岡田 貴史 院長の独自取材記事
岡田整形外科医院
(京都市山科区/椥辻駅)
最終更新日:2025/08/08

東野駅から徒歩15分、レトロな風情が漂う住宅街に「岡田整形外科医院」はある。ここは、1991年の開業から34年間、地域医療を支え続けてきたクリニックだ。そんな同院を、2025年4月に岡田貴史院長が初代院長の父から継承したという。岡田院長は関西医科大学卒業後、複数の病院で豊富な手術経験を積んできた医師でありながら、常に謙虚な姿勢を欠かさない。父親が築いた診療の基盤を大切に、ガイドラインに沿った治療と新たな技術の更新を両立し、地域の健康寿命延伸をめざしている。また運動習慣の大切さを患者にも伝えようと、毎日1万歩のウォーキングと週1回の筋力トレーニングをこなすストイックな一面も。開業時からのスタッフとともに、温かな雰囲気の中で診療を続ける岡田院長に、継承への想いや今後の展望について聞いた。
(取材日2025年7月18日)
父から継承した地域密着のクリニックで、新たな一歩を
今年4月に医院を継承されたそうですね。

父が72歳になり、健在なうちに引き継ぎたいと思ったんです。この医院は34年前に父が開業したもので、当時は高知から引っ越してきた祖父母も手伝ってくれていました。祖父母はともに亡くなりましたが、開業当初から医院の仕事を手伝い、家族みんなで盛り上げてきた場所なんです。僕も幼い頃からよく遊びに来ていて、家族経営の温かい雰囲気を見て育ちました。父はまだ週に1度診察を続け、事務作業なども手伝ってくれています。父のもとに来られる患者さんも多いので、これまでの良い所はしっかりと継承していきたいと思っています。
先生のご経歴について教えてください。
関西医科大学を2015年に卒業後、京都府立医科大学附属病院で2年間の初期研修を行いました。その後、京都府立医科大学の整形外科医局で1年。愛生会山科病院で2年間勤務、といった形です。特に愛生会山科病院では松尾副院長にたいへんお世話になりました。その頃はまだ駆け出しだったので、さまざまな面で面倒を見ていただいたことを今も覚えています。当時、特に力を入れていたのは骨折や脱臼といった外傷の治療です。中でも骨折手術には数多く携わりましたが、手術は一通り経験させてもらえたように思います。その後は京都第一赤十字病院、岐阜の朝日大学病院で3年間勤務し、今年4月にこちらに戻ってきました。整形外科の道を選んだのは、学生時代にテニスやスキーなど体を動かすのが好きだったからです。実は僕自身、大学時代にスキーで転倒して腰椎椎間板ヘルニアになり、手術を受けた経験があって。患者さんの気持ちを知る、良い経験になりました。
この地域の特徴について教えてください。

山科区は、高齢化率が京都市で一番高い地域なんです。当院の患者さんも8割くらいが高齢の方で、長年通院されている方が多いですね。この地域の方はとても地元愛が強く、本当にいい方が多くて、とても心地良いです。昔ながらの住宅街で、長くお住まいの方が多い地域ですから、父の代から30年以上のお付き合いがある患者さんもたくさんいらっしゃいます。そういった長い信頼関係があるからこそ、僕も受け入れていただけたのかもしれません。その他、働き盛りの世代や、けがなどで来られるお子さんもいらっしゃいますよ。レトロな雰囲気が残る温かい地域で、地域のかかりつけ医として幅広い年齢層の患者さんを診させていただいています。
豊富な手術経験を生かし、適切な治療方針を提案
豊富な手術経験をクリニックの診療にどう生かしているのですか?

例えば、保存療法を続けるのか手術をするのかという判断は、手術経験の有無が問われる部分です。年齢・性別はもちろん、職業やスポーツの習慣、そして生活様式まで加味して治療方針を決めないといけません。さらに術後の経過も見た経験がないと、手術適応を含めた治療方針の決定はとても難しいと思います。僕も、患者さんに本当に喜んでいただくためにはどう治療するのがベストなのか、医師になってからもずっと考え続けて来ました。勤務医時代に若い方の外傷の手術に多く携わったのですが、働き盛りの方にとってはお仕事への復帰までできて初めて社会復帰であり、ご高齢の方とは観点がまったく違うんです。その方の背景をすべてくみ取った上で、治療方針を判断する。これは勤務医時代に数多くの症例を経験してきたからこそできることだと思っています。一人ひとりに合わせた治療方針を立てられることが、僕の強みなのかもしれません。
こちらでは、どのような診療を行っていますか?
整形外科の一般的な診療は網羅していて、肩の痛み、腰の痛み、膝の痛み、足の痛みなど、幅広く対応しています。学生時代に関西医科大学の飯田寛和先生の人工股関節手術を見て感銘を受けたのがきっかけで、人工関節に興味を持ちました。また、骨粗しょう症治療にも力を入れています。ご高齢の方は骨粗しょう症によって骨折をされることが多く、その重要性がますます認識されるようになりました。プライマリケアを大切にしていて、外傷の初期対応をしっかりすることで、その後の治療がうまくいくよう心がけています。
診療で大切にしていることはありますか?

受診へのハードルを低くして、地域密着でやっていきたいですね。父が診療する姿を見て育ったからか、「町医者」みたいな医師像が自分の中の理想としてあるんです。最近ははやらないのかもしれませんが、そういう患者さんに寄り添った医療を続けていきたいですね。診療をする際には、丁寧な対応とわかりやすい説明を心がけています。ご高齢の患者さんが多いので、検査結果の説明なども細かく丁寧にしていますよ。「これは腰椎を横から撮影したときのレントゲン画像ですよ」といった具合にです。それと同時に、ガイドラインに沿った治療を地域に提供していきたいとも思っています。父の時代と比べると医療技術も進歩していますから、治療内容を新しくアップデートすることも必要です。変えずに続けることと、新しくすることのバランスを大切にしながら、適切な治療を提供していきたいですね。
近隣病院とも手を携え、地域の健康寿命延伸をめざす
スタッフさんについても教えてください。

看護師が3人、受付事務が2人、リハビリテーション助手が4人勤務しています。驚くのは、看護師の2人は開業時から34年間、受付の2人も10年以上働いてくれていることです。長い間一緒に力を尽くしてくれることにいつも感謝しています。受付スタッフは、いつもはきはきしていて、患者さんに声をかけては世間話などをしてくれます。職員同士も仲が良くて、明るい方もいれば穏やかな方もいて、バランスが取れているんです。診療が円滑に進んでいるのは、僕一人の力ではありませんので、本当にありがたいですよね。患者さんも顔なじみがいれば、安心して受診できると思います。
今後の展望について教えてください。
基本は今のスタンスを続けて、適切な治療を提供したいと思っています。地域の方の健康寿命を延ばし、プライマリヘルスケアにつなげていきたいですね。そして地域連携も大切です。もともと勤めていた愛生会山科病院や洛和会音羽病院には知り合いの先生もいるので、協力しながら適切な治療を提供できればと思います。病院の勤務医というのは本当に多くの患者さんを診て多忙ですので、そういった先生方のサポートをするのも僕の役目だと思っています。例えば症状の安定した患者さんのフォローアップや骨粗しょう症治療の継続とか、勤務医の先生がカバーしづらい部分を当院で担えたらいいですね。そうやって地域全体の医療に貢献していきたいと考えています。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

僕も歳を取ってきて肉体の衰えを感じており、運動習慣は本当に大事だと実感しています。以前、子どもと公園へ行った際、鉄棒を見つけてぶら下がったら1回も懸垂ができず、愕然としました。昔は運動神経が良く、鉄棒も得意だったのですが……。そこで、今年の2月から筋力トレーニングを始めたんです。今は週1回ジムに通い、毎日腕立て伏せ、スクワットもやっています。また、1日1万歩のウォーキングも心がけ、歩いて通勤するようにしました。これらは自分の健康のためでもあるのですが、実際に運動習慣を実践することで、患者さんにご説明をする際にも説得力が出るのではと思ったんです。運動は骨密度を高めることで骨粗しょう症の予防効果も期待できるため、ぜひ若い方にもお勧めしたいですね。運動は習慣化することによって継続しやすくなります。ぜひできることから始めてみてください。