中野 讓子 理事長、伊藤 雄彦 先生、伊藤 諭子 先生の独自取材記事
川越伊藤医院
(三重郡川越町/川越富洲原駅)
最終更新日:2025/04/17

川越富洲原駅から徒歩1分、2025年4月にリニューアルオープンする「川越伊藤医院」。産婦人科・小児科・内科を標榜し、1979年の開業以来地域に根差した医療を提供している。産婦人科を担当する中野讓子(まさこ)理事長、小児科医師の伊藤雄彦(かつひこ)先生、麻酔科医師で内科治療にも精通した伊藤諭子(あきこ)先生が、それぞれの専門性を生かした連携医療を行う。「当院には女性の視点で必要と思われるものをギュっと詰め込みました」と笑顔で語る中野理事長。女性の一生を通じてサポートしたいとの思いから、産後ケアと病児保育も新設。子育て期から更年期、高齢期まで家族の健康を支え、地域とのつながりを大切にしている。さらなる発展をめざして父が築いた医院を力を合わせて継承したきょうだい3人に、診療へ想いや展望を聞いた。
(取材日2025年3月14日)
産婦人科、小児科、内科が連携し、家族全員をサポート
リニューアルオープンにあたり、コンセプトをお聞かせください。

【中野理事長】親が社会から孤立した状態での「孤育て」にならないようにサポートするという、これまでの方針を大切にしつつ、より一層患者さんやご家族に寄り添う医療を提供していきたいと考えています。今回のリニューアルでは、産後ケア室、病児保育室を新設しました。婦人科部門では思春期・妊娠・産後ケア・子育て、そして更年期、老年期まで、どのライフステージでも気軽に相談していただけるようにし、女性の一生を通じてサポートできる体制を整えたいと思いました。これまでも当院では、私が診療する産婦人科と弟の小児科の2つの診療科が密接に関わることで、妊婦さんやお子さん、そしてお母さんの健康を総合的に支えたいと考えてきました。そこに新たに内科に精通した麻酔科の姉が加わったことで、診療の幅が広がり、より包括的な医療を提供できるようになったと感じています。
麻酔科の先生が加わったことで、内科のサポートも増えたとお聞きしました。
【諭子先生】私が当院で担当しているのは、一般内科の診療と、麻酔科として婦人科の処置や流産の手術をはじめとする全身管理の部分です。また、地域のかかりつけ医として発熱の外来や花粉症、風邪など、産婦人科や小児科に直接関係しない健康相談も受けつけています。さらに、小児科や産婦人科の患者さんの中には、内科的な症状を併発している方もいらっしゃいます。私自身、神奈川県の大学病院で麻酔科医師として手術時の麻酔管理や全身管理を専門としておりましたので、そういった場合、例えば「この検査が必要かどうか」「他の病院に紹介したほうがいいか」など、専門的な視点でのサポートもしています。
3人の医師が在籍していることで、どのようなメリットがあるとお考えですか?

【雄彦先生】そうですね、小児科として特に感じるのは、思春期のお子さんへの対応がスムーズであることです。小学校高学年や中高生の患者さんが抱える生理の悩みなどは、小児科では対応が難しいことがありますが、産婦人科へすぐにつなげられるのは安心材料です。また、HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン接種時のの説明やフォローも、連携によってより専門的に対応も可能です。さらに、小さなお子さんの排尿などのデリケートな症状も適切に診察・治療が可能です。加えて、当院では患者さんだけでなく、ご家族全体を診る視点も大切にしています。お子さんの診察時にお母さんの体調不良にも気づき、内科と連携して「お母さんも一緒に相談していいですよ」と伝えられる環境は、当院ならではの強みではないでしょうか。
妊娠から子育て、高齢期まで女性の一生をサポート
ご注力されている産後ケアについてお聞かせください。

【中野理事長】産後ケアは国の事業として数年前から始まっており、当院では出産後4ヵ月までのお母さんと赤ちゃんを対象に、朝から夕方くらいまでのデイケア形式で行っています。内容はお一人お一人の要望やお悩みに合わせて、授乳や沐浴の指導、助産師によるおっぱいケア、育児相談などを提供します。また、お母さんが休みたいときは赤ちゃんをお預かりし、授乳や沐浴も代行し、別室でたっぷりリフレッシュしていただける環境を整えました。加えて、当院には病児保育の他に、院内保育もあるので、別途費用はかかりますが、産後ケア時に上のお子さんも同時にお預かりすることも可能です。また、過去に当院を受診したことがない方も、授乳の悩みなどがあれば利用可能ですので気軽に相談いただきたいですね。なお、産後ケアは市町村が介入する公的な支援ですので、希望される方はまずは、市町村の窓口へお問い合わせいただければと思います。
新設された病児保育について、特徴など、詳しくお聞かせください。
【雄彦先生】当院の病児保育の特徴は、小児科の診察と保育をワンストップで提供できる点です。朝の診察でお子さんの状態を確認し、医師の判断のもと、必要であればそのままお預かりします。発熱や感染症などで登園・登校できないお子さんはもちろん、インフルエンザの回復期などにも利用可能です。保育は1歳から12歳まで対応しており、保育士や保育経験のある看護師が専門的な視点で見守りを行っています。病児保育は、働きながら子育てをする方には必要な存在だと感じています。地域のニーズに応え、皆さんを応援したいという思いから、今回新設しました。
お母さんに寄り添ったきめこまやかなサポートが印象的です。

【中野理事長】私自身、3人の子育てをしていますので、お母さんたちの負担を少しでも軽減したいと強く感じています。例えば、小児科に子どもを連れてきた際に、お母さん自身が体調を崩していることもあります。そんなとき、1つの施設で母子ともに診てもらえる環境は、大きな安心につながります。これは私が長年実現したかったことの一つなんです。さらに、女性は子育て期だけでなく、更年期や高齢期など、ライフステージごとにさまざまな悩みを抱えます。産婦人科として、どのステージにおいても適切なケアを提供し、寄り添っていきたいですね。
きょうだい3人の強い結束で、より良い医療を提供
諭子先生は大学病院から地域医療に来られましたが、いかがでしょうか?

【諭子先生】大学病院では手術中の麻酔や全身管理など、いわゆる「影の仕事」で、患者さんの命を支えていました。当院では、妹と弟が産婦人科と小児科を中心に診療を行っており、麻酔科としては「いざという時」に備えて「影に潜んでいる」イメージですね。そして、その時が来たら、これまでの経験と力を発揮し、妹たちの支えになれればと思っています。また、最近では産婦人科や小児科と直接関係がなくても、発熱の外来など「ちょっと診てもらえないか」と頼られることも増えました。これは、今までやってなかった仕事ですので、新しい発見の連続です。そして、かかりつけ医として地域の皆さんの支えになれることに、日々やりがいを感じています。
ごきょうだい3人、とても仲が良いのですね。
【中野理事長】そうですね。家族は母や姉、弟の家族、そして私の家族と、皆で12人になるのですが、プライベートでも食事や誕生日会など、しょっちゅう集まっています。実は前院長だった父が昨年、大病の末に亡くなったんです。その時も姉が遠方から実家まで頻繁に帰ってきてくれていたのですが、家族やきょうだい3人の連携は本当にありがたかったですね。父の病状説明や仕事のことなど、情報を共有しながら対応することができました。今回のリニューアルオープンも、私が産後ケアを、弟が病児保育を始めたいという思いを持っていて、それに外の世界を知っている姉が助言をくれたことで、理想を形にすることができました。
今後のご展望をお願いします。

【中野理事長】建物は新しくなりましたが、45年間、父や母が一生懸命に築いてきた患者さんファーストという理念は、大切に継承したいと思っています。そして、今の時代に合った女性や子どもが安心して過ごせる医療の形を、これからも積極的に提案していきたいです。全身管理に長けた人、小児科や産婦人科に精通した人、成人の診療にも対応できる人など、それぞれの得意分野を生かしながらチームで支え合うことで、より良い医療を提供できると信じています。家族で力を合わせ、この医院をさらに温かく、信頼される場所にしていきたいです。