細田 光洋 院長の独自取材記事
大津宮ほそだクリニック
(大津市/近江神宮前駅)
最終更新日:2025/08/12

2025年4月にリニューアルオープンした「大津宮ほそだクリニック」。曽祖父の代から4代続くこのクリニックは、内科診療に加えて4代目医院長の専門である泌尿器科の専門性を生かし、高齢者から子どもさんの泌尿器疾患など幅広い悩みに対応する細田光洋院長。気さくで朗らかな人柄とやわらかな笑顔が印象的なドクターだ。「ひとにやさしく」を基本理念に掲げながら、一人ひとりにしっかりと向き合い丁寧に説明する診療スタイルを貫く。代々続く家業で地域医療を支え「困ったときに頼れる場所」としての役割を果たしている。リニューアルにおけるこだわりや診療にかける想いについて語ってもらった。
(取材日2025年7月14日)
内科と泌尿器科で幅広いニーズに対応
泌尿器科を専門に選ばれた理由を教えてください。

正直なところ、そこまで深く考えて選んだわけではないんですが、結果的には本当に良かったと思っています。超高齢社会において、排尿の困り事は誰もが直面する問題です。毎日何回もあることで、生活の質に直結しますからね。これまで父の時代は内科だけでしたので、おしっこの相談を受けたら泌尿器科を紹介していました。でも今は、内科の受診ついでに相談していただければ、ワンストップで対応できるようになりました。特に女性の尿失禁など、恥ずかしくて相談しにくい悩みも多いんです。「内科の診療のふりをして来たって言えばいい」って患者さんには伝えています。受付でも「診察ですね」という感じで、泌尿器科か内科かをあえて聞かないよう配慮しているんですよ。
泌尿器科診療で特に力を入れていることは?
やはり相談のハードルを下げることを最も意識しています。年を取ると誰でもおしっこの困り事は出てきますし、特に女性の尿失禁は本当に多いんです。でも恥ずかしさから我慢されている方がたくさんいらっしゃる。私は「内科にかかるふりをして相談できる」環境をつくることで、そうした方々の悩みを解決したいと考えています。排尿に関することは医師だけでなく泌尿器科看護が得意な看護師や指導を受けた看護師とともに、自己導尿管理にも力を入れています。医師看護師事務スタッフが連携して老若男女問わず相談しにくいこと、話しにくいことにも耳を傾け悩み症状に向き合っています。泌尿器科の専門家として、どんな悩みでも真摯に対応します。地域の基幹病院とも連携しがん治療の前後のフォローもしています。ただ、専門性を押し出すというよりは、困ったときに頼れる存在でありたい。それが地域のかかりつけ医としての役割だと思っています。
診療で最も大切にされていることは何ですか?

コミュニケーションですね。説明と会話です。あと触診の基本と思っている脈に触れ聴診すること。パソコンより患者さんを診る時間を大切にすることです。患者さんに薬を出すだけでなく、なぜこの薬が必要なのか、どういう効果が期待できるのかをしっかり説明します。理解して納得してもらわないと、きちんと飲んでもらえませんから。特に内科の生活習慣病といわれる管理には医師の診察、薬だけでは駄目なんです。根治というよりはうまく付き合っていく生活習慣を見直し一緒に考え治療にあたっていく。そのために診察に時間がかかることもありますが、これは譲れません。医師と患者という関係だけでなく、対等な立場でのやりとりが重要だと考えています。時には厳しいことも言います。治療の必要性を理解してもらうためには、はっきり伝えなければならないこともある。それは責任があるからこそだと思っています。
4代続く医院を継承し地域との絆を大切に
医院の歴史と継承について教えてください。

曽祖父が耳鼻咽喉科、祖父と父が内科、そして私が泌尿器科と、それぞれ専門は違いますが代々この地で診療を続けてきました。実際に曽祖父に診てもらったという方が今でもおられるんですよ。「先生で4代目だ」なんて言われることも。2014年に父の医院に入り、2018年から院長職を引き継ぎました。当初は父が診ていた患者さんは私の診察を避けていた方もおられます。「若造に任せられん!」と思われていたのでしょう。父は温厚で「よし! 診ましょう!」と患者さんにとっては頼もしい医師であったのだと思います。継承にあたっては父の理解もありこの度、築41年になる建物の老朽化もあり、2025年4月にリニューアルオープンしました。実はこの土地は天智天皇の大津宮があった史跡指定地で、建て替えには国の許可が必要であったため予定より時間がかかりましたが、無事に完成。「大津宮」という名前を冠したのも、この歴史ある土地だからこそです。
リニューアルで特にこだわった点は何ですか?
自動精算機やインターネット予約の導入は、当院を利用される方からの生の声を反映しました。建物は土足のまま入れる完全バリアフリーにしたこと、それからスタッフと患者さんの動線を完全に分離したことも大きな改善点です。これらは業務改善・効率化につながっています。また2階には「待合広場」を設けました。密を避けたい方やお子さま連れの方がゆったり過ごせる、靴を脱いでくつろげるスペースです。どなたでも上がれるようエレベーターも設置しました。将来的には骨盤底筋体操の指導や地域コミュニティーの場などにも活用できればと考えています。コロナ禍を経て、あらためて人と人のつながりの大切さを認識しています。建物は新しくなりましたが、変わらない温かさは大切にしています。
訪問診療にも注力されているそうですね。

はい。これまで通っていた方のためという気持ちが強かったです。長年診てきた患者さんが年を重ねて通院が困難になった時、「診てほしい」と依頼されることが多くなりました。そう言われると医師としてうれしくないわけではありません。診させていただくには体制づくりも重要でした。今では、看護師に訪問同行してもらい、訪問看護師さんや薬剤師の先生、各施設のスタッフさんたち、地域福祉の方、地域基幹病院とも連携しながら、在宅や施設でも安心して過ごせるようサポートしています。先代の頃から通っていたご家族が亡くなり、「次は私もお願いね」と言われたこともあります。また場合によっては泌尿器科の専門性も生かせます。病院から退院される際に尿道カテーテルをつけたまま帰宅される方もおられます。内科の先生では対応が難しいケースでも、泌尿器科医であれば管理ができる場合があります。
スタッフ一丸で支え合い、地域に寄り添う医療を継続
事務長をはじめ、スタッフとの連携について教えてください。

スタッフたちや、事務長には本当に助けられています。私は診察室に入ると目の前の患者さんしか見えなくなるタイプですが、皆がそれぞれの役割で患者さんと向き合っています。スタッフとの信頼関係、またスタッフ間の信頼関係も重要で小さなクリニックだからこそ相手を思い、いたわること、尊敬し合えることが大切だと考えます。当院で働くことにやりがいを感じでもらえるよう日々向き合っています。今はそんな患者さんにも私にも優しいスタッフに囲まれ頼れるスタッフたちのおかげで私も診療に専念できています。
今後の展望についてお聞かせください。
私はキャパシティーが大きくないので(笑)。手の届く範囲で困っている人の役に立てればいいかなと考えています。4代続いてきたこの医院を、これからも地域の方々が「何かあったら大津宮ほそだクリニック」と思ってもらえる場所として維持していきたい。今いる患者さん、これまで支えてくださった方々を大切にしたいんです。そのための勉強や日々進歩する医療と向き合いたい。人と人との付き合いを大切にした診療を続けていく。それが私たちの使命だと思っています。変わらずここにいて、必要とされる存在でありたいですね。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

何か困ったことがあったら、とりあえず相談に来てください。古き良き時代のお医者さんのように「よし、私がすべてなんとかしよう」というわけにはいきませんが、できることはしますし、私では対応が難しければ適切な専門の医療機関を紹介します。特に泌尿器科の悩みは恥ずかしがらずに相談してほしい。内科の相談のついででも、ふりでもいいんです。新しくなった建物は完全バリアフリーで、どなたでも通いやすくなりました。私たちは特別なことをしているわけではありません。ただ、この地で変わらず診療を続けて、皆さんの健康を支えていく。求められたら応えますし、離れる人は追いかけません。でも、必要としてくださる方のために、これからもここにい続けます。