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谷川 聖明 院長の独自取材記事

谷川醫院

(富山市/大町駅)

最終更新日:2022/04/06

谷川聖明院長 谷川醫院 main

富山地鉄市内線・大町駅から徒歩1分に位置する「谷川醫院」は、漢方薬の処方をはじめとする和漢診療を熱心に行う内科のクリニックだ。院長の谷川聖明(たにかわ・きよあき)先生は1990年に富山医科薬科大学医学部を卒業後、同大学の和漢診療部へ入局。内科の医師として経験を積み、日本内科学会総合内科専門医を取得した後、漢方薬をはじめとする和漢診療学を学び、1998年には同大学大学院で医学博士を取得した。その後、市立砺波総合病院で東洋医学科医長、健診部門の部門長を務めた後、2006年に同院を開業。漢方治療を希望するさまざまな主訴の患者を診療してきた経験を生かし、現在は日本東洋医学会漢方専門医として、診療の傍ら後進の教育にも熱心に取り組んでいる谷川院長に、開業までの経緯や和漢診療の特徴について語ってもらった。

(取材日2022年3月3日)

漢方薬をはじめとする和漢診療に従事

まずこの地に開業するきっかけから教えてください。

谷川聖明院長 谷川醫院1

この地に開業することになったきっかけは、同じ富山医科薬科大学(現・富山大学医学部)の和漢診療科の先輩とのご縁ですね。その先輩は、もともと13年間ここで漢方薬を専門とするクリニックを経営していたのですが、事情があって関東に移ることになり、その時私に「このクリニックを継承しないか?」と声をかけてくれたのです。その頃、私は市立砺波総合病院の東洋医学科で勤務していたのですが、漢方薬の専門施設を継承できるのは喜ばしいことだと感じ、このお誘いを引き受けることにしました。今でも以前の先生が診療していた患者さんが多く受診されていますよ。

患者さんの特徴や主訴はなんですか?

受診される方のほとんどは、漢方薬の処方を望んでいらっしゃいます。例えば、今飲んでいる西洋医学の治療薬を漢方薬に変えたいという方や、西洋医学では治療法の確立していない病気を抱えている方、どの病院に行っても診断がつかず困っている方などが多いです。年齢層としては0歳から100歳近い方まで幅広いですね。お子さんの場合、アトピー性皮膚炎や喘息でお悩みの方が多く、高齢の方だと多臓器にわたる病気をお持ちで、治療薬の数を減らしたいとおっしゃる方が多いです。また患者層として最も多いのは30〜50歳代の女性です。この年齢層の女性は月経があり、体調不良や不妊などに悩まされることが多いほか、社会的にも仕事や育児、親の介護などさまざまな負担を抱えており、苦労されている方が少なくありません。漢方薬には月経困難症や不妊症、更年期障害などにアプローチできるものが多いため、一人ひとりの状況に合わせた薬を処方しています。

先生ご自身が和漢診療を専門とした理由をお聞かせください。

谷川聖明院長 谷川醫院2

もともと「全身を診る分野に進みたい」という思いがあったため、学生時代は小児科に進むことを検討しました。しかし実際に小児科を経験してみると、子どもが亡くなることに強いショックを受けてしまい、精神的に耐えられなかったんです。そこで出身大学にあった和漢診療科の存在を意識するようになり、「和漢診療なら、その人全体を診る診療を勉強できるかもしれない」と思い、和漢診療の道に進むことを決意しました。同大学の和漢診療科では、最初の4年間で現代の西洋医学について学び、まずは内科の医師としての基礎を勉強します。その後に漢方薬などの和漢診療について詳しく学べるので、西洋医学と東洋医学の両方を学べることが特徴ですね。和漢診療では内科はもちろん、整形外科・皮膚科・婦人科・小児科などさまざまな領域に関連する病気を診るので、図らずも進みたかった小児科の気分も味わえて「選んで良かったな」と思います。

患者の本質に迫った医療を提供

こちらの診療の流れについて教えてください。

谷川聖明院長 谷川醫院3

和漢診療では、患者さんの体調や症状だけでなく、生活環境や抱えている問題など、人生全体についてお話を伺うことが大切です。そのため当院では初診時1時間ほど時間をいただき、看護師による30分程度のヒアリングの後、私が30分程度の診察を行い、その方に合わせた治療薬を処方します。治療薬を検討する際は、西洋医学と東洋医学の両方の視点から、その患者さんに合った薬を処方しています。ですから、漢方薬だけで治療ができるケースもあれば、西洋医学の治療薬と漢方薬を組み合わせて治療するケースもあります。2回目以降の診療では、治療薬が体に合っているかどうかなどを伺い、治療薬の調整を行います。漢方薬の場合、2週間〜1ヵ月程度続けていただければ、体に合っているか判断できることが多いですね。

漢方薬にはエキス剤と煎じ薬があると伺いました。

はい。漢方薬には顆粒や錠剤になっているいわゆる「エキス剤」と、生薬を水で煮出して自分で作る「煎じ薬」があります。近年、漢方薬といえばエキス剤が処方されることが一般的ですが、当院では患者さんの状況や希望に合わせて処方できるよう、エキス剤も煎じ薬もご用意しています。とはいえ、煎じ薬は自分で煎じる手間があるので、当院でも多くの患者さんがエキス剤を希望されますね。ただ、煎じ薬は一人ひとりにオーダーメイドで生薬を組み合わせた処方ができるので、より体に合ったものを提供しやすいという利点もあります。そのため当院では、患者さんの体の状態によっては煎じ薬をお勧めすることも。漠然と「煎じ薬は保険適用ではない」と思っている方も多いのですが、医療機関で処方する場合にはエキス剤同様保険適用なので、費用についてはあまり心配しないでいただきたいですね。

先生が思う和漢医療の特徴について教えてください。

谷川聖明院長 谷川醫院4

和漢診療にはさまざまな魅力がありますが、私が思う一番の魅力はその人の本質に迫った医療が提供できるところですね。西洋医学では症状に対して治療を行う「対症療法」が一般的ですが、和漢診療ではその人の背景に合わせて漢方薬を選んでいきます。患者さんの気持ちや置かれている環境を十分に聞き出して、治療に落とし込むところまでが診療なので、私自身、患者さんがなんでも話せるクリニックをめざしています。また、漢方薬の魅力としては体と心両方に働きかけることが挙げられます。1つの漢方薬にさまざまなポテンシャルがあるので、それをよく理解して、薬がポテンシャルを発揮できるようなかたちで処方することを心がけています。病気の治療だけでなく、病気になる前から体のメンテナンスに役立てられるのも漢方薬の魅力の一つですね。

和漢医療を後世に伝えていきたい

先生は後進の育成にも力を入れていると伺いました。

谷川聖明院長 谷川醫院5

はい。私は和漢医療という伝統医学を後世に伝えていきたいという思いがあり、後進の育成にも力を入れています。10年ほど前から京都大学医学部附属病院で漢方の診療を受け持っているほか、2016年には京都大学医学部附属病院特任病院准教授に任命していただき、診療だけでなく医学部4年生に向けた講義も行っています。そこで和漢診療に興味を持った学生が、当院に見学に来ることもあります。これからも医師として、患者さんを診る診療と後進の育成、そして研究の3つを両立させ、和漢診療の歴史を守っていきたいと思っています。

今後特に力を入れて行きたい診療分野などはありますか?

今や国民の2人に1人ががんにかかる時代なので、がん診療に多面的に取り組んでいきたいですね。もちろん漢方薬でがんを治すことは困難です。しかし、抗がん剤の副作用を抑えたり、がん治療後の体調管理に役立てたり、患者さんの生活の質を高めたりする上で、漢方薬が果たせる役割もあると考えています。実際、当院にもがん治療中の患者さんや治療後の患者さん、再発してしまった患者さんなどさまざまな患者さんがお越しになります。皆さん不安や恐怖を抱えながら生活していらっしゃいますので、そのような方の体や心を漢方薬で少しでも癒やしていけるよう、今後も診療や研究に力を注いでいきたいですね。

最後に読者へのメッセージをお願いします。

谷川聖明院長 谷川醫院6

当院では、西洋医学と東洋医学を組み合わせ、患者さん一人ひとりに合わせた診療を行っています。漢方薬に興味のある方、体の不調でさまざまな医療機関を受診したものの、原因のわからない方、治療方法のない病気にお悩みの方など、体と心の健康にお悩みがある方はぜひお気軽にご相談ください。

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