堀 昭彦 院長の独自取材記事
大和南クリニック
(一宮市/島氏永駅)
最終更新日:2024/05/14

40年以上にわたり地域住民の健康を見守っている「大和南クリニック」。勤務医時代は外科医師だった堀昭彦院長は、開業医になることを見据え、他領域でも積極的に経験を積み、2013年にクリニックを継承した。現在は内科疾患を中心に、足腰の痛みや認知症、物忘れなど、幅広い症状に対応している。イメージカラーのオレンジ色を取り入れた院内にはスロープや手すりがあり、患者への配慮が見られる。患者が安心して通院できるよう、院内の環境を少しずつ変えているのだという。院長就任から10年。診療への思いとこれまでの歩み、さらに今後の展望について話を聞いた。
(取材日2024年3月11日)
「患者の満足度が高い医療を提供し続ける」ことが信条
院長に就任されて10年ほどになるそうですね。これまでどのような思いで診療されてきたのでしょうか。

長年、地域医療に尽くしてこられた前院長からクリニックを継承しました。私が医師になってから変わらずに大切にしていることは、患者さんから感謝される診療をすることです。私自身、アトピー性皮膚炎等、いくつかの疾患で患者の立場になることがありましたので、同じように病気で苦しむ人たちの力になりたいと考えていました。大学は理工学部の数学科に入ったのですが、医師になりたいという気持ちが大きくなり、大学を辞めて医学部を受験しました。あの頃から、患者さんの満足度の高い医療を提供すること、そして患者さんに感謝される診療をすることをめざしていました。これらを実現することが、地域医療への貢献につながると考えています。
長年通われている患者さんが多いと伺いました。
はい。70代以上の方が多いですね。近所に住んでいる方がほとんどです。症状は、高血圧や糖尿病などの生活習慣病や内科疾患の治療が多く、最近は認知症や物忘れに関する相談も増えています。足腰の痛みやケガの治療、外傷の縫合にも対応しています。高齢のご夫婦で暮らしている方が多く、どちらかが寝たきりになって一人で介護されていたり、足腰が痛くても通院に付き添ったりされているケースがよくあります。そういった方々が安心して受診できるように、院内の環境を整えることも大事ですね。
ご高齢の患者さんが通いやすいように、工夫されていることを教えてください。

手押し車を使って通院される方が多いため、入り口にスロープを増設しました。もともといくつかのスロープを設置していたのですが、数を増やしたり滑り止めをつけたりして、安全性を強化しています。また、玄関と診察室に立ち上がり補助用の手すりを用意しています。立ったり座ったりする際、何かにつかまったほうが安心できますからね。玄関には丸椅子を用意し、その近くに杖型の手すりを置いています。決して本格的で大掛かりなバリアフリー化ではありませんが、気になった点は少しずつ改善し、患者さんが通院しやすいような環境を整えるように配慮しています。
患者目線に立った対話中心の診療で、安心感をもたらす
診療の際に心がけていることは何でしょうか?

「患者さん目線」に立つことを何よりも大切にし、患者さんの話をしっかり聞いて、理解してもらえるように説明することを心がけています。とは言っても、診察時間には限りがありますので、じっくりと一人ひとりに時間をかけるのは難しいこともあります。患者さんによってお話しされる内容も量も違いますし、私からの説明をすぐに納得される方もそうでない方もいらっしゃいます。特にご高齢の方は、話を聞いてもらうことで安心感につながることがありますので、できる限り話を聞くようにしたいのですが、なかなか難しいですね。患者さんには、「この曜日のこの時間なら、今日よりもじっくりお話が聞けます」とお伝えすることもあります。このような対応をしてでも、患者さんのお話をしっかりお聞きしたいという気持ちで診療しています。
一緒に働くスタッフの方々について教えてください。
2024年3月現在、看護師3人、事務員2人が働いています。長く働いているスタッフが多いので、私から指示を出さなくても行動してくれて頼もしいです。スタッフの行動から、「気が利くな」と感じることもよくありますね。その時は感謝の気持ちを伝えるようにしています。「今の患者さんへの声かけは良かったよ」と伝えることもあります。長く働いてくれていますので、何でも任せられる存在です。スタッフの意思を尊重するようにしています。
クリニックを継承されてから、院内のイメージカラーを変えられたそうですね。

待合室のソファーの色をライトブルーからオレンジに変更しました。院内を明るい雰囲気にしたかったので、太陽をイメージしてオレンジ色に変えたのです。前院長の時代から通われている患者さんからは、変更した当初は「前のほうが落ち着いていたね」と言われることもありましたが、オレンジ色を取り入れてから、院内が明るくて温かい雰囲気になったと思います。スタッフの制服の色も内装の色に合わせて変更したので、最初は慣れなかったようです(笑)。看板にもオレンジ色を取り入れています。
患者の日常と地域に寄り添うクリニックに
ところで、先生は勤務医時代は外科を専門にされていたとお聞きしました。

はい。名古屋掖済会病院で外科に所属しました。その後、血管外科や心臓外科に勤務し、数多くの外科手術に携わりました。しかし、開業医となると、外科だけではなく内科をはじめ幅広い症状に対応する必要があります。そのため、クリニックを継承する前に知多郡の杉石病院に勤務し、他科のことを勉強しました。そこでは、透析治療や訪問診療、回復期リハビリテーションなどにも取り組んでいましたので、さまざまな症例の幅広い年代の患者さんを診療しました。外科を離れて過ごしたこれらの期間は、非常に貴重な時間でしたね。現在は、内科疾患の診療が中心ですが、たとえ専門外だとしても、どうすべきかを考え、専門家に相談したり紹介したりして対応するように心がけています。
さまざまな経験を経て、40年以上の歴史があるクリニックを継承されたのですね。
はい。総合的な医師をめざして勉強していた頃に、当クリニックの前院長と出会いました。前院長は面倒見がよく、患者さんからもスタッフからも頼りにされていた方です。特に、人間性や周囲との関係性を重視されていました。前院長が後任選びで重視されたのは、「患者さんをしっかり引き受けてくれる人」。継承する前に毎月お会いして、「先生のようになりたい」との気持ちが高まってクリニックを継承することに決めました。2013年に院長に就任してから10年がたちました。院長を任された当時はプレッシャーもありましたが、医師になる前から抱いていた「患者さんに満足していただける診療を提供したい」を信条に、診療を続けています。
今後、どのようなクリニックにしていきたいですか?

患者さんの日常に寄り添うことを、さらに考えていきたいです。ご高齢の患者さんが多いので、足腰が弱って家に閉じこもっている方や出かける機会がなくなって楽しみが減ったとおっしゃる方もいます。そのような方々がクリニックに来て、私やスタッフ、他の患者さんとお話しすることで、気分転換になったり元気になったりするとうれしいですね。おしゃべりすることで、日常が楽しく生き生きとしますし、クリニックを訪れることで足腰の健康にもつながるのではないでしょうか。デイサービスなどの通院介護サービスもありますが、クリニックもその役割を担う必要があると考えています。「ここに来て元気になった」と思っていただけるような対応を心がけて、今後もスタッフと一緒に診療を続けていきます。