梶田 大輔 院長の独自取材記事
福川内科クリニック
(大阪市東成区/鶴橋駅)
最終更新日:2025/11/11
鶴橋駅から徒歩約2分。大勢の人々が行き交い、活気あふれる商店街にたたずむのが「医療法人隆福会 福川内科クリニック」だ。同院は2025年7月、日本胸部外科学会心臓血管外科専門医である梶田大輔先生が前院長より継承し、新たな体制でスタートを切ることになった。心臓血管外科の医師として数多くの症例に携わり、循環器疾患や生活習慣病など幅広い分野で経験を重ねてきた梶田先生。現在は「すべての患者さんは自分の家族である」という強い信念のもと、内科・訪問診療を中心に、地域を支えるため誠実な医療を提供している。また、昨今注目されることが増えてきた災害時の医療継続にも取り組む同院の方針や、医師としての原点、地域医療への思いについて語ってもらった。
(取材日2025年10月16日)
外科医を志した少年時代と、臨床で感じた医療の本質
医師を志したきっかけを教えてください。

子どもの頃から外科医に強い憧れがありました。テレビで手術の様子を見た時、「人の命を助ける仕事」という言葉が強く胸に残り、「自分も外科医になりたい」と感じたんです。小さい頃から細かい作業が好きだったので、手を動かして人を助けるという仕事に自然と惹かれたのかもしれません。医師になるというより、「外科医になるんだ」という気持ちが最初からはっきりしていたように思います。
医療への考え方に変化はありましたか?
働くうちに、「医療は病気だけを見るものではない」と感じるようになってきたと思います。診察をしていると、体の不調の背景には仕事や家庭、生活リズムなど、さまざまな要素が関係していることがわかります。同じ病気や症状が表れていても、原因は人それぞれなのです。薬を出すことも大切ですが、その方がどんな生活をしているか、どういう状況で体調を崩しているのかを知ることも、とても大切だと考えています。
そうした考え方が、今の診療にもつながっているのでしょうか。

そうですね。治療するというより、支えることを意識して、体の不調だけでなく、患者さんの生活全体を見るようにしています。血圧や血糖などの数値だけにとらわれず、どうしてそうなったのか背景を考えます。食事や睡眠、ストレス、家族との関係など、生活の中のいろんなことが病気や症状に関係している可能性がありますから、そうした背景を一緒に整理していくことで、初めて本当の意味での改善につながると思っています。
先生が考える「医師としての役割」とは何でしょうか。
医療とは病気を取り除く作業ではなく、人の人生に寄り添うことだと思います。患者さんがその人らしい生活を送れるよう支えるのが医師の仕事です。検査や薬は手段であって目的ではありません。大切なのは、患者さんが安心して過ごせるようにすること。そのためには、話をよく聞き、どうすれば無理なく治療を続けられるかを一緒に考えることが必要です。医療は「人を診る」こと。その人の背景や思いを理解して初めて、正しい判断や治療ができると考えています。
ご縁で出会った地域に、医療を誠実に届けたい
福川内科クリニックを継承された経緯を教えてください。

開業を考えていた時期に、偶然このクリニックを紹介されました。前院長先生とは面識がなかったのですが、地域の温かさに惹かれました。最初は不安もありましたが、今では良いご縁だったと感じています。
この地域の特徴はどんなところにありますか?
鶴橋エリアは昔からお住まいの方が多く、人と人とのつながりがとても強い地域だと感じています。年齢層や病気の種類などは、他の地域と大きく変わらないものの、患者さんの中には長く通ってくださる方が多くいらっしゃいます。「ここは昔からのかかりつけなんです」と言われることもありますね。そういう言葉を聞くとうれしいですし、地域にとって「ここに行けば大丈夫」と思ってもらえる場所でありたいです。年を重ねても自宅の近くに頼れる医療機関があるという安心感は、とても大きいと思います。
診療の中で意識していることを教えてください。

「当たり前のことを丁寧に行う」ことを大切にしています。検査や数値だけを見るのではなく、どうしてそうなったのか、その背景を一緒に考えるようにしています。血圧が高い場合も、生活習慣の中に小さな変化が隠れていることが多いです。だからこそ、話をしっかり聞くことが大切だと思っています。また、最新の医療を常に学び続けることも重要なので、勉強会などにも積極的に参加しています。医療は止まった瞬間に古くなる。アップデートを続けることが、患者さんを守る最も確実な方法なのではないでしょうか。例えば魚屋さんで「これが新鮮ですよ!」とお勧めされたら、なんとなく「きっと新鮮なんだろう」と信じて買ってしまうと思うんです。それと同じで、どんな医療が新しくて、どれが古いのかは、患者さんは知らないことも多い。ですから、医師が責任を持って「新しい・正しい・科学的な医療」を提供しなければならないと思っています。
災害など非常時への備えも意識されているそうですね。
はい。BCP(事業継続計画)という災害時の対応手順をまとめています。もちろん、クリニックが全壊してしまえばお薬を出したりすることは難しくなるでしょう。ですが、縫合用の針と糸があれば外科的な処置もできますし、けが人の搬送や、発電機を使って炊き出しを行うことも可能です。小さなクリニックでも地域を支える責任がある。だからこそ、非常時にも動ける体制を整えていたいと考えています。
在宅医療でつなぐ、患者と家族の安心
在宅での診療では、どんなことを大切にされていますか?

訪問診療では、病院とは違い患者さんの生活そのものを見ることができます。単に病状を診るだけでなく、食事・睡眠・住環境なども含めて総合的に考えることが可能です。その中で、患者さんやご家族にとって何が負担になっているのかを見極めることが重要です。また、訪問診療ではご家族との関わりも深くなります。対話を通して信頼関係を築くことがとても大切です。実際にご自宅を訪ねることで、今までは見えなかった家族の支えや生活の実態が見えてくることもあります。訪問診療によって、生活の中に医療が入ることで、より現実的で続けやすいサポートを提供できるのではないかと考えています。
看取りやご家族の支援について、どのように考えていますか?
ご本人だけでなく、ご家族も支えることが在宅医療の重要な役割だと思っています。最期の時間を自宅で過ごしたいという方も多く、家族の思いをどう支えるかが大きな課題になります。私たちは、医療的な処置だけでなく、家族が不安になったときにすぐ相談できるような関係づくりを意識しています。看取りの際に、ご家族が「最後まで家で過ごせて良かった」と言ってもらえるように尽力したいです。命を見届ける医療というのは決して暗いものではなく、そこには人のつながりがあります。地域の中には、体調が悪くても受診を諦めている方がまだたくさんいます。今後の目標としては、訪問診療をさらに充実させていきたいと考えています。
先生にとってのリフレッシュ方法は何ですか?

学生時代からずっとソフトテニスを続けています。実は、全国七大学総合体育大会で優勝した経験もあるんですよ。今は以前ほど時間を取ることはできなくなりましたが、それでも地域のサークルでソフトテニスを楽しんでいます。運動は心身のバランスを整えるための大切な時間ですし、食事も含めて健康管理を心がけています。
最後に、地域の皆さんへメッセージをお願いします。
病気のことだけでなく、ちょっとした体調の変化でも気軽に相談してもらえたらと思います。「なんかつらい」くらいの感じでいいんです。そういう日常のやりとりが、健康を守る第一歩になると思っています。地域の皆さんの生活の一部に、このクリニックがある。そう思ってもらえる存在でありたいです。仕事が忙しくてなかなか通えない、足が悪くて通院が難しい、などさまざまな患者さんのニーズに合わせて、オンライン診療にも対応しています。どんなことでも頼ってもらえたらと思います。

