渡辺 真也 院長の独自取材記事
渡辺医院
(四日市市/富田駅)
最終更新日:2025/05/28

JR関西本線・富田駅より車で10分。潮の香りただよう住宅街に立つ「渡辺医院」は、約90年の歴史があるクリニックだ。祖父、父から受け継いだ3代目の渡辺真也院長は、消化器内科を専門としながら内科全般の診療に携わり、幅広い世代の患者の健康を支えている。さまざまな世代の患者が通う院内には、キッズスペースや授乳室も設置。また、駐車場の一角には発熱患者用の待合室を設け、一般患者と完全に動線を分けている。「何かあった時の相談相手になるかかりつけの役目」を診療のモットーとし、患者の家族構成や生活背景にまで配慮した丁寧な対応に努めている。病気を未然に防ぐための予防的観点を重視し、胃・大腸内視鏡検査や各種ワクチン接種、フレイル対策にも注力している。渡辺院長は、穏やかな口調でさまざまな質問に答えてくれた。
(取材日2025年4月24日)
地域に根づき幅広い世代の健康を支えるクリニック
長い歴史のあるクリニックだと伺いました。

祖父が開業したのが約90年前で、私は3代目になります。もともとは今の駐車場スペースになっている場所にありましたが、父の代になった後、2009年に今の場所に移転しました。以前、この建物は銀行だったんです。銀行が撤退するので空いた建物を利用し、リニューアルしました。エントランス部分など外観が特徴的なのと、待合室や診察室が広々と十分なスペースが確保できているのはそのためです。私が当院で診療を始めたのも移転した時期で、初めは父を手伝いながら慣れていきました。
先生が院長に就任された経緯を教えてください。
最初は、名古屋市の藤田医科大学ばんたね病院の消化器内科で勤務していました。2001年に市立四日市病院に移り、その後は藤田医科大学に戻って消化器内科の講師をしていました。こちらに入るきっかけは父が年を取ってきたのもあり、そろそろ手伝ってほしいという依頼があったからです。それから1年後に父が病気で倒れ、復帰はしたのですが、そのタイミングでほとんどのことを私が任されるようになりました。
前院長のご専門は循環器内科ですが、先生が消化器内科を選んだ理由は何でしょうか?

学生の時は、父と同じ循環器内科に行こうと思っていましたが、1期上の先輩の循環器内科の希望者数がとても多かったんですね。どうしようかなと迷っていましたら、藤田医科大学ばんたね病院の消化器内科の先生から「うちは内科全般のことをやるから将来役に立つよ。こっちに来たら」と、声をかけられて。そこには同期も4人いて、一からしっかり教えてもらいました。消化器内科に携わる間にだんだんと興味が湧いてきて面白いと感じるようにもなり、今となっては消化器内科を選択して本当に良かったと思っています。
内視鏡検査に注力し、早期発見で患者の負担を軽減する
病院とクリニックの診療では、どんなところが違いますか?

開業前は病院に勤務していた頃にできなかったことをしたいと考えていました。病院の外来は週1、2回なので、今のように「調子が悪いままだったら明日も来られますか?」ということは、患者さんになかなか言いづらい状況でした。検査もたいへん多く請け負っていましたから、流れ作業のようになる可能性も出てきます。今は自分で診察しておかしいと思ったら検査して、その後はきちんと説明して治療に入っていくという流れなので、丁寧に向き合っていけるところにやりがいを見つけています。また、患者さんだけでなくご家族の方とも話し合いをしながら、ご家族がどうサポートしていかれるのかなども併せて診ていかないといけません。クリニックは何かあった時の相談相手になるかかりつけ医としての役目が大きいと感じています。
診療において大切にされていることは何ですか?
できるだけ不安がないように検査することを心がけています。当院では胃や大腸の内視鏡検査に力を入れていますが、内視鏡検査は、患者さんにとってどうしても恐怖心があるものだと思います。緊張されている方には「深呼吸しましょう」と声かけをしたり、癒やしの音楽をかけたりして、痛みや苦しさをできるだけ軽減するためにさまざまな工夫をしています。病院のように何人も続けて検査するということはなく、1日に数人のみ行っています。また、大腸の場合は麻酔を少し使いますが、胃の場合は経鼻内視鏡を用いることで患者さんの負担に配慮しています。また、希望に応じて麻酔科で経口の内視鏡も行っています。検査後はモニターを使って、実際にご自分の体の中を見ていただき、患者さんの目の前できちんと説明をさせていただくことも大切にしています。
内視鏡検査に注力されているのですね。

私は予防的観点を重視しているため、早期発見・早期治療につながる胃と大腸の内視鏡検査に注力しています。胃がん検診も発達してきていますし、早期発見することで治療における患者さんの体の負担も軽減されることが大きなメリットです。そのため、内視鏡は先進のものを導入しています。以前のものと比べると画質が良くなったため、小さながんを発見することが増えました。大腸内視鏡は拡大内視鏡なので、顕微鏡のように拡大して組織のほうまで見ることができます。小さなポリープなら、検査をしながら切り取ることも可能です。ポリープも小さいうちに切り取ったほうが体の負担が少ないため、検査をしながら治療を行えるのは患者さんにとってもメリットといえます。
予防の観点からワクチン接種とフレイル対策にも注力
どんな患者さんが多く来院されていますか?

患者さんの年齢層は、お子さんからご高齢の方まで、本当に幅広いです。親子で体調を崩してご家族で通院されるケースもあれば、ひ孫さんを含めたご家族4世代でワクチン接種のために来られることもあります。この地域では、おじいさんおばあさんがお孫さんを連れて来院される光景もよく見られます。先代の頃からそのような地域に根差した関わりが続いているため、小さい頃からずっと診させていただいている患者さんも多いです。また、インフルエンザや帯状疱疹、子宮頸がんなどの各種ワクチン接種にも対応しており、予防目的の方も日常的に来院されています。また、妹が小児科の医師をしており、月に1回、当院でのワクチン接種をはじめとしたサポートにも加わってくれています。
発熱の患者さんとその他の患者さんの動線を完全に分けたそうですね。
熱のある方や感染症が疑われる方には、別室、または駐車場の一角に設置した発熱の外来用の専用待合室をご案内しています。待合室にはベッド1床と椅子があり、点滴などの処置にも対応可能です。院内に入っていただく場合も、感染が疑われる方は受付から分かれています。熱がなくても感染が疑われる方が多数いらっしゃるため、完全に分けて対応できるように院内動線も変更しました。当院には、生活習慣病などで定期的に通院されている患者さんもいらっしゃいますので、感染症の疑いがある方との接触を避けるための環境整備に努めています。また、発熱者用の待合室は、車いすのまま入ることが可能な設計となっており、どなたにも安心してご利用いただけるよう配慮しています。
最後に、読者へメッセージをお願いします。

当院は、検診やワクチン接種など、予防に重点を置いています。「どのワクチンを接種すべきかわからない」という親御さんや、「検診の種類が多くどれを受けたら良いのかわからない」という方も多いでしょう。病気に関するご相談はもちろん、予防に関することでも気軽にご相談いただければと思います。最近では、健康寿命を延ばす観点にも着目し、フレイルを予防するために、運動だけでなく家族以外とお話しする機会を持つなど、日常生活の中でできる工夫もアドバイスしています。生活の困り事や健康相談など、些細なことでも構いません。かかりつけ医として、皆さんのお役に立てたらうれしく思います。