西下 正成 院長の独自取材記事
西下消化器クリニック
(大阪市天王寺区/寺田町駅)
最終更新日:2025/06/06

1998年に開業した「西下消化器クリニック」は、消化器外科や中小規模病院の院長など、豊富な臨床経験を持つ院長の西下正成先生が、内科の医師でもある西下房子夫人と力を合わせ、患者や家族の立場に立った誠意のある診療を行っている。診療範囲も風邪や生活習慣病の治療といった一般内科から、消化器内視鏡検査・心電図検査などの専門分野までと幅広い。また、以前診ていた患者や家族の相談にも親身になって対応するなど、その温かな人柄に信頼を寄せる患者も多いという。そんな西下院長にかかりつけ医としての心構えや内視鏡検査のノウハウ、患者への思いなどを語ってもらった。
(取材日2017年11月9日)
外科の医師としての経験と技術を生かした内視鏡検査
大学病院での専門は消化器外科だったそうですね。

私の父は当院と同じく天王寺区にある西下胃腸病院の初代の院長でした。兄も医師だったので、私は父の後を継ぐ必要がなく、大学では消化器外科を専攻しました。卒業後、母校である関西医科大学の医局に残り、約7年間は臨床と研究の毎日でしたね。そこで、学生時代にお世話になった恩師から、医師としての薫陶を受けました。大学病院ということもあって、消化器外科では朝から晩まで何件もの手術があります。すべて終了すると併設の浴室で汗を流すのが習慣で、その時に恩師が今日の手術の解説やノウハウに始まり、患者さんや家族への対応、今でいうインフォームドコンセントに至るまで、微に入り細に入り説明してくれるんです。この風呂場講義で学んだことが、私の医師としての基本をつくってくれました。
開業された経緯を教えてください。
実は、父が亡くなってしまったので、兄が院長を務める西下胃腸病院の副院長に就任することになったんです。その後、兄も亡くなり院長に。約22年間、60床ほどの入院施設もある西下胃腸病院で、潰瘍性大腸炎やクローン病などの難病を含む内科診療にあたりました。同院での役目を終えた後は友人の病院を手伝うなどして、自分では勤務医のほうが気が楽でいいかなと思っていたのですが、以前の患者さんが自宅にまで来るようになって……(笑)。1998年に、現在の西下消化器クリニックを開業しました。今までと違い当院は個人医院ですから、風邪や生活習慣病など一般内科を含めて、患者さんに寄り添った地域のかかりつけ医として診療を行っています。
内視鏡検査では、外科の医師としての経験も生かされているのでしょうか。

そうですね。特に大腸内視鏡は、曲がりくねった腸に非常に長いスコープを挿入しなければなりません。外科の医師だった時代は、手術で直接腸に触れることも多く、微妙な腸のカーブを体感するなど、その頃の経験は非常に役立っています。また、内部をリアルタイムで可視できるファイバースコープが開発される前、感覚で撮影していた時代から胃カメラを扱ってきましたので、自分なりの経験則から得た技術的なアドバンテージもあるのではないでしょうか。ポリープがあっても、早期発見がかなえば30分ほどの手術で処置ができるので、ぜひ安心して検査を受けてほしいですね。
「誠心誠意」患者の立場に立った診療がモットー
胃内視鏡検査をする際にこだわっていることはありますか?

まずは、胃の中を徹底的に洗浄することです。タンパク質分解酵素を溶かした液を内服する前処置はどこの病院でも行っていますが、当院では処置の当日、自宅での水の飲用を勧めています。これは、胃内の洗浄が完璧であればあるほど、内部の状態がクリアに観察できるからです。次に、喉頭麻酔で痛みや嘔吐感を抑えること。そして、画像を確認する際には、当院に在籍する看護師や放射線技師など、必ず複数人でくまなくチェックします。1人より2人、2人より3人のほうが、見逃しがより少なくなります。また、医師の意見を取り入れ、年々飛躍的に進化を遂げる新型機器の導入も検査精度を上げるために必要です。
奥さまも医師で、こちらのクリニックで一緒に診療されておられるそうですね。
彼女は内科全般を担当しておりますが、お互い専門分野が違うので、幅広い範囲の検査や治療ができるのも強みです。患者さんの症状に合わせて処方する薬はどれがベストか? 検査の診断に見落としがないか?など、常に意見交換を行うことで、より適切に診断・治療ができます。さらに、勉強会や友好関係など別々のネットワークから得た情報を共有するなど、メリットは非常に大きいと感じています。私が内視鏡検査をしている間は診察にあたってくれますし、妻は本当に心強い存在ですね。
医師として一番大切にしていることは何ですか?

私のモットーは「誠心誠意」、妻は「患者さんの身になって」と、私たちはとにかく患者さんやご家族の立場に立った対応を心がけています。がんの告知をはじめ、医師は時として、患者さんに非常に厳しいことを言わなければならない場合があります。なので、事務的にならず、その人の状況や性格などを十分に考慮した上で、誠意を持って接することがとても大切です。そのためにも、健康に不安を感じて来院される患者さんにしっかり向き合い、きめ細かいコミュニケーションを取ることが不可欠です。患者さんが安心して診察・治療が受けられるよう、これからも丁寧な対話を続けていきたいと思っています。
元患者や家族からの相談にも篤実に対応
以前診療していた患者さんの相談にも乗っておられると聞きました。

開業して20年近くなると、長年通ってこられる患者さんも高齢化が進み、ご家族や本人から当院での診療以外にもさまざまな相談を受けます。先日も96歳の元患者さんがターミナルケアを受けられるよう、JR大阪鉄道病院に交渉していました。ターミナルケア施設はまだまだ少なくて、病床の数も足りていません。その方は無事に入院が決まって、本当に良かったと思っています。同様の案件を含めて、いろいろな相談を受けますが、私ができ得る限りのことはしていきたい。それが、かかりつけ医としての役割ではないかと認識しています。
話は変わりますが、先生はどんな学生時代を過ごされたのでしょうか?
私の大学時代は学生運動最盛期で、その影響で卒後のインターン実習がなくなってしまったため、6回生の夏休みを利用し、友人と旅に出ました。日本では想像できないくらいエネルギッシュな香港やインド、イラクではクーデターに居合わせて空港に缶詰めになるなど、カルチャーショックの連続でしたね。ヨーロッパに渡って約2ヵ月、バックパッカーの旅を続けました。アメリカにも行きたかったのですが、行けず、帰国し国家試験を受けました。その後、先ほどお話ししたとおり、関西医科大学の医局時代は臨床を学ぶために静岡、愛媛、高知、和歌山などに出張を命じられて、臨床医として研鑽を積みました。消化器外科以外の科目を診ることも多く、その経験が今に生きているのでしょうね。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

最近はがんも早期発見できれば、簡単な手術や負担の少ない治療で完治がめざせる可能性が高くなってきたので、臆さずに検査を受けてほしいと思います。当院は上部消化器官・大腸の内視鏡検査、大腸ポリープの日帰り手術において豊富な実績を持っていますので、安心してなんでも相談してください。今後も治療や予防、健康相談など、幅広い範囲で皆さんの健康管理に役立つ診療を続けていきたいと思います。