伊東 秀樹 副院長の独自取材記事
野の百合クリニック
(逗子市/逗子駅)
最終更新日:2025/07/30

逗子駅から徒歩3分。故郷の地で専門医療を提供する伊東秀樹先生の原点は、高校時代に見た「国境なき医師団」の活動だった。「医療を通じた人助けの素晴らしさに衝撃を受けた」と語る伊東先生は、東邦大学医療センター大橋病院で10年以上リウマチ・膠原病診療に携わった後、地域医療への思いから「野の百合クリニック」の副院長に就任。大学病院と同じレベルの専門診療を、身近なクリニックで提供したいという思いで、関節超音波検査による精密な診断など、日本リウマチ学会リウマチ専門医として専門性の高い技術を駆使し、病気の早期発見・早期治療に注力する。さらに「リウマチを怖がらず、まず相談してほしい」と、患者の不安に寄り添う姿勢も印象的な伊東先生に話を聞いた。
(取材日2025年7月14日)
人助けへの思いから医師を志し、地元で専門医療を
医師を志したきっかけと、リウマチ科を専門に選んだ理由を教えてください。

高校生の頃、国境なき医師団や中村哲さんの活動をテレビで見て衝撃を受けたんです。医療だけでなく井戸を掘って水を提供するなど、困っている人の生活そのものを助ける姿に「医療を通じた人助け」の素晴らしさを感じ、医師を志しました。専門を選ぶ際は、幅広く内科を診られる総合内科診療を考えていましたが、専門性も必要だと考えて全身疾患であるリウマチを選択しました。リウマチは関節だけでなく全身に影響する病気なので、内科全般の知識が必要です。将来は地元に戻って地域医療に貢献したいと考えていたので、一般内科もリウマチも両方診られることがより多くの患者さんのお役に立てると思ったんです。
大学病院での経験を経て、逗子に戻られた経緯は?
東邦大学医療センター大橋病院で10年以上勤務し、リウマチ・膠原病の診療経験を積みました。その間、研究にも従事して博士号も取得。いつかは父が開業したこのクリニックに戻ることは決めていましたが、「プロフェッショナルな医療を一通り提供できる」という自信がついたタイミングで帰ってきました。幼稚園から育った逗子は「育てていただいた土地」。久しぶりに帰ってきた時、海の香りがして「帰ってきたな」と感じました。皆さん優しくて協力的で、医療に対しても提供しやすい環境です。現在は父と一緒に、リウマチ科を新しく加えて診療しています。
どのような患者さんが来院されていますか?

地域柄、ご高齢の方が多いですが、最近は若い方や小児の患者さんも増えています。一般内科では高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病から、喘息、アレルギー疾患まで幅広く診ています。リウマチ・膠原病では、大学病院から紹介されていらっしゃる方が増えていますね。また、私自身も3人の子どもの父親として地域で子育てをしており、小学校の校医もしているので、地域の健康ニーズをよく理解しています。現在は毎週月曜日の診療時間を夜7時まで延長し、働く世代の方も通いやすくしました。今後は夜7時までの診療の日を増やしていく予定です。
早期診断・早期治療で関節の変形を防ぐ
関節リウマチとはどのような病気でしょうか?

関節リウマチは免疫の病気です。本来ウイルスや細菌から体を守る免疫が、自分の体を敵と見なして攻撃してしまう自己免疫疾患の一つ。特に関節を中心に攻撃するため、放置すると関節の痛みが強くなり、最終的には関節が壊れて変形し、指が動かなくなることもあります。症状としては、朝の手のこわばりが特徴的です。起床時に数分から1時間ほど手がこわばったり、複数の関節が同時に痛むことが多いですね。「手と膝が両方痛い」など、関連のない複数箇所が痛む場合は要注意です。運動や外傷といった明らかな原因がないのに関節が痛む時は、リウマチを疑って早めに相談していただきたいです。
治療ではどのようなことを重視されていますか?
早期発見・早期治療が何より重要です。早ければ早いほど関節の変形や破壊を防げますし、最近のデータでは、治療開始が遅れると難治性になりやすいこともわかっています。治療は免疫抑制剤の内服薬や注射を使いますが、大学病院でなければできない治療はほとんどありません。適切な診察・検査を行えば、クリニックでも大学病院と同レベルの診療が可能です。当院では関節超音波検査にも力を入れています。これは対応している医師が限られている専門的な検査ですが、関節の炎症を詳しく評価できます。適切に治療すれば痛みの改善も図れますし、お薬もゼロにすることもめざせますので、怖がらずにまずは相談していただければと思います。
膠原病の診療についても教えてください。

膠原病もリウマチと同じ自己免疫疾患ですが、より多彩な症状が現れます。目や口の乾燥、顔の赤い発疹、口内炎の多発、関節痛など症状は多岐にわたります。特にシェーグレン症候群という目や口が乾く病気は、日常生活で「口が乾くな」と感じていても病気だと気づかない方が多いんです。実は膠原病を診ている医師はリウマチ以上に少ないので、遠方の病院に通っている方も多いと聞きます。当院では膠原病の診断・治療も行っていますので、原因不明の症状でお困りの方はご相談ください。「病気を診るのではなくて、人を診る」という姿勢で、患者さんの困っていることをすくい上げ、一緒に改善していきたいと考えています。
継続的な診療で患者の人生を支える地域医療を
大学病院と比べた際のクリニックの強みは何でしょうか?

クリニックの強みは、一人の医師が継続して診療できることです。リウマチや膠原病は長期間の経過観察が必要ですが、大学病院では医師の異動で担当が頻繁に変わってしまいます。触診結果や痛みの訴え方など、カルテでは伝えきれない対面でしか掴めない情報が診療には重要なんです。私は水曜日に大橋病院、木曜日に大船中央病院でも外来を行っているので、入院が必要な場合はスムーズに連携できます。また以前、リウマチで間質性肺炎を合併した重症患者さんを担当した経験から、合併症の早期発見と病院連携の重要性を痛感しています。地域のクリニックで専門性の高い診療を継続的に受けられる意義を、多くの方に知っていただきたいです。
今後の展望について教えてください。
まず診療時間を延長して、働く世代の方も通いやすい環境を整えたいです。現在は月曜日のみ夜の7時までですが、今後は夜7時まで診療する曜日を増やす予定です。地域の救急センターが夜8時からなので、その間の空白時間を少しでも埋められればと考えています。また、アレルギー患者さんも増えているので、舌下免疫療法などアレルギー治療にも力を入れていきます。「できるだけ患者さまがご希望されたものは、広げていきたい」と思っています。逗子は高齢化が進んでいますが、若い世代の方の移住も増えてきているようです。医療体制がしっかりしていることをアピールして、逗子の発展に貢献したいですね。
読者へのメッセージをお願いします。

関節リウマチというと「怖い病気」「治らない」というイメージをお持ちの方が多いですが、適切に治療すれば痛みを取り除くことやお薬をゼロにすることもめざせます。ただし、それには早期受診が大切です。朝の手のこわばりや複数の関節の痛みなど、少しでも当てはまる症状があれば、怖がらずにまず相談に来てください。「違いますよ」と言えることもありますし、早期治療も開始できます。リウマチ・膠原病で遠方の病院に通っている方も、地元で大学病院レベルの専門診療が受けられることを知っていただきたいです。一般内科も同じくらい力を入れていますので、地域のかかりつけ医として、どんな症状でもまずご相談ください。患者さんの気持ちが少しでも楽になるよう、これからも努力していきます。