飯山 基 院長の独自取材記事
杉本医院
(大阪市生野区/桃谷駅)
最終更新日:2025/08/07

桃谷駅から東へ延びる商店街を歩いて10分。商店街を抜けてすぐ、左側に「杉本医院」はある。近くには多彩な店が並び観光客でにぎわうエリアもあり、活気ある一面を持つ庶民の町で半世紀近く地域に根差してきた診療所だ。開設した初代院長とともに働き、2年前に院長を引き継いだ飯山基先生は、患者の目線になって話を聞き、わかりやすく説明をしてくれる内科のベテラン医師。高齢化の波が押し寄せるこの地域に寄り添い、一般内科をはじめ院長の専門でもある糖尿病や生活習慣病まで、内科領域の疾患に幅広く対応してくれる。長きにわたって地域住民の健康を支えてきた医院を継承した経緯や、注力している診療、今後の展望などについて話を聞いた。
(取材日2022年7月15日)
地域住民の健康を長く支えてきた医院の院長に
院長として引き継ぐ以前から、この医院に勤務していたそうですね。

10年くらい前からここで診療を行っています。実はここは家内の実家で、義父が開設した医院なんです。その義父から「手伝ってほしい」と10年前に言われて勤務するようになりました。その義父が亡くなり息子である杉本泰造先生が院長を引き継いでいたのですが、病気のため療養が必要となり、2年前から私が院長を務めることに。前院長は現在療養中のため診療は行っておらず、今は理事長となっています。ここに勤める以前の私はもともと慢性疾患に興味があり、大学を卒業後は京都大学医学部附属病院の老年科の医局に入り、高齢者医療に携わっていました。その後、東京都健康長寿医療センターや三菱京都病院の内科、枚方公済病院の健康管理センター長を経て、2012年からこの医院に勤務するようになりました。
この地域はご高齢の方が多いのでしょうか?
生野区は年々人口の減少傾向が続く一方で高齢化率が高く、他の地域よりも少子高齢化が進んでいるようです。当院に来られる患者さんは学生さんから高齢者まで、幅広い年代の方が来られるのですが、高齢の方がやはり多く全体の半分以上を占めています。長年この地域で暮らしている方が多いので、昔は働き盛りでこの地域を支えていた方々が齢を重ね、高齢になってきたということですね。私はここに勤めて十数年ですが、医院は半世紀以上前からあるので開業当時から通ってくださっている患者さんもいて「子どもの頃から来ていました」という話を聞くこともあります。そんなこともあり、かかりつけ医として親子3代、4代にわたって診させていただいている患者さんも少なくありません。
ご高齢の方を診察する際にどのような配慮をしますか?

入り口でスリッパに履き替えてから院内に入ってもらうようになっているのですが、高齢の方の中には足の悪い方も多いので、転倒などしないようスタッフが目配り気配りでサポートするようにしています。あと診察中にお話をする際に、耳の遠い方には筆談で対応することも。私の声のトーンが聞こえにくい患者さんもいらっしゃるので、そういう時には看護師が間に入って説明してくれたりもします。病気のことや治療について理解していただくために、話すだけではなく、絵を描いたり文字を書いたり、できるだけわかりやすく伝わりやすいよう工夫しています。
糖尿病が専門でもある院長が慢性疾患など幅広く診療
診療内容についてお聞かせください。

初代院長の頃は外科や小児科も標榜していたのですが、今は私が内科医なので内科を標榜しています。診療については、風邪や腹痛から、高血圧、糖尿病、高脂血症、睡眠時無呼吸症候群まで、幅広く対応しています。ここは街の診療所なので、患者さんが「ちょっと気になる」「具合が悪い」ということで来院したときに、内科領域であれば何が来ても幅広く対応できることが大切。そのためにも、超音波検査器・レントゲン装置・心電計・血圧脈波測定装置・HbA1c測定装置などの検査機器も導入し、少しの変化にも気づけるよう丁寧に診療にあたっています。また、この近くには大阪警察病院や大阪赤十字病院などがありますので、必要に応じてそれらの病院を紹介して高度医療を受けていただくことも可能です。
飯山先生は糖尿病が専門でもあると伺いました。
日本内科学会総合内科専門医のほか日本糖尿病学会糖尿病専門医と日本老年医学会老年病専門医でもあることから、糖尿病・高血圧・高脂血症などの生活習慣病の治療・予防に力を注いでいます。今は生活習慣の欧米化などの影響で日本でも糖尿病の患者数がすごく増えていますので、当院でも糖尿病の患者さんが多くいらっしゃいますね。糖尿病は血糖値の推移を把握して、悪化しないようコントロールしていくことが大切なので、HbA1c測定装置を導入し、検査をして10分以内に血糖値の結果をお伝えし、速やかに治療に反映していけるよう環境を整えています。病院勤務時代に高齢者の慢性疾患の治療に長年携わってきた経験を生かして、糖尿病をはじめとする生活習慣病の慢性疾患を抱えている方の治療を続けていきたいと考えています。
糖尿病になるとどのようなリスクがあるのでしょうか?

過去1~2ヵ月の血糖値の平均を測定器で検査し、測定値6.5以上が数回超えると糖尿病の診断となり、7.0以上で合併症のリスクが高くなるとされています。糖尿病になっても初期ではほとんど症状がなく、そのまま放置すると神経障害・腎症・網膜症の合併症を引き起こすことも。神経障害では手足のしびれや痛みなどから始まり、ひどくなると足が壊死して最悪の場合は切断に至る場合もあります。しびれや痛みがあると要注意ですね。あとは腎症になって人工透析が必要になってしまうことも。血糖コントロールがうまくいかなくなると、網膜でも血管障害が起きて糖尿病網膜症になるリスクもあります。そこから視力低下や失明につながる例もあります。そうならないためにも、日頃から適度な運動をして、食生活に配慮して予防を心がけ、糖尿病になったら専門家のもとで血糖管理をしていくことで、合併症を防いでいきましょう。
コミュニケーションを大切にした温かい雰囲気の院内
日々の診療において心がけていることはなんでしょうか?

患者さんとのコミュニケーションを大切にしています。治療をする上でも、患者さんと医師の信頼関係が築けていることが重要。医師が高圧的になるのではなく、患者さんが言いたいことを話してもらいやすいように接するよう心がけています。大阪なので、たまに冗談を言ってみることも。ここで勤務するようになってから、だいぶ冗談を言うのが上達したと思いますよ。たまにテレビでお笑い番組を見たりすると、いろいろと参考になりますよね(笑)。あとは、基本的なことになりますが、ちゃんと理解していただけるよう説明はわかりやすく、患者さんに合わせて診療を行うようにしています。
休日はどのように過ごしていらっしゃいますか?
運動をしていますね。テニスをしたり、ゴルフをしたり。40歳過ぎあたりから健康のためにテニスを始めたんですよ。家内もテニスをするんですが、夫婦ですることはあまりないですね。彼女は小学生の頃からテニスをしているので、技術に差があって、私では相手にならないみたいですね。お互いのレベルに合った人とやっています。宝塚で暮らしているのですが、宝塚周辺にはいいゴルフ場がいくつかあるので、ゴルフは夫婦で一緒に行きますよ。
最後に日頃の院内の雰囲気や今後についてお聞かせください。

この地域は大阪ならではの気さくな方が多く、以前からここで開業している診療所ということもあり、患者さんとの関係もゆるやかで安定しています。スタッフの中には私より長くここで働いている人もいて、患者さんの話をよく聞くなど、温かな雰囲気の診療所だと思います。今後については、これからも、これまでと同じように地域の皆さんの健康を支える診療所としてやっていけたらと。内科の医師である家内が宝塚で開業している関係で、現在は月曜の午後診と木曜はそちらで診療をしていることもあり、診療枠に制限はあるのですが、隔週の水曜日に入る糖尿病内科の先生とともに、できる範囲で丁寧に診療を行っていきたいと思っています。私は「来た球はしっかり打つ。やるべきことはしっかりやる」タイプ。些細なことでも体に不安や不調を感じたら、気軽に相談に来ていただければと思います。