篠田 知太朗 院長の独自取材記事
八重咲診療所
(平塚市/平塚駅)
最終更新日:2025/08/06

平塚駅から少し歩いた住宅街で50年以上にわたり地域に根づいた診療を続けてきた「八重咲診療所」。2025年4月に、前院長の松島孝雄先生から承継する形で篠田知太朗先生が院長に就任し、リニューアル開院した。東京慈恵会医科大学の同窓の縁で前院長の志を受け継ぎ、同校の建学の精神「病気を診ずして病人を診よ」を実践する診療を行っている。診療科目は、内科、外科、皮膚科、消化器内科、肛門外科。篠田院長は大学病院やその関連病院などで消化器がんの治療に長年携わってきた。その経験を生かし、胃・大腸の内視鏡も行える体制を整える。他にも、エコー、エックス線撮影、心電図、血液生化学検査などの機器もそろえ、幅広い内科の症状に対応可能だ。「町の保健室のような感じで、どんなことでも相談してほしい」と言う篠田院長に話を聞いた。
(取材日2025年6月18日)
50年以上の歴史あるクリニックを存続させるべく承継
今年、長い歴史のあるクリニックを承継されたそうですが、その経緯を教えてください。

前院長の松島孝雄先生は東京慈恵会医科大学の医局の先輩にあたり、50年以上前に開業され、地域に根づいた診療所をつくりあげ、80代後半まで診療を続けておられました。こちらに通っていらっしゃる患者さんのことを考え、承継できる医師を探されていた時に、大学のOB会長から私のところに話がありました。私はずっと都内の病院に勤務しており、この近辺で働いたことはありませんが、平塚に叔父が住んでいて、子どもの頃には七夕祭りなどによく遊びに来ていました。ご縁とお話をいただいたタイミングなどがうまく重なり、私が承継させていただくことになったという次第です。当院は平塚駅から徒歩12分ほどの松風町にありますが、以前は隣の八重咲町にあり、それが「八重咲診療所」という院名の由来です。松島前院長から、「この名前はできれば使い続けてほしい」というご希望があったので、院名もそのまま引き継がせていただきました。
篠田先生のそれまでのご経歴を教えていただけますか?
東京慈恵会医科大学附属病院および関連病院で消化器がんを中心に外科医として治療にあたっていました。消化器がんの中でも特に大腸がんの治療に多く関わりました。外科医ではありましたが、担当する患者さんの多くはご高齢の方で、がん以外の疾患も合わせて全身を診る必要がありました。それがこのクリニックでの診療に非常に役立っています。
クリニックを承継するにあたり、建物や内装のリフォームはされたのですか?

当院が八重咲町から松風町に移転して、この建物を使うようになってからはまだ14年くらいしかたっていないので、リフォームなどはせずにそのまま使っております。2階建ての一戸建てのとてもアットホームな雰囲気で、多趣味だった松島前院長がコレクションした蝶の標本や魚拓、絵画なども院内の壁に引き続き飾っています。松島前院長とともに診療を支えていたベテランのスタッフもそのまま残ってくれていて、さらにスタッフの人数を少しずつ増やしています。ご家族何代にもわたって、かかりつけ医として長く通院されている患者さんも多い地域に根づいたクリニックです。リニューアル開院といっても、以前とあまり変わらない感じで通っていただけていればいいなと思っています。
胃・大腸の内視鏡、血液生化学検査などの設備も充実
現在の診療科目を教えてください。

リニューアル前と同じく、内科、外科、皮膚科、消化器内科。そこに、私が大学病院などで外来を担当していた肛門外科を加えました。肛門外科とは、消化管の出口である肛門とそこまでつながっている大腸を専門とした診療科です。外科といってもここでは手術は行いませんが、小さな腫瘤やおできなどの除去、一般的なケガや巻き爪の処置など行っています。患者さんの受診科として圧倒的に多いのは、内科と皮膚科ですね。内科では生活習慣病の管理や風邪症状の方などがやはり多いでしょうか。精密検査や手術などが必要な患者さんに関しては、近隣の平塚共済病院、平塚市民病院などにご紹介しています。
胃・大腸の内視鏡の検査設備も完備しているとお聞きしました。
継承した時にリフォームはしませんでしたが、検査機器を一式入れ替え、胃と大腸の内視鏡検査ができる体制を整えました。がん検診でいらっしゃる方もいますし、胃や腸に何かしらの症状があって検査する場合ももちろんあります。入院を必要としないポリープの除去は当院でも行うことが可能です。私は大学病院で消化器がんの治療を専門にしていたので、その経験を生かして、早期発見に尽力していければと思っています。鎮静剤や鎮痛剤を適切に使用して検査時の不快感軽減に努めていますので、安心して検査を受けていただけると思います。
クリニックは2階建てですが、どのように使い分けていらっしゃるのでしょうか?

1階には診察室、処置室、エックス線撮影室があり、2階は内視鏡、エコー(超音波)、心電図などの検査室、点滴などをする部屋、スタッフの休憩室があります。発熱症状がある患者さんが来た場合は、2階の空いている部屋に隔離して検査をしています。検査機器に関しては、血液生化学検査の機器を導入しているので、血糖、HbA1cを含む血液検査の一般的な項目は、ほぼ当日に結果がわかるようになっています。
「町の保健室」として、患者の幅広い悩みに応える
先生が診療の際に心がけていることは何ですか?

当たり前ですけれど、患者さんの目をきちんと見て話すということと、よくお話を聞くということですかね。基本的には「町の保健室」みたいな感じで、皆さんからいろいろなことを相談されますからね。患者さんと話していると、整形外科と耳鼻咽喉科は患者さんがたくさんいて長時間待つことがあると。だから、「整形外科の先生に診てもらったほうがいいのか、診てほしい」と尋ねて来られる方もいます。「うちの専門じゃない」と突っぱねるのではなく、症状を診て、私ができる範囲でアドバイスをするようにしています。もちろん必要があれば、専門の先生の受診を勧めますよ。また、同時にいくつかの症状があって、何科にかかったらいいのかわからないようなときや、気になる症状があれば何でもご相談ください。
承継後に実際に診療に携わってみて、必要性を感じていることや今後取り組みたいことなどはありますか?
長く通ってくださっているご高齢の患者さんが多く、中には100歳に近い方もいます。これから超高齢の患者さんが増えてくると、通院が難しくなってくるため、ゆくゆくは訪問診療の体制も整えたほうがいいのかもしれないと思うこともあります。ただ、現状は私1人で診療している状態で時間的に無理なのですが、今後の課題として考えていきたいですね。
最後に、読者へのメッセージを教えてください。

松島前院長がご高齢になられてからは、診療時間を17時までにするなど、だいぶ診療時間が縮小されていました。リニューアル開院後は、診療時間も平日は18時までに延ばし、土曜日の診察も13時までにはなりますが復活しています。以前は他院にご紹介する形にしていた胃と大腸の内視鏡検査も当院内で受けていただくことが可能になりました。診療内容も幅広く、予約制にはしておりませんので、若い世代の方からご高齢の方まで、「町の保健室」として、気軽にご来院いただければと思っています。