加藤 隆 先生の独自取材記事
かとう泌尿器科・内科クリニック
(岐阜市/岐阜駅)
最終更新日:2025/04/21

岐阜駅から程近い場所にある「かとう泌尿器科・内科クリニック」は、泌尿器科と内科を掲げる地域のかかりつけ医である。祖父、父が長年にわたり地域に根差した診療を続けてきた歴史ある同院を、3代目である加藤隆院長が2025年1月に継承した。加藤院長は、これまで基幹病院の泌尿器科において数多くの手術を経験してきたキャリアを持つ。その経験を生かし、同院では前立腺肥大症の日帰り手術を新たに導入するなど、地域における治療の選択肢を広げることに尽力している。また、男性だけでなく、女性や小児の泌尿器疾患の診療経験も豊富。「気になることがあれば、気軽に相談してほしい」と爽やかな笑顔で語る加藤院長に、新体制となった同院の診療方針や地域医療への想いについて、その抱負とともに話を聞いた。
(取材日2025年2月5日)
父が築いてきた信頼とともに、地域医療に尽力したい
歴史ある医院を継承された経緯をお聞かせください。

当院は祖父の代から地域に根差した医療を提供しており、父も長年診療を続けてきました。私はもともと日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院に勤務していましたが、一時的に緊急で診療に入ることになりました。その後、父は回復しましたが、体力的な負担が見えてきたこともあって、将来的に継ぐことを意識するようになりました。病院での勤務と並行しながら週に1~2回ほど当院を手伝っていましたが、父の状況を考え、より早いタイミングで継承したほうが良いと判断しました。病院側にも事情を理解していただき退職し、2024年4月から正式に当院に入り、父とともに診療をしています。
お父さまと二人三脚での体制になり、あらためて学ばれたことはありますか?
これまで父が築いてきた信頼の大きさを日々実感しています。私は泌尿器科が専門ですが、当院は内科・泌尿器科のクリニックであり、特に内科の患者さんは地域のご高齢の方が多いです。内科の診療についてはまだ学ぶことも多いので、父に相談しながら診療を行っています。また、父は単に病気を診るだけでなく、患者さんの家族や人生にも深く関わり、責任を持って向き合う姿勢を大切にしています。その姿を見て、私自身もそういう医師になりたいと強く思っています。
基幹病院と地域医療では、患者さんとの関わり方にも変化があるのですね。

病院勤務時代はどうしても外来の時間が限られ、病状の説明が中心でした。しかし、現在は父と2人体制で診療を行い、患者さん一人ひとりとじっくり向き合えるようになりました。病気だけでなく生活背景にも目を向けることで、より深い関係を築けるようになり、毎日が充実しています。また、当院には、生活習慣病の治療など、内科のかかりつけ医として利用くださる患者さんも大勢おられます。中には祖父の代からずっと当院を頼って通ってくださっている患者さんもいらっしゃって、地域に根差した医療の大切さをあらためて実感しています。
泌尿器科の先生が2人体制となり、患者さんも喜ばれているのでは?
そうであればうれしいですね。当院で対応できる手術はそれほど大きなものではありませんが、日帰り手術も泌尿器科専門の医師が2人体制で行うため、安心していただけるかもしれません。泌尿器の分野については、それぞれの医師が一人で診療できますが、治療方針を確認することもありますし、難しい症例の場合には互いに相談するようにしています。
日帰り手術や小児の診療など、豊富な経験を地域医療へ
得意な治療は何でしょうか?

勤務していた日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院では、ロボット手術や腹腔鏡手術を中心に多くの手術経験を積んできました。現在も週に1回、近隣の総合病院で腹腔鏡手術の指導を行い、自ら執刀することもあります。また、当院では高度な手術を行うことはできませんが、適切に診断し、必要な場合は専門の医療機関へ紹介することが重要な役割ですし、場合によっては、指導に行っている総合病院で私自身が手術を担当することもあります。今後もこれまでの経験を生かし、クリニックと病院の連携を深めながら、患者さんにとって最適な治療を提供できるよう努めていきたいと考えています。
日帰り手術も可能になったそうですね。
そうですね。これまでの経験と当院の手術室を生かして治療の幅を広げたいと考え、WAVE治療(経尿道的水蒸気治療)を導入しました。これは前立腺肥大症に対する日帰り手術の一つで、入院が難しい方や、投薬の影響で従来の手術がリスクの高い方にも対応できる治療法です。従来のレーザーや電気メスを用いた手術は確実な方法ですが、手術時間が長く、出血や入院の負担が大きくなります。「入院が難しい患者さんにも手術の選択肢を提供したい」という思いが導入の大きなきっかけになりました。ただし、前立腺肥大症の手術にはさまざまな方法があり、患者さんの状態に応じた適切な選択が重要です。前立腺の大きさなどを考慮し、必要に応じて周囲の病院と連携することもありますし、さまざまな選択肢の中で患者さんにとって負担の少ない方法を提案していきたいですね。
小児の治療経験も豊富だと伺いました。

日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院は特に女性泌尿器科の治療に力を入れている医療機関でしたが、その前に勤務していた名古屋の中京病院では、小児泌尿器科の診療に携わっていました。中京病院は小児泌尿器科の分野で知られている病院で、そこでの経験を通じて、小児のおねしょ(夜尿症)や先天性疾患などにも対応できる知識と技術を培ってきました。当院では現在、大人の泌尿器科診療が中心ですが、私の経験を生かし、小児泌尿器科にも対応できるよう取り組んでいきたいと考えています。特に、小児の泌尿器科疾患で多いのは夜尿症や、男の子に見られる亀頭包皮炎などです。今後は、これらの診療にも力を入れ、地域の患者さんに幅広く対応できるよう努めていきたいと思っています。
患者に寄り添い、安心できる医院をめざして
デリケートな相談も多いかと思いますが、診療で大切にされていることは何でしょう。

やはり「寄り添う」ということじゃないでしょうか。泌尿器科は受診のハードルが高いと感じる方が多く、本当に困っていることを話しづらい場合もあります。そのため、患者さんが気軽に相談できる雰囲気をつくり、距離感を大切にすることを心がけています。昔の医師のイメージは厳格で、患者さんが聞きたいことを遠慮してしまうこともあったかもしれません。しかし、今はそういう時代ではなく、親身になって話を聞いてくれる医師のほうが、患者さんにとっても満足度が高いと思いますし、信頼関係の構築にもつながると私は考えています。実績が少なかった若手の頃は、貫禄よりも「患者さんのために一生懸命やる姿勢」だけが武器でした。そのスタイルは今も変わらず、患者さんが安心してなんでも話せる存在でありたいと思っています。悩みを抱え込んで症状が悪化する前に気軽に受診してもらえるよう、寄り添う診療を大切にしていきたいですね。
やりがいを感じるのはどんな時ですか?
医師をめざしたきっかけは、父の姿を見て育ったことが大きいのですが、泌尿器科を選んだ理由は、手術への憧れと、幅広い診療領域に魅力を感じたからなんです。泌尿器科は外科的な手術もありながら、排尿障害や前立腺がんなど、多くの患者さんが抱える問題に対応できる分野です。特に、排尿障害は毎日の生活の質に大きく影響するので、「尿がスムーズに出るようになった」「カテーテルなしで生活できるようになった」など、患者さんに喜んでいただくことを目標に治療を行います。そして、自分の治療が患者さんだけでなく、患者さんを介護しているご家族の悩みや負担の軽減につながれば、それは大きなやりがいとなります。患者さんやそのご家族の生活の質を向上させることができるこの仕事に誇りを感じています。
今後の抱負と、読者へのメッセージをお願いします。

泌尿器科は「受診のハードルが高い」と感じる方も多いかもしれませんが、当院は内科も併設し、風邪のような症状でも気軽に来ていただけるクリニックです。泌尿器の悩みについても、あまり構えずに相談してもらえたらと思います。スタッフも含め、リラックスできる雰囲気づくりを大切にしているので、「ちょっと気になることがある」「相談だけしたい」という方も、ぜひ気軽に足を運んでください。地域の皆さまにとって、安心して通えるクリニックをめざし、これからも精いっぱい努めていきたいと思っています。