石川 卓也 院長の独自取材記事
工藤内科クリニック
(横須賀市/追浜駅)
最終更新日:2025/08/27

追浜駅から徒歩5分、海の香りが漂う商店街の一角にある「工藤内科クリニック」。2025年6月に院長に就任した石川卓也先生は、「海の近くで昔ながらの診療所の雰囲気がある場所」を探し続けて、この38年の歴史を持つクリニックと出合った。糖尿病を専門に持ちながら、「糖尿病は全身の疾患だから全身の病気を診るジェネラリストであるべき」という恩師の教えを胸に、幅広い内科診療を実践。常に感謝の気持ちを大切に、予約制を取らず困った人がいればすぐに対応する地域密着型の医療を提供している。継承から2ヵ月で早くも地域に溶け込んでいるという石川院長に、診療への思いを聞いた。
(取材日2025年8月4日)
海辺の町で理想の診療所を継承
院長就任の経緯について教えてください。

医局を退局後、東戸塚記念病院で糖尿病センターを立ち上げ、一人部長として診療していました。患者さんを診ていくうちに、自分のクリニックで納得のいく医療を提供したいという思いが強くなりました。開業場所を探す際に重視したのは「海の近く」と「昔ながらの診療所の雰囲気」でした。工藤内科クリニックは開院38年の歴史があり、清潔感がありながら老舗の旅館のような雰囲気もある。「海が近いすてきな場所を見つけた」と直感しました。ちょうど後継者を探していたタイミングで前院長で現名誉院長の工藤英俊先生と折り合いがつき、継承に至りました。
医師をめざしたきっかけと糖尿病内科を選んだ理由は?
もともと研究職に就いて人のためになる成果を出したいと思っていました。しかし親から「医師という職業は研究もできて人のためにもなる」というアドバイスを受け、医学部を受験しました。初期の研修で、内科外科問わず幅広く携わる中で、糖尿病や内分泌の病気に興味を持つようになりました。その後、母校の大学病院で入局し高度な医療を、戸田中央総合病院で総合診療のように何でも診る内科診療を学びました。大島医療センターでは24時間体制で島民の健康を守るジェネラリストとしての経験も積みました。離島での限られた設備や人手の中で、どのような医療が可能かを考える貴重な機会となり、現在の診療に対する考え方の土台となっています。
追浜という地域で診療する魅力は何ですか?

通院されている患者さんは昔から工藤内科クリニックに来ている方が多く、家族みんな来られているケースも多いです。38年の歴史の中で築かれた信頼関係を感じますね。継承後はホームページを新しく開設し、若い方の受診も増えました。追浜は大きなスーパーマーケットや家電量販店など生活に必要なものが手の届く範囲にあります。一方で昔ながらのお肉屋さんやお豆腐屋さん、銭湯もあって、新旧が調和した魅力的な町です。スタッフの皆さんも追浜地域にお住まいで、患者さんと町内会でつながっていたりと、地域密着型を地で行っています。そんな温かい環境で医療を提供できることに喜びを感じています。
専門性を持ちながら、気軽に相談できるクリニック
糖尿病が専門と伺いましたが、診療ではどのようなことを心がけていますか?

糖尿病は多くの方が罹患している病気ですが、まだ受診に至っていない患者さんも多くいらっしゃると思います。私は糖尿病を専門としており、以前の勤務先で恩師より教わった「糖尿病は全身の疾患だから全身の病気を診るジェネラリストであるべき」という理念を大切にしています。インスリン導入やGLP-1受容体作動薬など新しい薬の使い分けは、専門だからこその治療だと考えています。一方で、糖尿病以外にも肺炎や尿路感染症といった感染症、喘息など幅広い内科疾患に対応しています。かかりつけ医として責任を持って将来にわたって健康サポートができるよう、知識と技術を生かして診療にあたっています。
発熱時の患者さんへの対応で心がけていることは?
発熱があってクリニックに来られる方は、生活習慣病と比べて「つらい」「今の症状をなんとかしてほしい」という切実な思いがあります。真夏や冬場の寒い時期はなおさらです。そのつらさを早く解消してあげたいという思いから、迅速的確な対応を最も重視しています。発熱患者さんが来院されたらすぐに把握し、インフルエンザやコロナの検査など時間のかかる検査は先回りして実施します。ロスタイムなく診察から会計まで移行できるよう工夫しています。発熱の症状があった場合、事前に電話をお願いしているのは、混雑状況をお伝えして立ったままお待ちいただかなくても良い状態でご案内したいという思いからです。また、症状によっては救急車を呼んだほうがいい場合もあるので、そういったアドバイスもしています。
予約制を取らない理由を教えてください。

これは工藤先生が提供していたスタイルを継承しています。私が考える古くからのクリニックの像は「地域に密着して、困った人がいればその求めに応じて医療提供する、相談に乗る、サポートする」という姿勢です。予約してないから今日は駄目ですというのは、このイメージからかけ離れています。困った人がいたら助けるという場所を、診療時間内であれば提供したい。継承当初は患者さんをお待たせしてしまわないか心配でしたが、想像以上にスタッフの連携が素晴らしく、患者さんも待つことなくスムーズに受診できています。また、呼吸器内科を専門とする工藤先生と、糖尿病内科を専門とする私、2人のスペシャリストにかかれることも強みだと考えます。予約なしでアクセスしやすい環境を維持することで、地域の皆さんが気軽に相談できるクリニックでありたいと思っています。
感謝を忘れず地域とともに歩む
診療で最も大切にしていることは何ですか?

感謝の気持ちです。大学病院の恩師から教わった言葉があります。「糖尿病は体に不調が出にくい病気だけれども、患者さんは医者を信じて薬を受け入れ、毎月受診してくれている。その信頼関係があって健康寿命の延伸につながる」と。皆さん待っているんだから感謝の気持ちを持って接しなければいけない。私は自然体でお話しすることを心がけ、怒ったり叱ったりせず、共感力を持って接します。例えば糖尿病の方が通院を中断してしまっても、きつい言葉で迎えるのではなく「どうされたんですか?」と理由を聞く。決めつけずにお話を聞くスタンスを大切にしています。
クリニックの強みと今後の展望を教えてください。
ベテランスタッフの方々との連携が素晴らしく、何も困ることなく診療できています。スタッフは皆さん追浜地域にお住まいで、患者さんとも顔見知りだったり町内会でつながっていたりと、地域密着型を地で行っています。今後は工藤内科クリニックをそのままの姿で提供し続けるという使命があります。それと同時に、糖尿病・生活習慣病により専門的な医療を提供するという目標もあります。診療に余裕があるので、地域で糖尿病の診療にお困りの方、どこの医者に行けばいいかわからない方の窓口になれればと思っています。
読者へのメッセージをお願いします。

これまでと変わらない工藤内科クリニックとしてあり続けたいと思っていますので、引き続きご受診いただければうれしく思います。生活習慣病や突発的な体調不良に関しては、基本的に予約なしで困った時に受診できる体制を整えています。ホームページなどをきっかけに見つけていただいた方も、ぜひご相談ください。糖尿病に関しては多くの方が罹患していますが、なかなか患者さんと医師との相性もあると思います。相性の合う患者さんが当院を見つけたり、こちらから発信して受診を促したりして、責任を持って将来にわたって健康サポートをしていきたい。質問があれば「なんでですか?」と聞いていただくことも大歓迎です。皆さまの健康を生涯にわたってサポートできることを楽しみにしています。