阿部 知博 院長の独自取材記事
池下駅もなみ眼科クリニック
(名古屋市千種区/池下駅)
最終更新日:2024/08/06
池下駅から直結するビル内の医療モールにある「池下駅もなみ眼科クリニック」は2023年4月に開業のクリニックだ。院内は落ち着いた白色の壁や緑の椅子などが採用され、目に優しい空間が広がる。穏やかで優しい人柄の阿部知博院長は長年にわたり、硝子体や黄斑部の疾患に携わってきた眼科のスペシャリスト。その知見を生かし、一般眼科をはじめ、白内障や緑内障など幅広い眼科診療を提供する。「患者のため」をモットーとする院長のもとには、老若男女を問わず、多くの患者が訪れる。そんな阿部院長に同院の特徴や診療時の心がけなどについて話を聞いた。
(取材日2024年3月12日)
専門的な知見と先進の機器でさまざまな眼科診療に対応
開業された経緯を教えてください。
これまでいくつかの病院で勤務してきました。どこも来院患者数が多く、一人ひとりの患者さんに充分に診察時間をかけることができていないと感じることがよくありました。このため、いつかは開業して自分らしい、もっと患者さんに向き合える医療をしたいと思っていました。しかし、気がつけば長い年月が流れていました。そんなある日勤務していた病院で、当地で眼科クリニックを運営されていた先生が、閉院を考えていると話されました。立地条件や医院規模など私にとって好条件がそろっていたので「今が希望をかなえる時」と開業を即決しました。医院名の「もなみ」はフランス語で、大切な人や友達という意味があります。患者さんに寄り添い、身近な存在となれるクリニックをめざして、この名称にしました。
先生の専門分野や近年増えている疾患を教えてください。
眼科杉田病院では、形や色を見分ける視細胞が密集する「黄斑部」の疾患と涙の通り道の涙道疾患を中心に診察しておりました。大学医局時代は緑内障、ぶどう膜炎専門の外来も担当しておりました。現在のクリニックで来院されるのは白内障、緑内障の方が圧倒的に多いですね。どちらも加齢に伴い急増しますので、超高齢社会の影響が大きいと思います。特に失明原因の1位とされる緑内障は、発症すると治ることはなく、放置すれば進行していきますので早めに検査を受けていただきたいですね。私の専門分野である加齢黄斑変性も近年増えてきています。またデジタル社会の影響からか、近視の患者さんも増えている印象があります。
先進的な機器も積極的に導入されていますね。
より精密な検査や治療ができるように、通常、クリニックより病院に設置されているような高性能の機器を積極的に導入しています。網膜の断面などを測定する光干渉断層計は、加齢黄斑変性や緑内障、糖尿病網膜症といった、さまざまな病気の診断に役立ちます。光干渉断層血管撮影は、造影剤を使用しなくても非侵襲的に網膜や脈絡膜の血管の状態を把握することができます。従来の眼底カメラでは網膜の中心付近のみ狭い範囲しか撮影できなかったのですが、超広角眼底カメラは、網膜全体の8割程度を一度に広範囲に撮影可能です。さらに瞳孔を開かずに撮影できるので、検査直後に車の運転もできます。私が先進的な機器にこだわるのは、痛みだけでなく、メンタル面や時間など、患者さんの負担を軽減できるからです。診察時に画像やデータをもとに説明することで、難しい眼科医療の解説も少しはわかりやすくなるのではないかと思います。
患者に寄り添い、一人ひとりに適した診療を一緒に探す
医師をめざしたきっかけや、眼科を選んだ理由を教えてください。
高校生になるまでは映画監督や作家、デザイナー、画家など芸術的な職業に就くのが将来の夢でした。しかし高校2年生の時、カンボジアの難民キャンプで働く日本人医師のテレビ番組を偶然見ました。その時に「こんな生き方がしたい!」「人の役に立てる仕事に就きたい」と思ったのが、医師をめざしたきっかけですね。眼科の道に進んだのは研修医時代です。偶然白内障の診療を見学する機会があったのです。現在は以前と比べ、軽度の白内障でも手術をするようになってきていますが、当時は本当にひどくなった白内障だけを手術していたので、ほとんど見えなくなった目を、見えるようにするための手術でした。失明に近い患者さんが見えるようになり、気持ちが前向きになる瞬間に遭遇できたらやりがいにつながると思い、「私の進むべき道は、眼科しかない!」と思いましたね。
医師としてのモットーを教えてください。
モットーは「すべては患者さんのために」。患者さんのお話をよく聞き、ご要望を一生懸命考え、その方にとって適切な道を探すことができるように心がけています。診療方針を決めたら、できるだけ丁寧に説明します。医師からの押しつけではなく、患者さんと一緒に考えて治療していくというスタンスです。現実として、患者さんのご要望と医師として適切だと考える医療が異なることも少なくありません。例えば、手術しないと失明しかねない状況でも、「もう80歳だから、そんな大変な思いをしてまで手術を受けたくない」と思う方もいらっしゃるでしょう。医療として正しい治療でも、その方にとっては必ずしも正解ではないのです。だからこそ一人ひとりの患者さんの気持ちをくみ取って、最善の道を探していける医師でありたいです。私は患者さんとコミュニケーションが取れる、この仕事が大好きです。もう若くはありませんが、生涯現役でいたいと思っています。
診療の際に心がけていることは?
眼科は五感の中でも情報量が多い視覚の問題を解決するための領域ですが、眼科医療に詳しい患者さんは多くはありません。ですから、わかりやすい説明を心がけています。具体的には視覚的に理解できるように画像を用いて、なるべく専門用語を使わずに、誰にでもわかるような言葉を選びます。そして、患者さんには納得感を持って、治療を受けてもらいたいと考えています。そのためにも一人ひとりの患者さんと向き合う時間を、できるだけ長くしたいと思っています。ただ、ついつい診療時間が長くなりがちで、スタッフにもはらはらさせてしまっているのではないかと反省することもあります。患者さんを少しお待たせしてしまうこともあるかと思いますが、このスタンスは守っていきたいので、ご理解いただけると幸いです。
心優しいスタッフとともに、眼科のハードルを下げる
患者さんの特性や、かかりつけ医としての役割を教えてください。
この地域は子どもから高齢者まで、多くの年齢層の人が暮らしています。開院当初は高齢の患者さんが多かったのですが、時とともに若い方も多くなってきました。仕事帰りのビジネスパーソンをはじめ、勤務医時代から私を頼ってくれている方、遠方にお住まいの方まで、いろいろな方が来てくださっています。当院にはまだホームページがありませんが、新しい患者さんに来院いただけるのは素直にうれしいです。また、眼科医療の窓口として、検査から治療、手術まで、私にできることは全力で取り組みます。そして、より精度の高い検査や手術が必要な際には、専門的な医療機関へご紹介しています。かかりつけ医として、一人ひとりの方に適した道を提案させていただきます。
スタッフはどんな方が多いですか?
スタッフはみんな「良い人たち」です。いつも明るく、一生懸命働いてくれています。医療的なスキルはもちろん、コミュニケーション能力も高く、患者さんも安心されているようです。先ほど申し上げたように、私はついつい診療時間が長くなりがちで、患者さんをお待たせしてしまうこともあるのですが、そんな時も気を利かして患者さんに配慮してくれています。私に対しても、時に厳しく指摘してくれる良い関係です。開業以来、新米院長の私を支えてくれています。そして「もなみ」の院名のとおり、患者さんはもちろんスタッフへの感謝も忘れずに、働きやすい環境をつくっていくのが私の役割だと思っています。
読者にメッセージをお願いします。
日本人の失明原因1位の緑内障は中期まで進行して、初めて自覚症状が出ますので、初期のうちは気づかずに生活している方がほとんどです。つまり、発症していない初期段階で進行を止めることを図れば、支障を感じることのない生活につなげられます。多くの場合手軽な検査で診断できますので、40歳を過ぎたら症状を感じなくても、一度眼科で検査を受けていただきたいですね。また、眼科というと怖いイメージを持つ方も少なくありませんが、当院は不安や苦痛を軽減する診療を心がけています。優しいスタッフばかりですので、目に違和感がある時は怖がらず気軽にお越しください。