酒井 康臣 院長の独自取材記事
一宮整形外科
(一宮市/尾張一宮駅)
最終更新日:2025/05/28

大規模な商業施設が立ち並ぶ国道22号沿いに、「一宮整形外科」はある。遠くからでも見やすい大きな看板があり、広い駐車場があるため、車で来院しやすい。酒井康臣院長は父から同院を受け継ぎ、2021年にクリニックを新設してMRIなどの検査機器類を導入。院内に手術室を作り、精密な診断と迅速な治療を心がけている。また、理学療法士らと連携しながら質の高いリハビリテーションをめざしているという。「患者さんを、少しでも早く日常生活に戻してあげたいです」と語る酒井院長に、得意な治療や診療にかける思いなどを聞いた。
(取材日2025年4月17日)
精密な診断をもとに迅速な治療につなげる
クリニックを新設された際に、こだわったところを教えてください。

クリニックを新設するにあたり、診断の精度を高めることにこだわりました。整形外科においては、診断がすべての出発点だからです。そのため、エックス線だけでは捉えきれない情報を得るために、先鋭的なMRIや超音波検査などを導入しました。MRIは骨の中を見るのに優れていますが、超音波検査は筋肉や靱帯といった軟部組織の状態をリアルタイムに観察できます。必要に応じてこれらの検査機器を駆使しながら、患者さんの状態を適切に把握し、治療方針を立てています。もう一つのこだわりは、手術室を設けたことです。骨折やアキレス腱断裂などさまざまな手術が可能です。原則として手術は日帰りで対応していますが、経過観察のために入院できるベッドも3床あります。
なぜクリニックに手術室を作ったのでしょうか?

手術室を設けた一番の理由は、患者さんをできるだけ早く治療して、日常生活に戻してあげたいという強い思いがあるからです。患者さんの中には外来での処置だけでは対応できない骨折などのケースも少なくありません。総合病院に勤めていた時には対応可能な専門病院を紹介するしかありませんでしたが、それでは治療開始までに時間がかかってしまいます。その時間がもどかしく感じたので、手術室を作りました。手術によって患者さんの行動制限がなくなるのであれば、1日でも1時間でも早く対応してあげたいと、私は思うのです。もちろん、高度な設備や長期の入院が必要な手術は病院にお願いする必要がありますが、当院で対応可能な手術であれば、できる限り迅速に行いたいと考えています。
少しでも早く患者さんの症状を治したいという気持ちが強いのですね。
私がめざしているのは、常に最速の治療です。外来診療においても、待ち時間を可能な限りゼロにしたいと考えています。これは、私自身が待ち時間が苦痛だと感じる性格だからかもしれません。患者さんは、痛みや不調でつらい思いをされているわけですから、一刻も早くその状態から解放されたいと願っているはずです。だからこそ、私はできる限り迅速に診断して、治療を開始したいと考えています。外来の待ち時間を減らすために、診察室を複数用意し、患者さんに先に診察室に入っていただき、私が各診察室を移動して回るという工夫をしています。ただこのスタイルだと、患者さんが診察室を退室する前に私が退室するということもあるかもしれません。患者さんを見送らないことで冷たい印象を与えるかもしれないとも考えましたが、私は患者さんの待ち時間を減らし、その分早く治療を開始することこそが、患者さんにとって最も重要だと考えています。
リハビリテーションを重視し、多数のスタッフを配置
どのような患者さんが来院されますか?

小さなお子さんからご高齢の方まで、幅広い年齢層の患者さんが来院します。お子さんは遊びやスポーツによるケガが多く、ご高齢の方は日常生活での痛みや不調を抱えている方が多いですね。また、アスリートも来院するので、それぞれのスポーツの特性を考慮した上での治療や、早期の競技復帰をめざしたリハビリテーションを提供しています。ただし、お子さんでもアスリートでも、整形外科の医師として行うことはそんなに変わりません。しっかりとした診断をして、必要な治療を提供することですね。大きく違うのは、治療後のリハビリテーションです。整形外科の治療において、リハビリテーションは非常に重要なものです。
リハビリテーションにかける先生の思いをお聞かせください。
いくら手術などで症状の改善が図れても、その後のリハビリテーションが不十分だと、日常生活へのスムーズな復帰が難しくなることもあり得ます。そのため当院で力を入れているのがリハビリテーションです。理学療法士を中心に、作業療法士などのスタッフが常時10人ほど在籍し、それぞれの専門性を生かして、患者さん一人ひとりの状態に合わせたプログラムを提供しています。リハビリテーションの指示は私が出しますが、その後は経過状況に応じながら理学療法士が中心となってリハビリテーションを進め、進捗の報告をもらいながら、連携して治療を進めています。経験豊富な理学療法士たちが、患者さんの状態を丁寧に評価して目標を共有してくれるので、安心して任せています。整形外科の領域においてリハビリテーションが重要だからこそ、理学療法士らの育成も私の大切な役割だと考え、理学療法士をめざす学生の実習も積極的に受け入れています。
力を入れている診療はありますか?

どのような患者さんが来院されても対応できるように幅広く研鑽を積んでいるので、特定の疾患や治療に特化しているわけではありません。比較的珍しい治療としては椎間板内酵素注入療法があります。これは、椎間板ヘルニアに対して注射で行う治療法です。保険診療の治療法で、手術に比べて体への負担が少ないのが特徴です。私はかなり前からこの治療に携わってきたこともあり、椎間板ヘルニアで困っている患者さんの選択肢の一つとして提案できたらいいなと思い、導入しています。もちろん、すべての方に適用できるわけではありませんが、手術を回避できる可能性があるという点で、患者さんにとってメリットがあると考えています。この治療は局所麻酔で行うため、日帰りでの治療が可能です。
整形外科への情熱をもとに地域に貢献していきたい
熱心に診療に取り組まれる原動力は何でしょうか?

私の診療の原動力は、何よりもこの仕事が好きで、楽しいという気持ちです。もし生まれ変わっても、また整形外科医になりたいと思っているぐらいです。好きな理由を言語化するのは難しいのですが、患者さんの状態を把握し、適切な治療法を選択し、良い結果につなげる。その過程すべてに、私は大きな喜びを感じています。患者さんは、ケガや痛みなどが要因で、何かしらの機能不全があるから整形外科に来院します。患者さんにとってマイナスの状態からもとの状態、すなわち100%の状態に少しでも早く近づけることが私の使命であり、やりがいです。
先代から医院を受け継ぐにあたって、どのような思いがありましたか?
父がこの場所で整形外科を開業していたのですが、私が最初から継ぐことを考えていたわけではありません。さまざまなご縁があって整形外科の医師として働くうちに、徐々に整形外科の魅力を知り、クリニックを受け継ぐ気持ちが芽生えてきました。受け継ぐのであれば、地域の方々の信頼を裏切らないように、より質の高い医療を提供できるようになりたいという強い思いがありましたので、建物自体を新設してMRIを導入し、手術室を作りました。父が築き上げてきた地域医療への貢献という土台を大切にしながら、時代の変化に合わせて、常に質の高い医療を提供できるクリニックをめざしています。
今後の展望と、読者へのメッセージを教えてください。

今後の展望として、事業を拡大したいという思いはまったくありません。今のこの場所で、今以上に質の高い医療を提供できるようになりたい、それだけを考えています。例えば、リハビリテーションの予約が今よりもっとスムーズに取れるように、もう少しスタッフが増やせたらいいなとか、もっと多くの実習生を受け入れて、若い世代の育成にも貢献できたらいいなとか、そういった思いがあります。今後も地域の皆さんに貢献できるように、常に改善を続けていきます。そして、整形外科のことで困ったことがあればいつでも頼れる、そのような存在になっていきたいですね。ケガや慢性的な痛みなど、お困りのことがあればどんなに些細なことでもお気軽にご相談ください。