柏木 智博 院長の独自取材記事
柏木産婦人科
(京都市右京区/帷子ノ辻駅)
最終更新日:2025/04/09

京福電鉄嵐山本線・帷子ノ辻駅から3分、嵯峨野線・太秦駅からも10分ほど、静かな住宅街の中を歩くと見えてくる、タイル張りで丸みを帯びた外観が特徴的な建物が「柏木産婦人科」だ。院長は、1999年に同院を継承した柏木智博先生。父の代から親子2代、70年以上にわたり地域の産婦人科医療に貢献してきた。柔和で明るい表情と話し方が印象的で「妊娠・出産だけでなく、性差医学に基づいた診療・治療に注力し、女性の一生を支えたい」と優しく語る。今回はそんな柏木院長に、同院の特徴や注力している分野、患者と接する上で大切にしていることなど、幅広く話を聞いた。
(取材日2019年11月11日)
父の代から70年以上、地域貢献を続ける産婦人科医院
地域でも長年診療を続けている医院だと伺いました。

柏木産婦人科は1959年、私の父によって開業されました。最初はこの場所に医院兼自宅を構えていたのですが、その後ここからすぐの場所に2院目の産婦人科医院を建て、この場所は自宅のみに。そして1997年、私たちへの医院継承を前提に、自宅があった場所に3院目を建設することになったんです。1年ほどかけて建設し、1998年5月にこの建物が完成して、現在の姿となりました。今はここだけを運営しています。私が院長として父から医院を継承し、実弟である副院長とともに運営するようになったのは、1999年からですね。
この医院を建設される際、こだわったことはありますか?
できるだけ明るい雰囲気にすること、そしてトイレ・浴室設備を全個室に備えることですね。この建物を建設した20年ほど前には、産婦人科は女性のみが来るところ、また、妊娠中絶も行うことから暗いイメージもありました。でも私は、男女関係なく誰もが気軽に入れる、病院らしくない病院にしたかった。赤ちゃんの成長はお母さんだけでなく、お父さんや兄弟・姉妹など、家族みんなで見守ってほしいですから。そこでいかにも病院らしい四角い外観ではなく、丸みを帯びた形にして外壁にはタイルを張り、内装には、らせん階段を設置しました。「結婚式場みたい」と言われることもありますが(笑)、女性にも男性にも喜んでいただけていると感じますよ。
医院開業から70年、こちらへ移転してから20年ですが、どんな患者さんが来院されていますか?

当院は分娩対応の産婦人科医院ですので、患者層で最も多いのは、20~30代の妊産婦さんになります。ただ、妊産婦さん以外にも、月経困難症や生理痛に悩む女性や、旅行やスポーツのために月経の周期を移動させたいと言う10代の女性、更年期による体の変化・不調のために来院される40~50代女性まで幅広い年代の方がいらっしゃいますよ。最近では妊産婦さんの健診にご主人が付き添って来られることも多いので、男性が院内にいらっしゃることも珍しくありません。中には男性不妊や生活習慣病の相談、インフルエンザワクチンの接種など、内科的な目的から来てくださる男性もおられます。
性差医学に基づく医療の提供にも注力
こちらの医院では、どこまでの診療・治療に対応しておられるのでしょう。

月経トラブルの相談や治療、妊産婦さんの定期健診、帝王切開を含むお産への対応は可能な限り当院で行っており、4Dエコーによる動画撮影も対応しております。乳がんや子宮頸がんをはじめ、卵巣・卵管の疾患、不妊治療のご相談にも対応していますが、いずれもより詳しい検査や外科手術を伴う治療が必要な場合は信頼できる他院へご紹介させていただきます。また、当院の乳がん検診では、乳腺の自己触診法の指導にも力を入れています。乳がんは他の部位と違い、自分で触って気づけるがんなので、自己触診のやり方を覚えて定期的に行ってほしいですね。不妊治療に関しては当院で対応できるのは人工授精まで。体外受精や顕微授精などの治療を希望される場合、専門の設備のある他院を紹介させていただきます。私と副院長で曜日や時間により診療を分担していますが、診察は基本的に2人ともすべて対応しているので、いつでもご相談に来ていただいて大丈夫です。
患者さんにとって、こちらのような町の産婦人科医院を利用するメリットは何だと思われますか?
まずは融通が利く、小回りが利くところではないでしょうか。例えば通常、検査を受けて結果を通知してもらうには再診の必要がありますよね。しかし当院では希望者に対し、電話での本人確認と結果の通知も行っています。お忙しい中、どうしても再診いただくのが難しいこともありますからね。あとは大規模な医院・病院に比べて、患者さんと長く親密な関係を築いていけるところも、町の医院の良いところかもしれません。産婦人科は妊娠・出産に関わる年代の女性だけを対象にした診療科目ではないんです。月経の相談や妊娠・出産の時のご縁をきっかけに、年齢を重ねたことによる不調まで相談いただけるような信頼関係を長く築きたいと日々努めています。
力を入れている診療・治療分野があれば教えてください。

性差医学に基づいた、女性特有の疾患や不調の検査・治療に力を入れています。男女ともに加齢による老化や不調は現れますが、子宮・卵巣・卵管と男性にない器官を持ち、年齢とともに女性ホルモンの分泌量が低下する女性には、男性と違ったかたちで不調が現れることも。代表的なのが高血圧、高脂血症、糖尿病、メタボリック症候群、うつ傾向を生じさせる更年期障害です。妊娠中も人によっては高血圧や糖尿病になりやすくなりますが、私は経験から、妊娠中に現れる不調と更年期になってから現れる不調には関連性があると考えています。また、こういった病気は家系によるところも大きいんです。赤ちゃんとお母さんの健康状態を記録した母子手帳は、自分たちの将来のための記録として大切に保存していただきたいですね。体力の続く限りお産への対応を続けるとともに、性差医学に基づく医療に力を入れ、女性の一生を支えていける医師になりたいんです。
妊娠・出産だけでなく女性の一生を医師として支えたい
先生が産婦人科の医療に長く注力されてきた理由は何でしょうか?

産婦人科の医師をめざしたきっかけは、父が産婦人科の医師だったからという単純なものです。弟と2人、小さい頃から何となく「いつかは継ぐのかな」と考えていました。しかし聖マリアンナ医科大学で医療を学び、研修医として働く中で考えが変わったんです。研修中には子宮がんや乳がんで手の施しようがなく、亡くなる方をたくさん見ました。一方で赤ちゃんを取り上げ、生命誕生の瞬間にも数多く立ち会わせていただいたんです。その中で強く感じたのは、誕生と同様に人の死も尊く向き合うべきものだということ、そして他科にできない赤ちゃんの取り上げを行える、産婦人科の医師の大きなやりがいでした。あの時の経験があったから、赤ちゃんの誕生はもちろん、すべての年代の女性を支えられるようになりたいと思い、頑張ってこられたのかなと思います。
先生が患者と接する上で、大切にされていることを教えてください。
「生意気な医師」にならないこと、プロが見ても納得できる医療を提供することの2つですね。生意気な医師とは、患者さんに上から目線で尊大な接し方をする医師のこと。患者さんと医師の関係は対等ですから、一緒に現状を理解し治療法を考えて行くべき関係のはずです。そこに上下関係を発生させるのは、おかしいと思うんです。そしてプロが見ても納得できる医療とは、同じ産婦人科医師が見ても「すごいな」と感じ、納得するような医療という意味合い。それを提供することがモットーです。
読者へのメッセージをお願いいたします。

内診に恐怖心があり、行くのがためらわれる、または産婦人科は妊産婦さんだけを対象とした場所で、自分に関係ない場所と思い込んでいる女性は、少なくないと思います。しかし産婦人科の領域である月経トラブルや子宮・子宮頸部・卵管・卵巣や乳房などの病気は、全年代の女性に起こり得るものです。病気が潜んでいた場合、早期発見できるかどうかが、その後の治療結果を大きく左右します。気になる症状があるならどうか自分一人の中に閉じ込めてしまわず、相談してほしいのです。相談はインターネットでも受けつけていますし、抵抗があれば内診も行いません。問診など、ほかの方法でできる限りの診察をいたします。緊張されず、どうかお気軽に相談・来院ください。
自由診療費用の目安
自由診療とは人工授精/4400円~、乳がん検診(自費の場合)/1900円~