馬嶋 邦通 院長の独自取材記事
まじま医院
(名古屋市西区/庄内通駅)
最終更新日:2024/08/16

名古屋市営地下鉄鶴舞線の庄内通駅で地下鉄を降り歩いていると、子ども連れのママと頻繁にすれ違う。そんな学校や住宅が多い地域で、長年にわたって近隣住民の健康を支えてきた「まじま医院」。患者とコミュニケーションを取るのが好きという馬嶋邦通院長が、ニコニコ笑顔で迎えてくれる。院内に入ると、美しい曲線を描く受付カウンターやベージュを基調としたインテリアなど、シンプルながらもどこか温かさを感じる待合室がある。また、診察室には暗くなると、天井に星がきらめくという隠れた仕掛けが子どもたちを楽しませている。聞けば、設計やインテリアは馬嶋院長が自ら手がけたのだとか。待合室に入った時に感じた、温かな印象そのものといった人柄の馬嶋院長に、診療のモットーなどについて話を聞いた。
(取材日2016年3月17日/2023年5月1日)
長年にわたり、近隣住民に愛される医院
どんな患者さんが来院されますか?

当院は朝が早く、8時半には診察をスタートさせるのですが、朝一番は年配の方、9時半くらいからは近隣の主婦の方や子ども連れの方、お昼になるとこの近辺に勤めている方……と、時間帯によって、さまざまな患者さんが来院されています。勤務医時代に名古屋市立大学第二内科、公立陶生病院、大同病院で、呼吸器やアレルギー疾患の診療に長年従事していたため、喘息などの呼吸器やアレルギー疾患を中心に内科、小児科の一般診療まで、まんべんなく行っています。高齢化の進む西区ですが、アレルギー疾患は特に若い世代で問題になるため、当院でも子ども連れの親御さんが相談に訪れる姿が目立ちます。
2代にわたってこの場所で診療を続けているんですね。
1963年、私が4歳のときに父が小児科の診療所として開業をしましたので、もう60年以上前ですね。その頃の父の患者さんが、今はお孫さんを連れて来ることもありますから、長くやらせてもらっているなと、感慨深いですね。幼い頃によく薬局から父の診察室を覗いて遊んでいたのですが、そんな幼少期を知っているという患者さんが今でも通ってくれています。1998年には私も当院で勤務を本格的にスタートしました。父のやり方を受け継ぎつつ、私の診察も受け入れていただきながら、ここまで長く続けてこられたことは、ありがたいですね。
世代交代と同時に院内も全面改築したとか?

このビルは1974年に建てていますので、だいぶ老朽化していました。そこで、1996年から工事を始めて1998年までに、コンクリートの駆体だけを残して徐々に改築をしていきました。私は医師にならなかったら設計のほうに進んでいたのではと思うくらい、そういうことが好きなんです。待合室や診察室の設計やインテリアは私が考えました。味気ない真四角の待合室にはしたくなかったので、受付のカウンターは円を描くような曲線を採用しています。天井やキッズルームにも曲線を使い、インテリアはベージュ系で統一することで、温かさを感じられるように工夫しています。診察室の天井は、照明を落とすとプラネタリウムのように星が現れるクロスを張っているんですよ。お子さんに、喜んでもらえるかなと思ったんです。
コミュニケーションを大切にして、信頼関係を構築
幼い頃から医師になろうと思っていたのですか?

わが家はいわゆる共働きで、幼少の頃から父と母が働くのを見ていました。小児科でしたが、患者さんや親御さんとのコミュニケーションを大切にしているのが見て取れました。そんな両親の姿を見て、医師は人と接する仕事なんだということを幼い頃から刷り込まれたのかもしれません。そこに面白みを感じて、いつしか医師を志すようになりました。医師は人とおしゃべりをするのが好きでないと務まらないかもしれませんね。医療は信頼関係の上に成り立つものですから、いくら知識があったり、テクニックがあっても、患者さんとコミュニケーションを取って信頼関係を築けなければ、名医とは言えないと思います。
心がけていることはありますか?
患者さんからは、「話をよく聞いてくれる」と言われます。患者さんが不安に思うことは、なるべく引き出して聞きたいですし、こちらからは少しでも参考になる情報を提供したいと思っています。もちろん、これは医師1人でやれるわけではなく、看護師5人、事務員4人というスタッフの体制を整えていますから、受付では事務員が、処置や検査の際には看護師がというように、全員で患者さんをフォローしています。子育て経験のある看護師もいますから、とても頼りになりますね。子育て中のお母さんは本当に大変だと思うので、きちんと話を聞いて差し上げたいと思っています。
コミュニケーションを大切にしているんですね。

患者さんはもちろん、スタッフともそうですが、こうしなければだめという前にまずは相手を認めること。相手のいいところを見つけて、コミュニケーションをしっかり取ることを常に心がけています。患者さんの中には、他の医療機関で若い先生に怒られて、行きづらくなってしまったとおっしゃる方がいました。私も若い時は一生懸命さゆえに言葉がきつくなってしまうことがあったものです。今は良い意味で年を重ねて余裕ができてきたということでしょうかね(笑)。元来、人と接することが好きですし、そういったコミュニケーションの中に、仕事の楽しみを見出しているんです。
スタッフもベテランの方が多いとか?
当院に20年近く勤務しているスタッフもいますよ。皆さんに長く勤めてもらっていますので、診察をしていると、事務員も看護師も私と患者さんのやりとりをちゃんと聞いていて、こちらから説明をしなくても意思疎通ができるのでスムーズです。彼らスタッフがいなかったら当院は成り立ちません。
訪問診療で在宅患者とその家族をバックアップ
訪問診療も積極的にされていますね。

1998年に私が当院に勤務をするようになって半年後くらいから訪問診療を始めました。午後はいつも近隣を中心に、北名古屋市や枇杷島のほうまで車で診療に出かけます。機能強化型の在宅療養支援診療所といって、24時間体制の在宅診療をしていますので、真夜中や早朝に呼ばれることも少なくありません。在宅療養を推進するのが国の方針で、医師だけでなく、訪問看護師や理学療法士、ホームヘルパーなどがチームを組んで、患者さんや患者さんを介護するご家族のバックアップをするシステムづくりをしています。医師も3医療機関で連携しながら対応していますが、やはりご家族と普段からコミュニケーションを取れている主治医による24時間対応がベストです。どうしてもというときは副主治医にお願いをすることになりますが、そこは難しいですね。
大変な仕事ですね。プライベートはありますか?
休みの日は残務整理に追われていますし、いつ何時、往診が入るかもしれませんので、なかなか気が休まらないのですが、唯一のストレス発散といえばカラオケです(笑)。何かあれば中断してすぐに診療に駆けつけられるのがいいですね。
最後に、ドクターズファイルの読者へメッセージをお願いします。

医師は情報があればあるほど、適切な治療を提供することができます。診療に来られても、なかなか言いたいことが言えないという場面もあるかと思いますが、そういう時は、メモ書きでもいいので、おっしゃりたいことをお持ちいただくのがいいと思います。当院では、おじいさんおばあさんがお母さんに代わってお孫さんを連れてくる際に、お母さんから手紙を受け取ることもあります。そこにお母さんの心配事や質問が書かれているときは、私も返事を書くように心がけています。そうやって、お互いになるべくコミュニケーションを取りながら、症状や治療方針を理解してもらって、信頼関係のもとで診療を行っていけるといいですね。