早期発見が難しい膵がん
専門の医師による的確な検査と診断を
吉田内科クリニック
(犬山市/犬山駅)
最終更新日:2025/08/13


- 保険診療
膵臓は、消化を促す液体の生成やインスリンなどのホルモン分泌を担う臓器。その中に発生するのが膵がんだ。自覚症状が乏しい、転移が多い、といった特徴があり、他のがんと比べて早期発見や治療が難しいとされている。「吉田内科クリニック」の吉田司院長によれば患者は増加傾向にあり、2023年の統計では4万175人が膵がんで亡くなっているという。「膵がんは簡易な検査での発見が難しく、万人に認められた早期発見に有用な検診方法は現在のところ存在しないのです」と吉田院長は語る。ただ、同院には、クリニックでは数少ない造影CT、超音波内視鏡という2つの検査機器があり、詳細な観察により膵がん発見に役立つことが期待される。内科全般に加えて膵臓の診療を得意とする吉田院長に、膵がんの特徴や治療について詳しく教えてもらった。
(取材日2025年7月11日)
目次
早期発見は困難も家族の既往や糖尿病などのリスクを知り、専門の医師による診察と検査を受けることが重要
- Q膵がんとはどのような病気でしょうか?
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A
▲膵がんは特徴的な症状がなく発見が困難
膵臓の中にある膵管の表面から出るがんを「膵管癌」、または「膵癌」と表し、膵臓に発生する悪性腫瘍全般を「膵がん」と表します。膵臓は胃の後ろにあり、長さ20cmほど、厚さ2~3cmの小さめの臓器です。がんが2cmを超えたあたりから外に出て転移しやすく、主要な血管も近いことから手術が困難なことが多いです。早期発見も難しく、治療成績は他のがんと比べて極めて悪いといえます。ステージ1でリンパ節転移がなく、がんが1cm以下の段階であれば比較的良好な予後が見込まれますが、転移があればその見通しは悪くなります。治癒もめざせるステージ0での発見はごく少数とされます。
- Q検査について教えてください。
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A
▲専門である膵臓の診療に力を入れる
通常まず簡便で負担が少ない検査として、腹部超音波検査、採血による腫瘍マーカー検査が選択されます。さらに詳しい検査が必要と診断されたら、造影CT検査に進みます。これは膵がんの診断における標準ともいわれる検査で、単純CTよりも腫瘍の発見につながりやすい検査といえます。他にもPET-CTやMRIによる検査がありますが、それぞれメリットや検査の限界があり、医師は総合的に判断して検査を組み合わせます。最終的に、超音波内視鏡により、胃や十二指腸の中から膵臓を詳細に観察することが、早期の膵がんの発見に役立ちます。
- Qこちらでは造影CTと超音波内視鏡の検査ができるそうですね。
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A
▲造影CTと超音波内視鏡を導入。膵がんの発見に役立つ
いずれも私が病院で行っていた検査であり、膵がんの発見に役立てたいと導入しました。造影CTは、造影剤を点滴により静脈に注入し体内に循環させて病変の有無を観察します。造影剤アレルギーのリスクがありますので事前に十分な問診、検査を行うことが大切です。超音波内視鏡は膵臓を詳細に観察するもので、胃の内視鏡検査と同じように口から管を入れ、胃を介して膵臓に超音波を当てます。東海3県には専門性の高い、特に膵がんの治療が得意な病院がそろっていますので、がんが見つかればご紹介し、化学療法や放射線治療、あるいはそれらを併用した手術につなげています。治療技術は進歩しており、最近では陽子線治療という選択肢もあります。
- Q膵がんになりやすいのはどのような人ですか?
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A
▲検査では膵臓を詳細に観察。小さな兆候を見逃さない
がんになりやすい因子としては、生活習慣としての飲酒、喫煙、肥満があります。また二親等内に膵がんの方がいる場合も注意が必要です。家族に2人以上の膵がんの方がいる場合はさらにリスクが高くなります。他に、糖尿病の方、慢性膵炎の既往がある方、膵臓に水がたまる嚢胞がある方はさらに膵がんリスクが上がるという報告も。特にIPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)がある方は膵がんが発生するリスクが極めて高く、それを念頭に置いたフォローや必要に応じた検査が重要となります。膵がんは若い方にも発症することはありますが、好発年齢は60代以降です。
- Q予防や早期発見のためにできることはありますか?
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A
▲背中の痛みや体重減少、糖尿病の悪化がある場合は一度検査を
膵がん予防の決め手はなく、普段からタバコや飲酒を控える、肥満に気をつける、といったことがまず基本になるでしょうか。初期の特異的な症状も乏しいため、早期発見のためにできることを挙げるのは難しいです。後で考えると、そういえば腰痛や背中の痛みがあった、食欲がなかった、体重が減ったという方もありますが、残念ながらその時点では様子を見てしまうことが多く、また簡単な検査では診断に至らないという問題があります。ただ、早期の膵がんが胆汁の流れをふさいで黄疸が出るケースもあります。また、急に糖尿病を発症した、あるいは急に糖尿病が悪化した、ということがあったりした場合には、膵がんが関連していることも考えられます。