松井 彰 院長の独自取材記事
松井医院
(知立市/知立駅)
最終更新日:2025/11/10
知立駅から徒歩5分、約120年続く「松井医院」を2025年7月に継承した松井彰院長。刈谷豊田総合病院での救急医療経験、名古屋大学大学院や国立がん研究センター東病院での肺がん研究など、豊富な経験を積んできた呼吸器内科の専門家だ。「困っている人のためになりたい」という思いで医師となり、研鑽を積んできた松井院長。その一方、学生時代から続けるギターは「プロに負けない気持ちでやっています」と笑う意外な一面も。「必ず目を見て診察する」という丁寧な診療姿勢と、「断らない医療」を掲げる包容力で、地域住民の健康を支えている。アレルギーの迅速検査を提供する他、外来での肺がん治療などの専門性の高い医療を地域で提供する松井院長に、診療にかける情熱を聞いた。
(取材日2025年9月25日)
培った高い専門性。育ててもらった地域に還元したい
約120年の歴史があるクリニックを継承されたきっかけを教えてください。

私は肺がんを専門に診療してきましたが、がんというのは今や2人に1人がなる身近な疾患で、命にも関わります。自分の専門的にやってきた分野と、育ててもらった知立市のために何ができるかと考えた時に、皆さんの健康維持はもちろん、悪性疾患を早期に発見して健康寿命の延伸を図りたいと思ったんです。父親は消化器内科、私は呼吸器内科専門ですが、同じ内科医として、代々続いてきたこの医院を受け継ぐ決心をしました。患者さんも2代、3代と続けて受診してくださる方が多く、その思いにしっかり応えたいと思ったんです。私は5歳から知立で育ち、ここでは小さい頃からいろいろな経験をさせてもらいました。そのため思い入れは深く、恩返ししたいという気持ちも強くありましたね。人生をかけて、地域の皆さんの心と体の健康に携われればと思っています。
医師を志したきっかけや、呼吸器内科を選ばれた理由を教えてください。
困っている人のためになりたくて、そういう仕事は何だろうと考えたときに、人の命を救える医者になろうと思ったことがきっかけです。家系的な影響も少なからずありましたが、それだけではありません。刈谷豊田総合病院での研修医時代、救急の外来で秒単位で具合が悪くなっていく患者さんを前に、体が条件反射的に動くようになるほどさまざまな経験をさせてもらったことで、内科医になりたいという気持ちが確固たるものとなりました。内科の薬による治療への強い関心もありましたね。その中でも呼吸器内科を選んだのは、命に関わり、治療が日進月歩のがん診療が自分のビジョンに一番即していると感じたからです。呼吸器内科は感染症、アレルギー、悪性腫瘍と領域が複数ありますが、悪性腫瘍というところはぶれずにやってきました。患者さんを救いたいという思いが、今の診療の原動力になっています。
これまでどんな経験を積まれてきたのでしょうか?

医師免許を取得後、刈谷豊田総合病院で初期研修を受けました。本当に忙しい日々でしたが、救急疾患を幅広く経験できました。その後、名古屋大学大学院のがん研究グループに入ったことで、基礎研究と臨床の間をつなぐトランスレーショナルな研究領域に興味を持ち、国立がん研究センター東病院でバイオマーカーの研究に従事しました。抗がん剤の効き目の指標になるような、まだわかっていない領域の研究です。そこでは「適切な治療を最速最短で患者さんに届ける」という理念を学び、がんの診断時間を短縮する工夫も経験しました。実は学生時代はギターに熱中していて、今でもプロに負けない気持ちでやっているのですが、音楽も医療も、人の心に響くものを届けたいという点では共通していると感じています。
外来の肺がん治療にも対応。専門性を生かし地域に貢献
力を入れている診療はありますか?

まず呼吸器内科医として、止まらない咳はゼロにしたいという思いで、喘息や長引く咳の治療に力を入れています。薬だけでなく、いろいろな指導も含めて咳を止めるための工夫をしています。そして最大の特色は、肺がん治療を外来で行っていることです。クリニックでがん治療を行っている所は少ないと思いますが、錠剤の飲み薬でできる治療は当院で継続できます。点滴が必要な場合は刈谷豊田総合病院に送りますが、私も非常勤で通っているので、紹介して終わりではなく一生治療に関わっていきます。生活習慣病の管理も重要で、高血圧症、高脂血症、糖尿病など、どんな病気の方でも年を重ねれば合併していきますから、食事、運動療法から薬での管理まで総合的に診ています。
特色ある設備や検査について教えてください。
継承時に発熱の外来と一般の外来を完全に分離しました。同じ空間で仕切りを設けるだけでなく、玄関は一緒ですが熱がある患者さんは左、そうでない方は右と入り口から分け、お手洗いも別にしています。HEPAフィルター搭載の空気清浄機も導入しました。呼吸器内科の特色として、肺機能検査のスパイログラフィーや、喘息診断に特化した呼気NO検査も導入。そして大きな特色が、30分で41種類のアレルギーがわかる迅速検査です。どこにでも置いてある機械ではないので、これを目的に遠方から来る方も多いですね。指先からの採血で簡単にでき、特に小児の方には静脈採血が不要で負担が少ないです。今後は多項目PCR検査も導入し、呼吸器感染症の診断に特化していく予定です。
日々の診療で特に大切にしていることは何でしょうか?

必ず目を見て、必要であれば体に触れて診察することですね。そうすることで患者さんが安心すると思いますし、言葉遣いも一挙手一投足も見逃しません。入ってきた時の表情を見て、つらいところも引き出して診たいと思っています。また、初診は特に時間をかけて丁寧に診ています。何に困っていて、どうしたいのかを見定めて、こちらの提案とも擦り合わせながら、一緒に治療を決めていきます。身体的な不調の除去はもちろん、精神的な苦痛のケアも大事です。病気による不安な気持ちに対し、声かけ一つするだけで心象も変わりますから。エビデンスに基づいた治療は大切ですが、患者さんの希望と両立させる個別化医療を心がけています。人を診るとは、そういうことだと思うんです。
断らない医療で、地域の健康を生涯かけて支える
スタッフさんに、先生からお話されていることはありますか?

看護師4人、事務2人の計6人のスタッフがいますが、皆さん自立して経験もあるので、特にこちらから指示することはありません。ただ、断らない診療というのは伝えています。診療時間内であれば、いつ何時でも何歳でも誰でも来てもらっていいからねと。実際、呼吸器だけでなく、腹痛の方など、幅広い症状の方がお越しになります。日本内科学会総合内科専門医として、どんな内科疾患でも診る心構えでいます。スタッフの働きぶりは100点満点中150点。本当に信頼しています。ずっと今のスタッフたちと働けたらと思います。チーム医療として、皆で協力しながら患者さんのために最善を尽くしていきたいと思っています。
今後の展望と、地域への思いを聞かせてください。
皆さんのかかりつけ医として対応できるクリニックでありたいです。どんな症状の方でも診察していきたいという心構えでいますし、気軽に受診して何でも話せるような雰囲気づくりをしていきたいですね。がんの早期発見は生涯のテーマです。健診をきっかけに見つかることもありますから、そういった時に自分の経験をもとに早期発見につなげられればと思います。知立は小さい頃から育った場所で、私が子どもの頃から知ってくださっている方も来院されます。支えてもらった分、支えていこう、今度は自分の番だと。生涯をかけて地域の皆さんの心と体の健康に携わり、尽力したいと思っています。
読者にメッセージをお願いします。

呼吸器内科が専門なので、息苦しい、咳、痰など呼吸器症状に関しては経験もあり適切な治療が提供できると自負しています。アレルギー検査も指先の採血で簡単にできます。特に小児の方は避けなければいけないアレルゲンが何かを知ることで、アナフィラキシーショックを避けながら健康に過ごすための提案ができます。専門領域だけでなく、簡単な傷でしたら縫うこともできますし、頭痛や腹痛でも、どんなことでもいいので、困っている症状を協力し合いながら解決していくかかりつけ医になれたらと思います。予約制ではありますが、予約なしでも当日受診していただけます。症状がある方はそのまま来ていただいても大丈夫です。どんな些細なことでも、気軽にお越しください。

