松川 俊一 院長の独自取材記事
松川耳鼻咽喉科医院
(相楽郡精華町/高の原駅)
最終更新日:2025/02/28

近鉄京都線・高の原駅から車で約5分の場所にある「松川耳鼻咽喉科医院」。開業から29年、地域の健康を支え続けてきた。京都大学で理学を学んだ異色の経歴を持つ松川俊一院長は、35歳を超えて医学の道を選択。穏やかな人柄と丁寧な診療で、地域のかかりつけ医として信頼を集めている。一般的な耳鼻咽喉科疾患はもちろん、アレルギー症状に対する免疫療法やめまい治療などの幅広い症状に対応。クリニックは鉄筋コンクリート造りのモダンな建物で、応接室のような広々とした待合室にはゆったりとしたソファーを配置。広いキッズスペースを設け、そこからつながるウッドデッキにはブランコなどの遊具も備えている。「特別なことはしていないんですよ」と謙遜し、やわらかな笑顔を見せる松川院長に、医師になった経緯や診療方針について話を聞いた。
(取材日2024年11月28日)
開業29年。地域の健康を支える耳鼻咽喉科
35歳を越えてから医師をめざされたそうですね。開業までの経緯を教えてください。

最初から医師になるつもりはなく、京都大学で物理学を学び大学院博士課程まで進みました。その後、民間企業の研究所で磁力に関する研究を行っていたんです。ですが、研究者としての経験を積む中で、もっと自分の裁量で仕事をしたいと考えるようになり医師の道を選びました。受験勉強は、長女と机を並べて取り組んだんですよ。私は医学部受験で、長女は中学受験でした。39歳の時に大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部に入学し、44歳で卒業しました。卒業後は、同大学で研修医として働き、その後、東大阪市内の病院の耳鼻咽喉科で2年ほど勤務しましたね。基本的に私1人で診療を担当し、風邪や花粉症など一般的な耳鼻咽喉科疾患の診察、処置を行っていました。その経験を経て、1996年にこの土地で開業しました。
なぜこちらで開業されたのでしょうか?
もともと奈良市に住んでいたこともあって、当初は奈良市内での開業を考えていました。妻が奈良市内で塾を経営していて、土地勘もありましたからね。ですが精華町を訪れた際に、当時はまだ周辺に家が少なく、これから発展しそうだと可能性を感じたんです。それに加えて、車でのアクセスの良さもこの土地に開業を決断する要因となりました。
どんな患者さんが来院されますか?

現在の患者構成は、成人が約5割、子どもが3割、高齢者が2割程度です。開業して29年になりますが、患者層の変化はほとんどありません。子どもの場合、風邪をこじらせて咳や痰が出る、夜間の呼吸が苦しいといった症状で来院されることが多いです。治療面では、特に保育園児など小さなお子さんの内服治療に苦労することが多いですね。例えば、マクロライド系の抗生物質は味が悪く、小学生以上でないとなかなか服用が難しい。そのため乳幼児の場合は、できるだけ成分が1つの薬である単剤での処方と、丁寧な処置を中心とした治療を行っています。高齢者は、主にめまいや耳鳴りといった症状で来院されます。また、近年ではどの年代においてもアレルギー疾患が増加傾向にあるのが特徴です。
病院が苦手な子どもに対し、どのように接していますか?
病院に恐怖心を持つ子どもには、慎重に対応するようにしています。最初は診察台に座るだけでも怖がったり、器具を見ただけでも不安になったりする子もいますから。そんな時は、丁寧に説明しながら、少しずつ診察に慣れてもらうようにしています。たとえ落ち着きがなくても、診察中に頑張れたことはしっかりと褒めるようにしています。「ちゃんとできたね」と認めてあげることで、何回か通ううちに次第に慣れてきて、診察もスムーズにできるようになるといいですね。また、耳垢の除去など精密な処置が必要な場合は、より一層慎重に対応します。小さなお子さんの場合は、ご家族にサポートをお願いすることもありますが、年齢が上がるにつれて、むしろお子さん自身の協力が大切になってきます。安全な処置ができるよう、細心の注意を払いながら対応しています。
患者の不安を解消する「目で見てわかる」説明を
先生の診療方針を教えてください。

患者さんに、ありのままを伝えることですね。例えば、声のかすれの症状があれば写真を撮って状態を説明します。副鼻腔炎の場合はエックス線検査で症状の程度を確認して、どのくらい悪いのかを具体的にお伝えしています。耳の症状がある場合も、内視鏡で診察し、画像をお見せしながら説明します。耳や鼻の中は、基本的に見えませんからね。視覚的な情報を通じて、患者さんご自身に症状をしっかりと理解してもらうようにしています。治療に関しては、つらい処置が必要な場合もありますが、しっかりと治療を行うようにしています。適切な処置を行うことが、早期の回復につながりますからね。
副鼻腔炎の治療で、患者さんご自身が気をつけるべき点はありますか?
副鼻腔炎は、1回で治療が終わることはまずありません。少なくても2〜3週間、場合によっては1ヵ月ほどの治療期間が必要です。症状がなくなると通院をやめたいと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、治療がしっかり終わるまで通院を続けることが大切です。途中で治療を中断してしまうと、また症状が繰り返されてしまうことがあります。慢性の副鼻腔炎の患者さんは、主に咳・夜間の咳き込み、長引く咳払いといった症状で悩まれます。一方、急性の副鼻腔炎で痛みを伴う場合は違うアプローチで治療を行います。その場合は適切な治療により、比較的早く痛みの改善が見込めることが多いです。やはり大切なのは、症状が良くなってきても、最後まで治療を続けていただくことです。そのことを患者さんによくお伝えするようにしています。
高齢者はどのような悩みが多いですか?

めまいや耳鳴りの症状ですね。耳鳴りは原因がまだ十分に解明されておらず、治療が難しい病気の一つです。一般的な投薬治療を行いますが、夜眠れないほど症状が重い場合は、専門の医療機関をご紹介することもあります。めまいについては、良性発作性頭位めまい症や血圧の変動による症状が多いです。重度のめまいや脳に異常がある可能性がある場合にも、専門の医療機関をご紹介します。幸い、近隣に手術設備の整った病院があり、各分野の専門的な技術や知識のある医師が在籍しています。信頼できる病院なので、安心して紹介させていただいています。
最後まで患者に寄り添う医師でありたい
気さくで明るい雰囲気のスタッフさんばかりですね。

スタッフとはできるだけフラットな関係性を心がけています。現在、看護師を含め8人のスタッフが在籍していて、3人のスタッフは開業以来、20年以上の付き合いになります。他のスタッフも10年以上一緒に働いている方が多いんですよ。シフトに関してもスタッフ同士で柔軟に調整するなど自主的に行動してくれるおかげで、治療に専念できています。診療後もスタッフルームに残って30分ぐらい話をするなど、スタッフ同士の仲も良く和気あいあいとした雰囲気なんです。長く働いてくれているスタッフが多いのも、そうした関係性が築けているからかもしれませんね。
あと2年ほどで閉院を予定されているとお聞きしました。
健康上の理由もあり、2年ほどでの閉院を考えています。長いお付き合いの患者さんの中には「先生の顔を見ただけで安心する」と言ってくださる方もいるんです。そんな患者さんのことを考えると、心苦しい思いです。今この地域には耳鼻咽喉科の医師が、数少なくなってしまいました。それもあって、私が閉院すると患者さんのことを考えると心配です。地域で頑張ってくれる後任の先生に継いでもらいたいのですが、なかなか見つかりません。地域の患者さんの通院のことを考えると、本当に気がかりです。
最後に読者と現在の患者へのメッセージをお願いします。

29年という長い間、地域の耳鼻咽喉科のクリニックとして診療を続けてこられたことに、まずは感謝申し上げます。今後閉院することで、一番の心配事は患者さんのことです。後任の医師が見つかり、患者さんが安心して通院できる環境が整えられることを願っています。最後まで、これまで同様にしっかりと診療を続けていきますので、お困りのことがあれば気軽にご相談にお越しください。