制を整えています。手術前から術後まで一貫して私が診ることができるため、患者さんにとって安心感があるようで、「先生が最後まで診てくれるから」と来院される方もいらっしゃいます。大学病院は紹介状がないと受診しづらい面がありますが、クリニックなら気軽に相談できる利点があります。必要なときは大学病院で高度な治療を受けつつ、日常のフォローは身近な場所で行える。この連携により、患者さんにとって負担が少なく、質の高い医療を提供できる体制が整ったと感じています。
今後の目標や展望をお聞かせください。
まずは斜視の日帰り手術という選択肢を知っていただきたいです。手術室の設備も整え、より多くの患者さんの力になれるよう体制を充実させていきます。遠方から「先生に診てもらいたい」と来院される方もおり、その期待に応えられるよう努めたいです。また、前院長は今も週に数日診療に来てくださっており、その先生に会いたくて通院される患者さんもいらっしゃいます。私も、そんなふうに長く患者さんに寄り添える医師でありたいと思っています。地域に根差したクリニックの良さを引き継ぎながら、斜視診療という専門性も生かして、地域の皆さんのお役に立てるよう、これからも努力を続けていきます。
最後に、斜視で悩む方へのメッセージをお願いします。

片目ずつでははっきり見えるのに、両目で見るとぼやけたり、二重に見えたりする。そんな症状がある方は、斜視の可能性があります。視力検査では問題がなくても、実は斜視で困っている方は少なくありません。「斜視かな?」と思ったら、どうぞ気軽に受診してください。当院は大阪駅から徒歩6分、北新地駅からなら徒歩2分とアクセスも便利です。地域に根差して30年以上続いたクリニックの良さを引き継ぎながら、斜視診療という専門性を加え、皆さんのお役に立てるよう努めています。どんな小さな悩みでも構いません。「自分の目の症状は斜視かもしれない」と気づくきっかけになればうれしいです。一緒に解決方法を探していきましょう。

