上嶋 亮 院長の独自取材記事
かみじま内科クリニック
(小田原市/小田原駅)
最終更新日:2025/09/24

小田原駅から程近い「かみじま内科クリニック」。優しい口調で理路整然と説明する上嶋亮院長は、どんな質問にもわかりやすく答え、患者の小さな話にも耳を傾ける。聖マリアンナ医科大学で弁膜症カテーテル治療の指導も行った日本循環器学会循環器専門医でありながら、「医療の玄関口になりたい」という思いから、あえて循環器をクリニック名から外し、内科全般を幅広く診る道を選んだ。多くの患者から「なんでも話せる、相談しやすい」と親しまれている上嶋院長。地域のかかりつけ医として、基本的に受診希望者を断らない方針で、「外国人患者にも翻訳ソフトを駆使しながら、お互いさまの精神で対応しています」と話す。そんな上嶋院長に、専門性と総合診療の両立、そして地域医療への思いについて話を聞いた。
(取材日2025年8月28日)
循環器の専門家から「医療の玄関口」への転身
お父さまのクリニックを継承し、リニューアルされた経緯を教えてください。

父が1992年に「上嶋内科循環器クリニック」として開業し、私も循環器内科医として大学病院で専門性を磨いてきました。ただ、医院を継承した際、あえてクリニック名から「循環器」を外し、ひらがなの「かみじま内科クリニック」にしたんです。専門性に特化したクリニックというより、内科全般をなんでも診る、地域の人が困ったら取りあえずここに相談しようと思ってもらえる場所にしたかったんです。私はよく「医療の玄関口」という言葉を使います。ここで解決できる問題は私が解決し、専門分野から外れる部分でも診断をつけて適切な専門の医療機関につなぐ、そんな役割を担いたいと考えています。父の体力的な限界もあり継承のタイミングでしたが、次の挑戦をするなら若いうちにと思い、このタイミングが背中を押してくれたと感じています。
循環器の道から、なぜ総合内科診療へかじを切ったのですか?
新米医師時代に出会った心臓弁膜症の患者さんがきっかけで循環器に進みましたが、当時は重症の弁膜症は外科手術しかなく、高齢で手術できない患者さんも多かったんです。ちょうど私が循環器内科医になった頃に弁膜症のカテーテル治療が始まり、新しい治療の可能性にとても感動したのを覚えています。それを機に弁膜症のカテーテル治療を研鑽。その後、後進の指導にもあたりました。しかし、循環器専門医として専門性を追求しながらも、根底にあったのは、患者さんとの対話で診療したいという思いでした。実は高校時代、心理学に興味を持ち、精神科の医師をめざしていた時期もあったんです。私は外来が大好きで、最終的には開業して患者さんと向き合いながら治療していくことを理想としていました。
「患者を断らない」という方針だそうですね。

はい。基本的に当院を受診したいという人をお断りすることはありません。電話で相談があって、明らかに別の診療科のほうがいいというとき以外は「まずは一度お越しください。こちらで解決できなければ、信頼できるところをご紹介しますので」と伝えています。内科を掲げて開業している責任だと思うんです。外国人の患者さんも非常に多く、旅行中に発熱した方なども来られます。保険を持っていないと敬遠されがちですが、自分が海外旅行中に具合が悪くなって、つっけんどんにされたら嫌じゃないですか。お互いさまの精神で、翻訳ソフトや筆談を駆使しながら診療しています。高校生以上なら誰でも診ますし、健康上の不安があればまず相談してもらえる、そんな存在でありたいと思っています。
循環器専門医の強みを生かした予防医学
生活習慣病や未病対策にどのように取り組んでいますか?

長年循環器を専門に診てきた医師として、生活習慣病対策は非常に重要だと考えています。生活習慣病を放置すれば将来的に循環器疾患や脳血管疾患につながりますから。健診で引っかかって来院される方も、なかなか薬の必要性が伝わらず首を縦に振ってくれないことがあります。そこで、わかりやすいデータやグラフを見せて「今がここで、このままいけばこうなる可能性が高い、でも治療すればこうなります」と時間をかけて説明します。特に力を入れているのが睡眠時無呼吸症候群の治療です。単にいびきや日中の眠気だけでなく、放置すると心臓や血管疾患につながるというデータがあるので、そこを見据えた治療だということを必ず患者さんに伝えてから始めています。患者さんの理解は治療のモチベーションにもつながると考えています。
エコー検査に特に自信があると伺いました。
心臓弁膜症を専門にしていたので、エコーは必須でずっと勉強してきました。心エコーには自信があり、丁寧に検査を行うことを心がけています。エコーは患者さんに害のほぼない検査で、放射線被ばくもありませんから、開業医の武器だと思っています。心臓だけでなく、おなか、甲状腺、頸動脈など、エコーで当てられるところは全部検査できます。循環器は血液循環を全部診る科なので、心臓を中心に全身を診る視点があります。循環器専門医であり、かつ日本内科学会総合内科専門医でもありますので、そこが私の強みですね。大学から検査専門のスタッフにも来てもらっていて、クオリティーの高い検査を提供できる体制を整えています。
診療で大切にしていることは?

患者さんとの距離感です。年上の患者さんが多いですが、きちんと敬語を使うことを心がけています。「最近どう?」より「最近いかがですか?」と聞くほうが良い印象を持たれますから。何より、患者さんから話してもらうことが重要です。オープンクエスチョンで「今一番困っている症状は何ですか?」と聞くと、いろんなキーワードが出てきて診断につながります。初診は特に時間をかけます。初診でしっかり聞き取っておかないと、その後なかなか聞く機会がなくなってしまいます。患者さんからは「先生だとなんでも話せる」と言っていただけることも多く、父の代から通う方も「お父さんは怖かったけど、息子さんは相談しやすい」と言ってくださることもあり、自分の性格を生かせているのかなと思います。
何でも気軽に相談できる地域医療の拠点へ
開業から約4年、患者層に変化はありましたか?

開業時は父から継承した高齢の患者さんがほとんどでしたが、最近は若い患者さんも増えてきました。先輩から「患者層は院長の年齢に近づく」と言われていたとおりです。現在は生活習慣病等の一般内科疾患が6割、循環器疾患が3割、呼吸器疾患が1割という内訳です。午前中は生活習慣病を抱えた高齢の患者さんが中心ですが、夕方になると20代30代の方、学校帰りの高校生も来院します。新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言の真っただ中での開業でしたが、急遽隔離診察室も作り、発熱症状にも対応してきました。訪問診療のニーズも非常に高く、循環器疾患を抱えて通院困難になった患者さんの訪問診療も行っています。地域の特徴として塩分摂取量が都心より多く、それが生活習慣病につながっている面もあるので、食事指導にも力を入れています。
今後の展望と課題について聞かせてください。
今、午前午後で日々多くの患者さんが来院され、とてもありがたく思っています。ただ、正直一人で診るキャパシティーの限界にきており、当院の理念を共有できる仲間が必要だと感じています。訪問診療も増やしたいのですが、このままではマンパワー的に難しい。ですので、まずはDXを活用し業務の効率化を図っていこうと考えています。将来的にもっと広い場所に移転できれば、心臓リハビリテーションや心肺運動負荷試験などにも取り組みたい。これは循環器領域でとても重要な分野ですから。現在も学校医や特別養護老人ホームでの診療、市民向けの講演会など地域活動をしていますが、時間の許す限り、地域の健康意識の底上げに貢献していきたいと思っています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

多くの人が何らかの不調を抱えていても、「これってどこにかかればいいの?」と悩む人は多いのではないでしょうか。医師である私たちでさえ、この症状をどの先生に診てもらうか迷うことがあるくらいですから。健康上の不安を抱えたまま過ごすのは精神衛生上も不健康です。当院は「医療の玄関口」として、とにかく困ったら一回気軽に相談してもらえる場所にしています。内科だから、循環器だからと思わずに、取りあえず困ったことがあったら相談しに来てください。きちんとお話を聞いて診察をして、必要なら適切な専門の医療機関につなぐアドバイスもできます。まずは不安を解消する第一歩として、お気軽にご相談ください。