福山 聡 院長の独自取材記事
ふくやま耳鼻咽喉科馬堀院
(横須賀市/馬堀海岸駅)
最終更新日:2025/11/11
馬堀海岸駅から徒歩5分、子育て世代も多い静かな住宅地にふくやま耳鼻咽喉科馬堀院がある。2025年8月に継承開業した福山聡院長は、免疫学研究から高齢者医療、小児診療まで幅広い経験を持つ耳鼻咽喉科医。地域の患者が必要とする診療提供をめざし、アンケート箱の設置やホームページのAIチャット導入などで患者の声を集め、ニーズに応える取り組みを進める。内視鏡画像による診療の「見える化」、経鼻インフルエンザワクチンの提供、一般的にあまり知られていない上咽頭炎の治療など、研究者としての専門性と臨床医としての実践力を併せ持つ。「職員がハッピーでないと患者に優しくできない」という信念のもと、スタッフを大切にする温かい環境づくりにも注力。全世代に寄り添う地域のホームドクターをめざす福山院長に、診療への思いを聞いた。
(取材日2025年10月17日)
耳・鼻・喉の相談窓口として地域医療に貢献
継承開業を決めた経緯について教えてください。

前職の池田町クリニックから比較的近い場所で、横須賀で引き続き地域医療に携わりたいという思いがありました。以前は院長職でしたがオーナーではなかったため、やはり自由度が低い部分もあって。勤務医時代の幅広い経験を生かして、経営面も含めて自分の責任でどこまでできるかチャレンジしたかったんです。実際に開業してみて、子育て世代が通いやすいようキッズスペースを設置したり、靴の履き替えを不要にしたりと、思い描いた環境づくりができています。カメのモチーフを使った優しい雰囲気のロゴマークも、子育て世代の家族が来やすい環境づくりへのメッセージを込めました。
耳鼻咽喉科を専門に選んだ理由と、これまでのご経歴について伺います。
実は自分自身が鼻炎や喘息を患っていたことがきっかけです。自分の病気について理解を深めたいという思いから耳鼻咽喉科の道へ進みました。大学病院での臨床研修後は、大阪大学微生物病研究所や東京大学医科学研究所で免疫学やウイルス学の研究に没頭。特に呼吸器粘膜免疫の研究に注力し、経鼻ワクチンの基礎研究にも携わっていました。研究では高齢者のインフルエンザに関する免疫の仕組みもテーマにしていたことから、高齢者医療にも興味を持つように。その後、池田町クリニックでの在宅医療や老人保健施設での高齢者の診療、同時期に有明みんなクリニックでは小児を中心とした耳鼻咽喉科診療も経験しました。子どもの耳鼻咽喉科にすごく興味を持ち始めたのはこの頃で、研究で培った知識と、小児から高齢者まで幅広い臨床経験が今の診療の基盤になっています。
通いやすさへの工夫について具体的に教えてください。

予約の仕組みは一番取り組みたかった部分と考え、ウェブ予約システムを導入しました。ただ、患者さんの中にはインターネットが苦手な方もいらっしゃるので、受付や電話での予約枠も別に確保し、全年齢層がアクセスできる仕組みを大切にしています。予約が取れなかった場合でも当日受付がインターネットからできるアプリを導入し、順番待ちがリアルタイムでわかるようにしました。できるだけ院内での待ち時間を節約できる仕組みにしたつもりで、ホームページ上で現在待っている組数も確認できます。駐車場も8台分確保し、車での通院にも配慮。今後もさらなる工夫を重ねていきたいです。
治療の「見える化」で患者とともに歩む診療スタイル
診療で大切にされている「治療の見える化」について教えてください。

見える化は患者さんと一緒になって治療に取り組むための重要なツールだと考えており、耳鼻咽喉科用内視鏡の画像を見てもらいながら診療を行っています。特に小児診療の経験から、親御さんは子どもの鼻や耳がどうなっているのか、知りたいだろうと感じました。口頭の説明だとピンとこないことも、画像でお見せすればスムーズに納得していただけます。これはクリニックの勤務医時代に手応えを実感した部分でもあります。超音波検査機器も活用し、今後は首の腫れや甲状腺、リンパの状態なども超音波で積極的に診ていく予定です。
上咽頭炎の診断・治療に力を入れていると伺いました。
上咽頭炎は鼻と喉の間の炎症で、一般的にあまりになじみのない疾患だと思います。風邪が長引いて治りが悪い人に多く、最近では新型コロナウイルス感染症の罹患後症状との関連も注目されています。上咽頭炎の治療はBスポット療法とも呼ばれる上咽頭擦過療法を行っています。患者さんは30〜40代の働き世代で、咳や痰がなかなか治らない方が来院されることが多く、上咽頭炎の可能性も含めてよく話を聞き、深掘りすることで適切な治療につなげています。
経鼻インフルエンザワクチンについて詳しく教えてください。

基礎研究のテーマでもあった経鼻インフルエンザワクチンを当院でも提供しています。注射によるワクチンは体の内部の免疫をつくることができますが、経鼻ワクチンだと鼻や喉の表面にも免疫ができるという大きなメリットがあります。注射が怖いというお子さんには「注射を打たないワクチン」として一つの選択肢となります。また、万病のもととされる睡眠時無呼吸症候群にも注力していきたいと考えています。隠れた睡眠時無呼吸症候群の患者さんはたくさんいるはずですので、積極的な検査や啓発活動を行い、地域の健康増進に貢献したいです。
地域が望む医療を、スタッフとともに提供したい
地域のニーズに応える診療について、どのようにお考えですか?

当院は耳鼻咽喉科医院ですが、専門に特化しすぎることなく、地域に根差したクリニックとして、地域の皆さんが何を求めているのかを踏まえ、ニーズに応えられる診療を提供したいと考えています。そのため、受付にアンケート箱を設置していますし、11月からはホームページにAIチャットを導入しました。寄せられるご意見やご質問を見れば、求めているものが見えてくるかなと期待しています。開業して3ヵ月ほどたった現在は、前身の医院から通ってくださっている患者さんが多い一方、だんだんと地域のお子さんや新規の患者さんも増えてきています。なかなか治らない風邪症状の場合、アレルギー性鼻炎が見つかるケースもありますので、耳・鼻・喉に何か気になることがあったら、ひとまず来ていただけたらいいなと。耳鼻咽喉科と他科の境界線上にあるような症状や疾患も、幅広く対応してまいります。
スタッフさんへの思いについてもお聞かせください。
職員に優しいクリニックでありたいと考えています。職員がハッピーでないと患者さんに優しくできない。その思いから、職員が満足できる環境づくりを最優先に取り組んでいます。今後の展望としては、地域の方々のクチコミで認知されるような、親しみやすいクリニックになっていきたいです。風邪をひいたら「あそこ行けばいいかな」と親御さんの間で話題に上るなどして、だんだんと皆さんに周知され、地域に根づいていければうれしいです。職員とともに、地域に愛されるクリニックをつくっていきたいと思います。
最後に、地域の方々へメッセージをお願いします。

あまり自分の中だけで悩まずに、まずは気軽にいらしてください。患者さんが多く待っていると気兼ねなさる方もいらっしゃいますが、遠慮なく、気になる症状を全部話してもらいたいと思います。しっかり患者さんの訴えを聞くことを第一に、一緒になって治療を進めていきます。患者さんの目を見て笑顔であいさつし、話を傾聴し、診療が終わる時には不安点がないか念を押して聞き、安心して帰っていただける診療を心がけています。よくよく深掘りして聞いていくことで違うアプローチが見つかることもあるかもしれません。丁寧な診療で地域の健康を支えていきたいです。

