澤井 和信 院長の独自取材記事
さわい内科医院
(京田辺市/松井山手駅)
最終更新日:2025/09/04

松井山手駅から徒歩12分の「さわい内科医院」は、2024年に移転・建て替えを行い、祖父から3代70年以上続く地域医療の新たな一歩を踏み出した。澤井和信院長は言語学を学び英語塾を開いていた異色の経歴を持つ。生徒一人ひとりが「何に困っているか」を探る指導法が医師の診察と似ていることに気づき、医学部に入り直して医師になった。「何でも話せる健康よろず相談窓口」をコンセプトに、患者を否定せず寄り添う診療を実践。「安心よりも安全」という具体的な基準で医院づくりを行い、専門性を生かしながらも幅広い相談に応じている。穏やかで優しい人柄の澤井院長に、英語塾から医師への転身の経緯や診療への思いを聞いた。
(取材日2025年8月18日)
塾講師から医師へ、異色の転身
英語塾から医師へという異色の経歴をお持ちですが、どのような経緯だったのですか?

立命館大学で社会科学を学び、アメリカ留学から帰国後、英語塾を開いていました。塾では中学生から大人まで教えていましたが、教科書の内容を伝えるのではなく、生徒一人ひとりが「何に困っているか」を聞いて対応していました。何がわからないのか、なぜ英語が嫌いなのかを探り、時には一緒に本屋に行って教材を選ぶこともありました。実は私自身、学生時代は勉強の仕方がわからない子だったんです。でもアメリカで「勉強ってこういうことか」とわかると面白くなった。その経験から、できないのは教え方の問題だと気づきました。一人ひとりに合わせた指導を心がけていたんです。
その英語指導が医師への転向には、どうつながったのでしょうか?
医師である弟の医学生時代の勉強を手伝ったことがきっかけでした。医学書や国家試験の問題を一緒に見ているうちに、診断して問題を見つけ、その人に合わせて対応するという医師の仕事が、塾での指導とそっくりだと気づいたんです。健康の問題は本当に幅広く、これは面白いなと興味を持ち始めました。当時、塾は医院の隣でやっていて、父の診療を見ながら「似たことをやっているな」という意識がずっとありました。医師になると決めた時も、健康の問題かどうかもわからないような悩みを持つ人の話を聞けることを興味深く感じ、一般診療所のスタイルしかないだろうと考えていました。
医院の継承についてはどう考えていましたか?

医師を志した時点で、継承は念頭にありました。祖父がこの地域で開業し、父が引き継いでから合わせて70年以上になります。祖父は昔、バイクで往診に回っていて、今でも「おじいさんがバイクで来てくれた」と懐かしむ患者さんがいらっしゃるんですよ。2024年4月に移転・建て替えをしましたが、元の場所から数百メートルしか離れていません。新しい医院では待合室を広くし、患者さんがあちこち移動しなくていいよう動線を工夫しました。前の医院は待合室が小さく、多い時は外まで人があふれていたので、空間に余裕を持たせることで患者さんも余裕を持って過ごせるようにと考えました。
腎臓を診て全身を診る、幅広い内科診療
腎臓内科を専門にされた理由を教えてください。

腎臓は全身とコミュニケーションを取る非常に重要な臓器です。症状が出にくいため、気づかないうちに悪くなる方が多く、症状がないまま透析になってしまう人をたくさん見てきました。もう少し早ければと思うことが多かったんです。透析になると生活が大きく変わりますから、その手前で気づいてもらえるよう、院内でも積極的に情報提供をしています。高血圧や糖尿病も腎臓に影響しますし、全身のバランスを診るという意味でも腎臓内科の専門性は役立っています。開業医の立場から早期発見・予防に力を入れたいと考えています。
「何でも話せる健康よろず相談窓口」というコンセプトについて教えてください。
私は「これは病気なんですか?」というレベルの相談でもいいと思っています。なんとなく痛い、体が重いという漠然とした症状でも、まずは話を聞くことが大切。自分の専門外だから診ない、ということはしません。必要があれば適切な専門の医療機関や医師を紹介しますが、まずは患者さんの不安や困り事をしっかり受け止める。それが町の内科医の役割だと私は考えています。
診療で心がけていることは何ですか?

絶対に患者さんの話を否定しないことです。よっぽど危険なことでない限り、まずは受け止めます。患者さんが言っていることは、間違いではなくその時点での一つの完成形なんです。例えば慢性疾患の場合、今の状態と目標とする状態との距離がどれくらいあるのか、どう近づけていくのかを一緒に考えます。病気を管理するために生きているわけではないので、どうやったらビールを飲めるかなど、その人の生活を大切にした提案をします。ご家族には「先生甘い」と言われてしまうかもしれませんが、患者さんが何に困っているのかを理解し、その人に合った方法を見つけることが大切だと思っています。
安全に配慮し、信頼の医療を築いていく
「安心」よりも「安全」を重視されているそうですが、どういう意味でしょうか?

不安の反対は安心だと思われがちですが、安心って実は曖昧なんです。人によって尺度が違いますし、安心を求めて間違った方向に行くこともあります。それに対して「安全」は具体的です。院内の感染症対策、薬の飲み合わせへの配慮、バリアフリー設計など、すべて具体的な行動につながります。心理的な安全も大切で、電話対応から診察、お帰りになるまで、ここにいれば安全だと感じてもらえる場所にしたい。細部まで気を配ることで、派手さはなくても「また来たい」と思える医院になると考えています。
スタッフへの指導にも、通ずるのでしょうか?
英語塾の時と同じで、教科書を作って押しつけるのは好きではないので、スタッフ一人ひとりが自分の中の良いものを出せるとうれしく思います。上から決めつけると私のやり方になってしまいますから、それぞれの自主性を大切にしています。もちろん問題があれば指摘しますが、基本的には診察の様子を見ながら、この医院がどういう空気で運営されているかを感じ取ってもらっています。スタッフが自分で考えて動けるようになると、それが患者さんにも伝わり、温かい雰囲気になるのではないでしょうか。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

現在は高齢の患者さんが多いですが、今後は家族全体、家庭環境そのものを診られるようになりたいです。中高生で小児科から移行を考えている方や、女性の患者さんにも来ていただきたい。昨年まで漢字の「沢井」でしたが、小さな子どもにも覚えやすいようひらがなの「さわい」に変えました。患者さんの話を聞く時は、想像力を持って、その人の立場に立って考えることが大切です。自分の基準で当てはめると押しつけになってしまいますから。何か困ったことがあれば、どんなことでも相談に来てください。あらゆる世代の方に「何でも話せる」医院として認知してもらえたらうれしいです。