「正しく恐れる」ことが大切
加齢黄斑変性と緑内障
東海眼科
(津市/津駅)
最終更新日:2021/10/12


- 保険診療
「加齢黄斑変性」「緑内障」ともに初期の段階では気づきにくく、見え方に異常を感じた時には進行がかなり進んでいることもあるやっかいな疾患とされる。治療で元の状態に戻ることはなく、最終的には重度の視力低下を伴うこともある疾患である。しかし、「生涯付き合っていかなければならない疾患ですが、検査によって早期発見・早期治療につながれば、病状の進行を緩やかにしていくことも可能です」と「東海眼科」の中井義典院長。先進の検査設備を配し、抗VEGF薬注射やレーザー治療に手術、多岐にわたる点眼薬処方など患者一人ひとりに合わせた「オーダーメイド」の治療を心がける中井院長に2つの疾患の概要や治療法、定期的な検査の重要性について話を聞いた。
(取材日2020年12月09日)
目次
加齢黄斑変性、緑内障のことをよく知り、早期発見・早期治療で進行を抑えていくことをめざす
- Q加齢黄斑変性とは、どんな病気ですか?
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A
▲丁寧に説明することを心がけている
人間の目をカメラに例えると、フィルムにあたる部位になる網膜の中心部分、急所にあたるのが黄斑です。この黄斑が加齢にともない、異常を来した状態を加齢黄斑変性といいます。加齢黄斑変性には日本人に多い滲出型と萎縮型があります。滲出型は、ものを見るための重要な視細胞が層を成している黄斑に、本来では存在しない新生血管と呼ばれる異常な血管が生じ、このもろい血管からしみ出した血液などで視細胞が障害されることから、見え方に異常を来すものです。萎縮型は徐々に網膜の組織が萎縮していくことでだんだんと視力に障害を来すものですが、両型とも疾患発生のはっきりとした原因はいまだによくわかっていません。
- Q緑内障とは、どんな病気ですか?
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A
▲各種検査機器を取りそろえている
目の中は房水という水で満たされており、房水を作り排出することによって一定の眼圧を保っています。緑内障は何らかの原因で眼圧が高くなり、それが視神経を障害することで起こります。徐々に視野が欠けていき、こちらも進行すると失明に至る可能性があります。しかし、この病気が怖いのはかなり進行しないと自覚症状がないことです。緑内障は視野の端から欠け始め、徐々に中心へ至りますので、初期の段階では見え方の異常に気づきにくいのです。また緑内障は眼圧が高いものと思われていますが、日本人では多くが正常眼圧で緑内障を生じます。適切な眼圧は、治療前の眼圧や年齢、緑内障の進行度によって患者さんごとに決められます。
- Q受診するきっかけやタイミングを教えてください。
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A
▲検査受診による早期発見・早期治療が重要
加齢黄斑変性、緑内障とも痛みなどがほぼなく、物がゆがんで見える、ぼやけるなどの症状も初期には気づきにくい。では、どうしたらよいか。皆さんは、年に1回の市民健診や会社の健診を受けていると思います。眼底検査がオプションである場合は必ず受けてください。眼底写真で疑いがあるかどうかがわかります。健診結果に「視神経乳頭陥凹拡大」と記載されていたら緑内障の疑いがあるかもしれないため、速やかに眼科を受診しましょう。加齢黄斑変性の場合は、最初は格子状のものが縦横平行に見えないことで気づく患者さんが多いです。緑内障は40歳、加齢黄斑変性は65歳くらいから増えてきます。いずれも早期発見・治療が大原則です。
- Qそれぞれの検査・治療についても教えてください。
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A
▲注射や複数の点眼などを中心に治療を行う
当院では先進のOCTアンギオグラフィー(光干渉断層血管撮影)という検査を導入しています。従来の造影検査に近い観察ができますが、造影剤を使用しないため、身体的負担の軽減に加え時間短縮にもなります。加齢黄斑変性の治療は注射が主です。新生血管が成長するために必要な血管内皮細胞を抑える目的の抗VEGF薬を注射する方法です。レーザーで正常細胞を維持しながら新生血管の部分だけを焼くことを図る、PDTという方法を併用する場合もあります。緑内障は眼圧を下げることを治療の基本に据えます。複数の点眼薬を使用し、状態によっては房水を眼球から外に逃がすための手術もします。
- Qなぜ、治療後も継続的に通院が必要になるのでしょう。
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A
▲治療において定期的な経過観察で進行を抑制することが大切
両者とも、治療すれば元の正常な状態に戻せるといった疾患ではありません。進行を遅らせる目的の治療しかできないので、経過観察が重要なのです。しかし、加齢黄斑変性は私が医学生の頃には発見されてもお手上げでしたが、今は対処法があります。緑内障も1日3回数種類の点眼が必要だったものが、種類や回数を減らすことや、より一人ひとりに合わせた点眼薬が処方できるようになってきました。加齢黄斑変性は、まず3ヵ月連続で月に1回、抗VEGF薬注射をしますが、その後は間隔を空けて注射を打つのか、観察を続け悪くなったときだけ注射するのか、患者さんと相談しつつ決めていきます。そういった意味でも継続的な通院が重要なのです。