深谷 良 副院長の独自取材記事
深谷胃腸科外科
(豊明市/豊明駅)
最終更新日:2025/07/15

名古屋市と刈谷市の中間に位置する豊明市。近くに水田が広がるのどかな地域に「深谷胃腸科外科」は建つ。3階建てで、地域の健康を見守り支えてきた同院は、2026年で40周年を迎える。「困ったら深谷さん」と家族で通う地元住民は少なくないという。開設者の深谷良孝院長は消化器外科が専門で、長男の深谷良副院長も同じ道に進んだ。病院勤務を経て、専門分野だけではなく内科一般から皮膚科、整形外科、泌尿器科領域まで幅広く学び、かかりつけ医として、少しでも患者の悩みを解決したいと診療に臨む。「患者さんの笑顔がうれしく、支えになっています」と話す深谷副院長。対話を大切にする、その心と視線はいつも患者に向けられている。
(取材日2025年6月18日)
かかりつけ医として約40年、幅広く診療
こちらは3階建ての大きなクリニックですね。

当院は1986年に父、深谷良孝院長が開業しました。17年ほど前まで胃や大腸、胆のう、膵臓、乳がんの手術をしていましたので、2階は手術室と20床の入院室があり、3階は、父が入院患者さんのところにすぐ駆けつけられるよう、一時期、家族の住居となっていました。現在、入院室の一部は、大腸内視鏡検査を受ける方のための前処置室4室とマンモグラフィの検査室、その控室と更衣室となっています。それぞれの検査を受ける患者さんには、受付後、階段を上がって2階で落ち着いて過ごしていただけると思います。大腸検査の前処置室4室の個室のうち3室はトイレつきで、1室は部屋を出てすぐにトイレがあります。また1階はもともと男女共用トイレが1つだけでしたが、現在は女性専用のトイレもあります。
2026年に開業40周年を迎えられるそうですね。
私の家は祖父の代までは農家をしていて、この場所もかつては水田でした。父は、農業はしたくないということで医師になったと聞いています。「昔ながらのお医者さん」で周囲を引っ張っていくタイプ。今の時代の、患者さんによく説明し相談して一緒に治療を進めていくというスタイルとは少し違うかもしれませんが、患者さんからは「何でも相談できる頼れるお医者さん」ということで長年慕われてきたと感じます。「困ったら深谷さん」と言ってくださる患者さんもあり、今の当院があるのも父と患者さんの信頼関係があってこそ。40周年に向けてこれからはそのつながりを私が引き継いでいきたいと思っています。
先生が医師をめざされたのはお父さまの影響なのでしょうか?

そうですね。父が開業したのは私が小学5年生の時で、当時の文集に「医者になる」と書いていたように思います。父と同じ消化器外科を専門に選び、大学卒業後は名古屋掖済会病院で多くの手術に携わっていました。しかし当院に戻ることを考えると、内視鏡検査や内科の診察もしっかりできるようになりたく、医局の人事の節目に合わせて、三重県津市の遠山病院に勤務しました。そこで7年間ほど、手術に加えて内視鏡検査の経験も積み、私の子どもの小学校入学に合わせて2011年に当院に着任した次第です。当時は実質父が1人で当院を切り盛りしており心配でもありましたので良いタイミングでした。
外科手術の経験を今の診療に生かす
病院勤務時代は数多くの手術に携わられていたのですね。

名古屋掖済会病院では、胃がんや大腸がん、内痔核、痔ろう、乳がんなどの手術に携わりました。膵臓の手術ですと6時間ぐらいかかることも。集中力も必要ですし腹腔鏡もない時代でずっとおなかを開けて引っ張っているのが大変で、上司だった先生に、自分に外科は無理ではないかと弱音を吐いたことがあります。しかし先生は「数年の経験では当然のこと」と励ましてくださいました。4年ほどして内科の勉強もするために遠山病院に勤務するわけですが、そこではさらに食道や甲状腺の手術もし、内視鏡検査も経験を積みました。膵臓の難しい手術も主治医として携われるようになりました。遠山病院の当時の理事長先生は父の同級生で、当時は夜まで内視鏡検査をしたり、私が当直の時に緊急手術が入って電話をするとすぐ来てくださったりとパワフルで頼もしい方。多くのことを学ばせていただきました。
そうしたご経験は今の診療に役立っているのでしょうか?
非常に役立っています。例えば、患者さんで昔おなかの手術をされた方であれば、残っている傷を見ただけで何の手術をしたかわかりますし、胃を全摘された方は今おなかの中はこういう状態だろうと手に取るようにわかります。「ここが痛い」と言われれば、どの臓器かも予想がつきます。手術のこともわかるので、例えば人工肛門になる場合の手順や、状況が改善すれば腸をつなぎ直すこともできることなど、具体的にお話しすることができます。経験を生かし、がんの早期発見や、診断後の治療、患者さんの生活の質の維持にも努めていきたいと思っています。
患者さんはどのような方々が来られていますか?

市内の方を中心に、刈谷市、大府市、東郷町などからも来ていただいています。近隣の方ですと私を小さい頃からご存じの方もいて、「良くん」と呼ばれることもありますね(笑)。主訴は消化器内科の病気はもちろん、高血圧、高脂血症、糖尿病といった生活習慣病、皮膚のお悩みや、膝や腰の痛みなどさまざまです。私がここへ戻ってきた当初は、正直その幅広さに戸惑いもありました。しかし、父がかかりつけ医としてどんなことでもまず受け入れて診療してきたという実績がありますので、私も多領域にわたって勉強し、来ていただいたからには少しでもお悩みを解消して差し上げたいという気持ちで診療するようになりました。もちろん専門の診療が必要と診断した場合は病院へ紹介します。特に近くにあり母校でもある藤田医科大学病院とは、普段から会合に参加するなど強い連携体制にあります。
患者の笑顔や言葉が喜びであり心の支え
診療の際、心がけていることはありますか?

患者さんのお話に耳を傾け、お困り事をきちんと聞き出すように心がけています。原因をはっきりさせて治療につなぐことが一番大事ですが、「腰が痛い」「膝が痛い」というのを完璧に治すことはなかなか難しいです。少しでも痛みを解消できて「良くなりました」と笑顔になってもらえるとうれしいですね。当院の建物が大きいせいか、友人から「敷居が高い」と言われたことがあるのですが、まず何でもお悩みを受け止めるのがかかりつけ医の役割ですのでお気軽に来ていただければと思います。ただ、お話を聞いているとどうしても診療時間が長くなってしまうことがあり、お話も聞きたい、待ち時間も短くしたい、というのが悩ましいところです。忙しい中でもスタッフは患者さんにこまやかな気配りを忘れず、とても助かっていますね。
他にも気をつけていることがあれば教えてください。
当院では内視鏡検査にも対応しています。がんを早く見つけられるかどうかは予後に関わりますので、内視鏡検査では隅々までしっかり観察するように気をつけています。もし見逃してしまって「何もないです」と伝えたら、患者さんは安心してもしかしたらその後数年間、内視鏡検査を受けないかもしれません。そうすると、その間にがんは進行してしまいます。検査は一回一回に責任感と緊張感を持って取り組むとともに、何回でも受けていただけるよう、できるだけ苦痛の少ないように努めています。
今後についてのお考えをお聞かせください。

病院勤務から当院に戻ってきた当初は皮膚や整形外科領域の診療経験が少なかったのですが、今では専門の医療機関につなぐ前段階まで診ることができるようになり、患者さん方に育てていただいたと思っています。今後も患者さんの話をよく聞いて、病気のサインを見落とさないようにしていきたいです。スタッフの勤務体制を考えると難しいのですが、できるだけ休診日は増やさず、患者さんに「明日も来てね」「いつでもいますよ」と言って安心していただけるクリニックでありたいですね。それは使命感とか自己犠牲というのとも少し違う気がします。父も遠山病院の元理事長先生もそうなのかもしれませんが、どんなに忙しくても、それ以上にこの仕事が好きだから。患者さんの笑顔や「ありがとう」の言葉がうれしく、それが支えになっているからです。だから今までもこれからも、続けていけるのだと思います。