吉田 司 院長の独自取材記事
吉田内科クリニック
(犬山市/犬山駅)
最終更新日:2025/07/15

店舗が建ち並ぶ県道64号沿い、梅坪跨線橋南交差点角に「吉田内科クリニック」は立つ。吉田司院長の専門である消化器内科をはじめ、生活習慣病など内科全般を診療する。2024年の移転新築を機に、設備は先進のものを導入。特に超音波内視鏡は、一般的な検査では見えにくい膵臓や胆嚢を、胃を介して超音波を当てて観察するもので、難しいとされる膵がん発見にも役立つという。吉田院長は病院でがんが進行した患者を多く診てきただけに「がんは早期発見が肝心」と言葉に力を込める。加えて、在宅医療にも積極的に取り組む吉田院長は「検査という病気の入り口から治療、そして最期の時まで患者さんを支えていきたいと思います」と語る。犬山市出身で、自身も子育てをするこの地で地域医療にかける思いを聞いた。
(取材日2025年6月30日)
病気の早期発見のため先進の機器を導入
まず、先生のご経歴について教えてください。

私は京都大学医学部卒業後、洛和会音羽病院や倉敷中央病院で研鑽を重ね、消化器をはじめ内科全般の診療、胃・大腸の内視鏡検査を数多く行ってきました。その後、膵臓や胆嚢の診療を専門的に学びたいと考えて、その領域に強い愛知県がんセンターへ。超音波内視鏡という膵臓の精密検査に関わる技術を磨くとともに、がん患者さんの診療、緩和ケアに携わりました。新鋭の研究に基づいた標準治療をベースに、専門的な知識も身につけられ、より患者さんに合わせた治療方法を選択できるようになったことが今の自分の強みだと思っています。その後は美濃加茂市の木沢記念病院、現在の中部国際医療センターに入職し、2018年当院へ。中部国際医療センターには現在も超音波内視鏡の検査に出向いています。
専門的な知識や技術のある先生にクリニックで診ていただけるのは心強いですね。
大規模病院と比べ、開業医ができる治療は限られていますが、ホームドクターとして、病気の小さな兆候をいかに早い段階で見つけられるかに重点を置いていきたいです。例えば便秘で来られた方でも、ただの便秘なのか、大腸がんを疑うべき状態ではないか、とか、腹痛と吐き気で来られても、実はおなかではなく心筋梗塞ではないか、など、怖い病気が隠れていないかを見逃さないようにしたいと考えています。また、肝臓の病気はほぼ自覚症状がないまま進行します。健診で引っかかった肝臓の数値の異常が良性の脂肪肝なのか、肝硬変や肝がんにつながる脂肪肝炎でないのか、なども見極めていきたいと思います。
こちらは歴史あるクリニックだそうですね。新築された建物について教えてください。

当院はもともとこの近くの場所に、父の吉田洋名誉院長が1987年に開院しました。2024年3月、南へ500mほどの現在地に移転新築し、私が院長に就任した次第です。建物は以前の約2倍の広さになり、妻とも相談して院内は白を基調にやわらかい雰囲気としました。ご高齢の患者さんが多いので、段差をなくし手すりをつけたりもしていて、待合室の椅子は立ち上がりやすいように座面が少し高いものにしています。大腸の内視鏡検査を受ける方のためには前処置室としてトイレつきの個室を2室設けました。検査機器は更新や新規導入により充実させており、患者さんから「病院に行かなくてもここで検査できるのはありがたい」とお声をいただくことは多いですね。
精密検査で膵がんの発見に尽力
検査機器について教えてください。

胃、大腸の内視鏡検査については、移転前より高性能な機器を導入しており、大腸でいうと、10mmを超える大きなポリープでも切除が可能です。鎮静剤も用意していますので、過去の検査がつらかった方など希望されれば使用します。超音波検査についても精細度の高い機種で行っており、肝臓、胆嚢・胆管、腎臓、大動脈やリンパ節の他、条件が整えば膵臓も詳細に観察できます。肝臓の硬さもわかりますので、先にお話ししたように肝硬変に進行する可能性が高いかどうかを判断するための情報が、生検をしなくても数分で得られます。首の動脈や甲状腺、下肢静脈ももちろん検査可能です。また、新しいものでは造影CT検査と超音波内視鏡検査があります。病院でしていた検査の一部を当院でもできるようにしました。
造影CT検査と超音波内視鏡検査では、どのような検査ができるのでしょうか?
いずれも膵がんの発見に役立つことが期待できる検査です。造影CT検査は、点滴で造影剤を静脈に注入して体内に循環させて病変の有無を観察するもので、単純CT検査と比べて腫瘍などをより見つけやすいという利点があります。超音波内視鏡検査も膵臓、また胆嚢の精密検査をするものです。胃の内視鏡検査と同じように口から管を入れ、胃を介してその後ろにある膵臓や胆嚢に超音波を当てて観察します。胃がんや大腸がんは比較的通常の内視鏡検査で発見しやすいのですが、膵がんは発見が難しく病院では進行した患者さんを多く診てきました。そのため自分の専門でもある膵臓の診療に力を入れたいと考え、この2つの検査を導入した次第です。健診で膵臓の嚢胞があると言われた方や、一般検査で異常があった方で二親等内の家族が膵がんだった方、お酒、タバコを嗜む方には受けてほしい精密検査です。
患者はどのような方々が来られていますか?

内視鏡検査や超音波検査、膵臓や肝臓の相談に来られる方も増えていますが、一般内科の診療を受けに来院される方も多いです。高血圧や糖尿病など生活習慣病の方は少なくないですね。ほとんど症状がないため、放置したり、なんとなく治療を始めてしばらくしたらやめたりする方もおられますが、放っておくと脳卒中や心筋梗塞のリスクにつながります。そこで、なぜ通院が必要なのか、どれくらいの数値を目標にするのかをしっかりお伝えして、治療を続けていただけるように努めています。お子さんを連れてご家族で受診される方もあり、ファミリークリニックとして地域に根づいていけたらと思っています。
病気の入り口から最期の時まで患者を支える
先生はケアマネジャーの資格もお持ちで、在宅医療にも注力されていると伺いました。

倉敷の病院にいる時に在宅医療を専門にされている先生を知り、「家で最期を迎える」という選択肢があることに気づかされました。当院に来てからは、ホームドクターとして病気だけでなく家庭環境を知ることも大事と思い、ケアマネジャーの資格を取得。生活に合わせて薬の飲み方を工夫したり、介護保険を利用してご家族の負担を減らすための提案をしたりしています。当院はターミナルケアに力を入れていますので、もともと通院されていた患者さんの他、病院からの紹介患者さんも多いです。訪問看護ステーションは頼りになる良い所が見つかり、福祉分野の方々とも協力して在宅医療に取り組んでいます。
在宅医療はご家族も不安があると想像します。
在宅というのは患者さんの思いや生き方を尊重するものですが、ご家族にはご家族の思いがあり大切にしたいと思っています。新型コロナウイルス感染症が流行した折には面会が難しく、ご家族の声を聞いて私も心苦しいことがありました。今はご家族に「家で最期まで一緒にいられて良かった」と言っていただけることがとても重要な部分であり、私のやりがいにもつながっています。「在宅は無理」と言っていたご家族が最期まで一緒に過ごして満足されることもあります。ただ、不安は当然大きいと思いますので、24時間連絡がつくようにしており、最期の時の呼吸など症状をあらかじめお伝えしておくこともあります。
今後についてお考えをお聞かせください。

検査機器を充実させたことで消化器内科診療に関してはかなりのところまでできるようになりました。やはり病気は早期発見が肝心です。病院では健診で指摘されたのに放置していて進行してから来られるという方を多く診てきましたので、ホームドクターとしてまず病気を早期に見つけることを目標としたいです。もう一つの目標としては、病状に応じて適切な時期に適切な病院に紹介すること。東海3県は専門の医師がそろっており、しっかりした医療環境がありますのでそこにつなぐことも大切な役割と考えます。そしてもう一つ、治療して元気になられたら良いのですが、そうではない場合、在宅医療も含め最期までサポートする、ということです。父が長年地域の方々の診療に力を尽くし信頼されてきたように、私もスタッフとともに地域の人の健康を末永く見守っていく医師であり続けたいと思います。