米倉 悦子 院長の独自取材記事
米倉胃腸科クリニック
(各務原市/鵜沼宿駅)
最終更新日:2024/05/14

岐阜県各務原市で40年以上、地域医療に力を尽くしてきた「米倉胃腸科クリニック」は、胃がんや大腸がんなどの早期発見、早期治療のために内視鏡検査に力を入れている。父である前院長の引退により2024年4月にクリニックを継承した米倉悦子院長は、胃と大腸の内視鏡検査を数多く経験してきたベテラン医師でありながら、休診日には他の医療機関で診療し、知識のアップデートを続ける。「来て良かった、また来ようって思ってほしい」という一心で、丁寧でわかりやすい治療説明や検査中の声かけに努めるそうだ。その言葉の端々に明るく朗らかな人柄が見える。そんな米倉院長にクリニックの特徴や内視鏡検査にかける思いを聞いた。
(取材日2024年4月10日)
内視鏡検査で早期発見し、基幹病院との架け橋に
初めにクリニックについて教えてください。

当院は父が胃腸外科として開業しました。そのため胃腸関係の疾患の患者さんがもともと多いクリニックです。それ以外には高血圧症や糖尿病、脂質異常症、風邪などの一般的な内科疾患にかかっている方も来てくださっています。内視鏡検査に力を入れていて、できる限り早期の段階で、胃がんや大腸がんなどを発見し、基幹病院との架け橋になれるといいなと考えています。月、火、木、金、土曜日の午前9時から胃内視鏡検査、土曜日以外は午後1時半から大腸内視鏡検査を行っています。働いている方は土曜日の受診を希望されることが多いですね。当院では治療が難しい大きな病気が見つかった場合には、基幹病院へご紹介しています。その後、治療がきちんと進んだら、普段の診療は当院がなるべく担当し、その後もしかるべき時には大きな病院へ紹介するといったやりとりをスムーズにできるよう心がけています。
胃と腸の内視鏡検査に力を入れていると聞きました。
胃の内視鏡には、鼻からカメラを挿入する経鼻内視鏡と口から挿入する経口内視鏡の2つの検査方法があります。大腸は一般的な大腸内視鏡検査と、内視鏡を使ったポリープの切除をできる範囲でやっています。胃の内視鏡の場合、食道がんや胃がん、まれに十二指腸に腫瘍ができることもあるので、それらの腫瘍を見落とさないように努めています。胃炎や食道炎といった良性の病気の発見につながる方もいらっしゃいますね。また、胃がんのリスクを上げるピロリ菌の検査と治療も対応しています。昔ほど内視鏡は太くないですし、しなやかになったため以前ほどつらくありません。しかし緊張が怖さを呼んでしまうこともあると思いますので、検査中はなるべく声かけするようにしています。「ちょっと狭いところを通りますね」など声をかけると、自分の身に起きていることが異常ではないと理解していただけるので、安心して検査を受けていただけるかなと思っています。
どのような症状があれば検査したほうがいいのでしょうか。

いろいろありますが、胃が痛い、胃がもたれる、食欲がない、胸が焼ける、食べたものが胸にしみるなどの症状がある方は、検査をお勧めしています。内視鏡検査で食道がんや胃がん、食道炎、胃炎や胃・十二指腸潰瘍などが見つかるケースもあります。無症状で検診に来た方でもいろいろな病気が見つかる可能性もあります。食道がんや胃がんなどの悪性疾患では症状が出てしまってからでは、病気が進行しているケースも考えられますので、元気であまり自覚症状がないうちに、その人に合ったスパンで検診を受けていくことが必要ですね。 自治体の補助もうまく活用してほしいです。病気を早期発見することで、患者さんの将来を変えることにもつながります。疾患が進行した状態で発見されると、大がかりな治療が必要になったり、再発などのリスクも高まります。早期に病気を見つけることで、その方の将来の生活の質が落ちないような診療をお届けしたいと思っています。
休診日には市中病院で知識をアップデート
医師をめざし、消化器内科を選んだ理由を教えてください。

当院は昔は有床診療所だったので、父は救急車を受け入れたり、がんの患者さんの手術をするなど、朝から晩まで頑張って働いていました。父がやりがいを持って働いている姿は輝いて見えたので、「医師の仕事っていいな」と自然と思うようになりました。私の盲腸の手術をしてくれたのも父で、私自身も患者として当院にお世話になりました。消化器内科を選んだのは父の影響もありますが、学生時代に臨床実習でいろいろな診療科を回った時、当時の日本ではがんの中でも胃がんと大腸がん、肝臓がんで亡くなる方が多く、1人でも多くの患者さんの力になりたいと一生懸命に検査・治療している先輩医師を見て、そこに携われるといいなと思ったからです。 大学卒業後は、2006年に父のもとに戻るまで、ずっと消化器内科で研鑽を積んできました。
週1日、他の病院で内視鏡検査をしていると伺いました。
休診日である水曜日に市中病院へ行き、1日内視鏡検査に携わっています。日頃1人で診療していると、少し不安になることもあります。その病院には消化器以外の専門の医師や消化器でも経験を積んだ医師がいるので、当院で見つかった症例を相談することもあります。他の診療科の疾患について詳しい医師からアドバイスをもらうこともありますね。やはり私は胃腸内科の診療が好きですが、他の領域も勉強するようにしています。専門の医師たちの意見は診療に役立っています。ディスカッションや意見交換で気づかされることもあり、また多くの症例を経験させていただいています。私にとっては楽しい水曜日。非常にいい時間を過ごさせていただいてます。
医師としてのモットーや、患者さんに向き合う際に意識していることはありますか。

患者さんが元気に通院し、穏やかに生きていただくことが一番の診療の目標です。 「お変わりないですか」と聞いた時に「変わりなくやっています」と言ってもらえると、本当に良かったと思います。予約制ではありますが、具合が悪いと電話があれば臨機応変に対応するようにしています。患者さんと接する際には、なるべくわかりやすい説明をしようと心がけていますね。患者さんにとって聞き慣れない言葉で説明すると、理解できないまま帰ってしまう可能性も考えられますので、なるべくそういったことのないように、わかりやすく写真などをお見せしながら説明しています。
専門性を生かしながら診診連携
医師のやりがいはどのような時に感じますか。

やっぱり病気の発見につながった時はうれしいですね。特に胃がんや大腸がんの早期発見に導くことができ、適切な医療機関を紹介できると本当に幸せだと思います。また術後お元気に生活されている姿を見ると、とてもうれしく思います。病気を消化器に限らず、広いフィールドで見つけて、患者さんのより良い生活に導けるような診療が理想ですね。
他の医師との連携も大事にされていると聞きました。
患者さんの不安を取り除くことが大事だと思うので、気になる症状があり、当院では解決できない場合は、「ちょっと大きい病院に行ってみましょうか」と声をかけます。「診診連携」といって、近くのクリニックの詳しい医師にお願いすることもあります。高齢になると施設に入るという選択肢を取られる方もいますので、入所の際には施設の医師と患者さんの情報を共有しています。これまでの病歴や検査内容などの細かいデータを提供することで、私以外の医師にかかるときでも、その先生に患者さんのことをスムーズに理解してもらえるように、なるべく細かく手紙を書くようにしています。年を重ねると複数の診療科に通っている方も多く、基幹病院の医師や近くの診療所の医師たちと協力していかないと難しい仕事なので、これからも連携は大事にしていきたいと思っています。
最後に地域の方へメッセージをお願いします。

ちょっとした相談でも来ていただければありがたいです。不安がある方やそろそろ健康診断を受けようと思っている方は、お声がけください。大腸がんと胃がんは、日本人のがんによる死亡数の大きな割合をいまだに占めています。ただ、消化器の中では膵臓がんや胆管がんなどは、早期で見つけるのがなかなか難しかったり、見つけた時には比較的病状が進行していたりする場合もあります。反対に胃がんや大腸がんは市町村や職場の検診などを上手に活用して早く見つかれば、比較的予後が良く根治治療が見込めます。早期発見、早期治療につなげることで、何事もなかったかのように元気に日々暮らしてもらえるようになるといいなと思っています。