小児期の治療開始がQOL向上の鍵
アレルギーの舌下免疫療法
松岡こどもクリニック
(桑名市/西別所駅)
最終更新日:2025/07/08


- 保険診療
日本国民の3人に1人が何らかのアレルギーを持つともいわれ、近年は低年齢での発症も増加。特にダニアレルギーは0歳で発症することもあるという。こうしたアレルギーに対し、近年注目を集めているのが「舌下免疫療法」である。舌下免疫療法は、微量なアレルゲンを継続的に体内へ取り込むことにより、アレルギー症状を緩和させることが期待できる治療。5歳以上が治療の対象となり、小児期からの早期治療に関心が高まっている。「小児のアレルギー疾患は早期に診断し、治療を開始することで、成長後の多岐にわたるアレルギー疾患の発症予防につながります」と話すのは、三重県桑名市にある「松岡こどもクリニック」の松岡文弥院長。今回は日本小児科学会小児科専門医である松岡院長に、舌下免疫療法の流れや注意点について詳しく聞いた。
(取材日2025年5月31日)
目次
検診・治療前の素朴な疑問を聞きました!
- Q舌下免疫療法とはどのような治療でしょうか?
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A
舌下免疫療法は、アレルギー治療の選択肢の一つで、スギ花粉とダニそれぞれのアレルゲンに対応する薬剤があります。舌の下に溶ける錠剤を置き、毎日アレルゲンを少しずつ体に取り込むことで、体を慣れさせていきます。治療は3~5年ほど続ける必要がありますが、治療終了後も5~10年ほどアレルギー症状が出にくくなるように働きかけることができるといわれています。早い子では5歳くらいから始められるので、受験のときにアレルギー症状で悩まないようにと考えて、小児期から治療を検討される方も少なくありません。お子さんと一緒に親御さんも受けたいと希望されるケースも割と多いんですよ。
- Qどのようなタイミングで治療を検討すれば良いのでしょうか?
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A
毎年スギ花粉症の症状が出ているお子さんであれば、治療に適した年齢になったタイミングでこちらからご案内します。近年、低年齢で花粉症を発症する子も増えており、ホームページを見て来院される方もいます。スギ花粉は2~4月に症状が出るため気づきやすいですが、ダニは年中いるため見過ごされがちですし、0歳など乳幼児でも発症することがあるので注意が必要です。梅雨時期や冬物の布団を出したタイミングなどで目のかゆみ・鼻水などのアレルギー症状や咳が出現・悪化する場合は、ダニアレルギーの可能性があります。いずれも症状が強く、アレルギーの薬を飲んでも日常生活に支障があるような状態であれば治療を検討されると良いでしょう。
- Q治療を受ける際に注意するべきことはありますか?
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A
皆さまやはり心配されるのは副作用についてですね。アレルゲンを体に取り入れる治療なので、まったくないわけではありません。喉がイガイガする、耳の奥がかゆい、口内炎ができるといった副作用が出ることがありますが強いアレルギー症状といわれるアナフィラキシーはほとんど出ません。服用を続けると体が慣れてきてその反応も次第になくなっていきます。また運動や入浴など、血液の循環が良くなる前後の服用は副作用の増悪につながりますので避けてください。他にも服用後5分間は飲食を控える、最初は1週間後に通院してもらう必要がある、スギ花粉の治療を行う場合はスギ花粉の飛散時期を避けて治療を行うなど、細かな注意事項もあります。
検診・治療START!ステップで紹介します
- 1医師による問診・診察
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医師による問診・診察で、具体的にどのようなアレルギー症状が出ているのかを確認する。家族にアレルギー体質の人がいる場合や、本人にアトピー性皮膚炎、喘息、食物アレルギーなどの既往があるかも丁寧に問われる。
- 2アレルギー検査
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診察の結果、アレルギーが疑われた場合は、血液検査でスギ花粉やダニのアレルギーであるかを調べる。ペットの毛やカビなど、アレルギーの検査項目は多岐にわたるため、生活背景に合わせて、検査項目を絞り込んでいるそう。検査でスギ花粉やダニに対するアレルギー反応が確認された場合、舌下免疫療法が適応となる。副作用や通院頻度に関する注意点を記載した同意書に沿って詳しく説明を受けた後署名を行うことが必要となる。
- 3医師のもとで薬を服用して治療開始
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医師の指導のもと、錠剤を舌の下に置き、1分ほど待ってから唾液と一緒に飲み込む。低年齢の患者の場合は、1分間唾液を飲み込まずに我慢するのが難しいため事前にラムネなどで練習を行うこともあるそうだ。保護者も投薬方法を一緒に指導を受け、診察室で実際に服用することで治療を開始する。薬の飲み忘れ防止のため、また低年齢の子どもの場合、一人で薬を舌の下に置くことも難しいため、保護者の協力は必須だ。
- 4副作用の観察
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舌下免疫療法を初めて行う際は、副作用が出ることがあるため、服用後は待合室で30分間静かに過ごし、体調の変化がないかを観察。口の中の違和感や耳の奥のかゆみが見られることがあり、まれに口内炎やじんましんが出る可能性もあるが、重篤な例はほとんどないという。同院では、体調に異変があればすぐにスタッフへ声をかけるよう患者へ伝えているそう。30分後、再度診察を行い、副作用の有無を確認する。
- 5毎日の服薬と定期的な通院
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治療は1日1回の服薬を毎日継続することが基本。治療を開始した際は、1週間後に受診し、副作用の様子をチェック。薬を増量する際も、初回同様に院内で30分の経過観察を行う。副作用が出た場合も、アレルギー薬を併用することで多くは継続可能である。副作用が落ち着いている患者は、月に1回の通院となる。服薬の間隔が空くと成果を十分に得ることが期待できないため、同院では継続の重要性について繰り返し説明しているそう。