野嵜 誠 院長の独自取材記事
野崎医院
(名古屋市中川区/中島駅)
最終更新日:2021/10/13
あおなみ線中島駅から徒歩2分。開院から65年間、父の代から地域の人々の健康を見守ってきた伝統あるクリニックが「野崎医院」だ。待合室にはどこか懐かしさを感じる竹製のソファーと椅子がしつらえられ、生けられた生花が来る者をパッと明るい気分にしてくれる。「毎週、季節の花をお花屋さんに持ってきてもらっています。きれいに越したことがないというのが当院の方針なので」と笑顔で語ってくれたのは、2代目として同院を33年間守り続けてきた野嵜誠院長である。何より患者に合った医療を提供することを第一に考え、「両手を広げて患者さんを迎えられるクリニックでありたい」と語る。勤務医時代、多くの患者を看取ってきた野嵜院長だからこその真摯に患者に寄り添う姿勢、こだわりや患者への思いを聞いた。
(取材日2016年7月27日)
幼少期から暮らすなじみ深い地域の健康を守り続けて
1951年開業の歴史あるクリニックなのですね。
1951年に父がこの場所で内科と小児科の医院を開業して、野崎医院という屋号もその時に父が名づけました。僕自身、2歳の時からこの地域に住んでいて、当時は夜中に起こされて患者さんを診察したり、往診かばんを持ってスクーターで往診に行ったり……という時代でしたから、父のそうした姿を見て育ち、幼な心に大変さは感じていました。愛知県がんセンターで勤務医をしていた僕が30代後半に差しかかった頃に父が67歳で急逝し、1983年6月から僕が2代目として当院を継承しました。
開業はもともと考えていたのですか?
67歳というと開業医としてはまだまだ頑張れる年齢ですし、僕も勤務医として充実した時期で、実際、父が亡くなる数ヵ月前までは開業について考えたことはなかったです。父が緊急入院となったとき、患者さんが困るからということで、週に2日くらい父の医院を手伝っていたのですが、診察した患者さんから希望を聞いたりすると「これは続けていかないといけないな」という気持ちになりました。まあそれが開業のきっかけかな。町のニーズや地域での役割を鑑みて、後を継いでこの地域のささやかな医療機関としての役目を変わらずに果たしていくべきだと、急遽開業に至ったわけです。
急な代替わりだったわけですが、お父さまの代から引き継いだものはありますか?
ないですね(笑)。僕は僕で医者としての勉強を勝手にやっていましたし、父は父で家で黙々とやっていたので、実際何をやっていたかわからないのでね。これはどういうことだ? とか相談されたこともないし、こちらも聞いたこともない。ただ、親父はいつも診察室に座って、何か書類や診断書を書いたりしていました。当時は「何をやっとるんかな?」とチラチラと思ってはいたけれど、自分自身がこうしてここに座ると印かんも書類もあって、スタッフも近くにいて、何でもあるわけなんですよ。診察室が一番落ち着くような感じ、今それがすごくわかるんです。
がんセンターで培った幅広い知識・人脈が宝に
もともとは外科系だったとお聞きしました。
1976年に鳥取大学を卒業後、名古屋大学医学部附属病院の産婦人科大学院に入学しました。いろいろな外科手技を経験したいと思っていて、開業する前の5年間は愛知県がんセンターで婦人科の悪性腫瘍の手術を数多く執刀しました。当時のがんセンターは満遍なくいろいろな分野を見られて、お互いに聞いて勉強したり、幅広い知識を得るには非常に良い環境でした。その時の経験が生きて、開業してみて困ったと感じたことはあまりないほどです。
どのような症状の患者さんが多いですか?
僕が開業してからもう33年、開業当時は小さな子どもも多かったけど、今は本当に高齢化していて、父の代から続いている患者さんの中には大正生まれの方たちもいます。開業当初は明治生まれの方たちもいましたよ。そんな中、僕は特別な専門性をもって特殊な医療をしたり、何かに特化するというよりも、患者さんに合った医療を提供することを第一に考えていますから、訪れる方の症状の幅も広く、がん、慢性疾患、糖尿病や甲状腺疾患、高血圧と、本当にさまざまです。「よろず相談所」のように「とりあえず先生に診てもらえれば大丈夫」という感じで来てくれるのはうれしいことです。
診療に対するこだわりをお聞かせください。
その患者さんにとって、もっとも負担なく安全な医療を提供すること。新しいものをすぐさま取り入れるとかはあまりしないようにしています。評価の定まった確立された薬だけを、勉強会などのしっかりとした情報をもとにフィードバックして、患者さん一人ひとりに合った考え方・医療をきちんと提供するように努めています。信頼されているかどうかは患者さんが評価すべきことなのでわかりませんが、今までしっかり休みまくっているにもかかわらず(笑)、それでも来ていただけているということは、信頼を得られているということなのかなとも思っています。
いつでも患者を両手を広げて待っているクリニック
院内に生けられた生花が印象的ですね。
きれいに越したことないという当院のこだわりです。毎週お花屋さんに持ってきてもらうのですが、きれいな花を飾っておくことは患者さんにとって不愉快なことではないですよね。たいしたコストになるわけでもないのに、花が飾ってあるだけでその場がパッと明るく、華やかな気分になれますから。生花のほかに殺菌や消臭機能のある造花も置いて院内スタッフに配慮しています。院内スタッフでいえば、勤続20年以上が2人、10年が1人と勤務歴の長いナースが3人います。受付の子もテキパキやってくれて、スタッフには本当に恵まれていて、感謝しています。うちは水・日曜が休診日でゴールデンウィーク、夏休み、お正月などの臨時休業もしっかり休めるので、適当な暇さ加減と忙しさ加減でメリハリが効いていて働きやすいんじゃないかな(笑)。
お休みの過ごし方は?
国内外の旅行やいろいろな本や雑誌を読むこと。あとは健康維持のための週2回のプールとジム、週2回のゴルフのラウンド。健康維持のための時間としての過ごし方です。開業医同士、異業種の方たちなどいろいろな仲間との交流、意見・情報交換の場としてもゴルフを楽しんでいます。遊んでばかりに聞こえますよね(笑)。
今後の展望をお聞かせください。
30年以上ホームドクターをしていると、子どもの時に診ていた患者さんが親になって赤ん坊を連れてきてくれることがあって、そういうのはなかなかうれしいね。地域の高齢化が進む中、僕も66歳になって、視力・視野が衰えを感じることもあるんです。ちょっとしたカルテの文字を見落とすとかが増えてきている実感がある。だからスタッフの力を借りてとにかくミスのないよう、患者さんに迷惑をかけないよう気をつけています。人間の尊厳についてもよく考えます。僕自身の考えとしては、人間としての尊厳を維持できる医療を提供したいと思っています。あとは患者さんの「クリニックに行きたい」という意欲も大事にしたい。歩いてくることがリハビリにもなるし、社会とのつながりにもなるわけですから。当院はそんな患者さんを両手を広げて待っているようなクリニックなので、安心して来てもらいたいです。