田中 公子 院長の独自取材記事
南浜田クリニック
(四日市市/近鉄四日市駅)
最終更新日:2025/06/04

近鉄四日市駅より徒歩約8分、大きな看板が目を引く「医療法人児玉会 南浜田クリニック」。院長の田中公子先生は、父親が高齢のため閉院した「児玉小児科」を建て替え、「南浜田クリニック」として新たにスタートを切り、地域医療に携わってきた。内科・小児科・消化器内科・アレルギー科と広く診療を行う。近隣には小児科の医師が少ないため、乳幼児健診や学校医など地域に根差した活動も多く、日々多忙を極めると推察するが、スタッフと連携しながら一人ひとりの患者と向き合っている。気さくで朗らかな印象の田中院長に、診療のモットー、医師をめざした思い、スタッフとの連携などを聞いた。
(取材日2025年4月10日)
実家の小児科を継ぎ、かかりつけ医として幅広く診療
先代の院長の思いを受け継いだクリニックだと伺いました。経緯をお聞かせください。

父はこの地で「児玉小児科」を開院していました。子どもがたくさん来院して、時折泣き声が響き渡るような、とてもにぎやかなクリニックでしたね。それを見て育った私は、実は小児科にいい印象を持っていなかったんです。でも、周りの期待や父の勧めがあり、医学部に進んで小児科の道に進みました。大学卒業後は小児科に入局し7年勤務し、未熟児の赤ちゃんも診ていました。そのような小さな子が育っていく姿を目の当たりにすると「生命ってすごいな」と実感し、小児科を選んで良かったと心から思っています。結婚後は夫が院長を務める津市の個人病院で内科も診療し、また胃腸の検診技術も勉強しました。かかりつけ医としてベースになる経験を積み、父が高齢になって閉院するタイミングで、今のクリニックに建て替えました。父とは5年ほど一緒に診察していたのですが、引退後86歳で亡くなり、以後私が診察させてもらっています。
内科・小児科・消化器内科・アレルギー科を標榜されていますが、どのような患者さんが来院されますか?
患者さんの大半は近所のファミリーの方々で、大人が7割、お子さんが3割といったところでしょうか。ここ南浜田地域は高齢の方が多いですが、転勤されて住むケースも多く、若い世代も多いですよ。50代以降の患者さんは、高血圧症・脂質異常症・糖尿病など生活習慣病の治療が多いです。当院では胃の内視鏡検査などの設備があるため、四日市市のがん検診で胃の検査を希望する人もいらっしゃいます。お子さんに関していえば、風邪症状や便秘などの消化器症状で来院されることがほとんどです。アレルギー検査を希望される方もいらっしゃいます。
設備面でこだわったことは?

清潔な空間を保つため、院内では靴を履き替えていただいています。バリアフリー設計で、車いすやベビーカーでの利用も可能です。待合室にはベビーベッドを2台設置し、キッズスペースも設けています。キャラクターのぬいぐるみや絵本で遊びながら、待ち時間も家にいるような感じで過ごしてもらいたいですね。感染症予防の観点から、2021年に発熱がある方専用の診察室を増設しました。発熱のある患者さんとそうではない患者さんがお互い気を使わず診察を受けられるように、完全に空間を分け、診察時間も分けています。発熱がある患者さんを診察する際は、防護服とフェイスシールドを装着して対応しています。
スタッフとの連携を大切にして院外でも活動
日々の診療の様子を教えてください。

朝8時にクリニックの入り口を開けますので、患者さんが先に診察券を置きに来られます。9時から順番に診療を始めますが、胃の内視鏡検査、胃のバリウム検査、腹部エコーの検査は8時30分からです。急を要する症状の患者さんは優先することもあります。予約制にできないのは、お子さんの場合はほとんどが風邪症状なので診察時間は短いですが、大人の場合は問診や検査結果の説明などがあるので、診療時間が長くなりがちです。そんな事情で、診療時間を人数で見込むことができなくて、順次診察というスタイルにしています。できるだけスムーズな診療を心がけています。スタッフの手が空いていない時は、私が患者さんの手を引いたり、赤ちゃんを抱っこしたりなどできる限りの対応をしています。おせっかいな先生だと思われているかもしれませんね(笑)。
スタッフさんと先生の風通しが良く、連携がしっかりしているように見えます。
開院当初から長く働いてくれているスタッフもいるので、あうんの呼吸で連携できていると思います。受付は3人、看護師は3人、看護助手さんは1人で、それぞれの役割を担ってくれています。私がお願いしたことは、さっと動いてすぐに対応してくれますし、お願いする前に「やっておきましたよ」ということもあるぐらいです。私が診療に専念できるように先回りして動いてくれるので、非常に助かっています。よく気がつくスタッフばかりで、患者さんに対してこまやかな配慮をしてくれるので、安心して任せています。患者さんからの信頼も厚いと思いますよ。
院外でもご活躍されているとか。

小学校・中学校の校医、そして保育園の嘱託医等も受け持っており、四日市市が行っている年6回くらいの乳幼児健診も行っております。四日市市には小児科の医師が少なく、これらの仕事を地域の小児科医師全員で手分けして行っています。診療がある日はクリニックの昼休憩の時間を活用して、院外の仕事をこなしています。これができるのも、スタッフのおかげですね。私自身は昼食が十分に取れない日もありますが、体が動く限りは、地域の皆さまのために貢献したいという気持ちです。休日には、応急診療所に出向くこともあります。小児科の医師の負担は大きいという現状もありますね。
丁寧な診療で、患者の小さな変化も見逃さない
医師をめざされたのはどのような経緯ですか。また、小児科を選ばれた理由も聞かせてください。

私には兄がいましたが、中学3年生の時に亡くなりました。当時、私は小学校5年生でとても悲しい思いをしましたが、父は小児科の医師だったので、ことさらつらかっただろうと思います。技術が今のように進んでいたら命を落とさずに済んだかもしれません。それまでは小学校の先生になりたいという夢がありましたが、兄が亡くなって、親戚中から父の後取りとして期待されることになりました。それで、傷心の父を力づけるためにも医師になろうと決意したんです。常々、父が「子どもはいいよ」と小児科への道を勧めてくれたので、小児科を選びました。
診療のモットーは何でしょうか?
診療面でいえば、患者さんの体全体を診ることです。小児科の出身なので、お子さんはアレルギー疾患を含めて、体全体を診ます。大人の患者さんの場合も、内科的な症状だけではなく、腰や膝が痛い、巻き爪が痛いといった訴えにも対応しています。触診してお話を伺うことで、内科的な要因が見つかることもありますからね。また、病気を早期に見つけるために、患者さんの小さな変化を見逃さないように観察しています。血液データなどはもちろんですが、患者さんの顔色、体型の変化のチェックも欠かしません。接遇面でいえば、常に患者さんと目を合わせることを心がけています。小さなお子さんであれば、一緒の目線になるようにかがんで診察をします。もう一つは、丁寧な説明です。口頭での説明ではわかりにくそうであれば、紙に書いて説明することもあります。患者さん一人ひとりに合わせた対応を心がけています。
最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

これからも地域の患者さんに良い診療を提供していきたいと思っています。私が考える良い診療とは、患者さんの体全体を診ることです。専門は内科や小児科ですが、腰が痛いという整形外科分野の症状など、どんなことでも遠慮なく聞いてください。専門分野外でもある程度の見立てができますし、大きな病院が必要だと判断したら、専門の先生をご紹介します。また、子育てで心配なことがあれば気軽に相談してほしいですね。例えば、小さなお子さんでよくある相談が、便秘です。月齢にもよりますが、食事を気をつけることで改善を図れることもありますので、お子さんの成長や状態に合わせてアドバイスします。今はインターネット上にはさまざまな情報がありますが、だからこそ迷うこともあるのではないでしょうか。医師の立場としての情報も、ぜひ参考になさってください。