井上 留美子 院長、井上 康二 先生の独自取材記事
松浦整形外科内科
(杉並区/南阿佐ケ谷駅)
最終更新日:2023/09/15

東京メトロ丸ノ内線南阿佐ケ谷駅から徒歩で約5分、閑静な住宅街に立つ「松浦整形外科内科」。父が開業した整形外科を引き継ぎ、院長を務めるのは井上留美子先生。夫で内科医の井上康二先生も2017年から同院に所属し、現在では整形外科と内科を診療する守備範囲の広いクリニックとなった。康二先生は宮古島の診療所も兼務し東京と沖縄を行き来しながら診療にあたり、留美子院長も国際スポーツ大会に帯同ドクターとして関わるなど、活動の幅広さが目を引く。クリニックを背負う2人の先生に、整形外科と内科が連携することのメリットや患者の背景をこまやかに捉えながら診療し診断をつける診療方法などについて話を聞いた。
(取材日2023年8月4日)
クリニック以外の診療にも従事、活動の幅を広げる
クリニックの来歴について教えてください。

【留美子院長】父が当院を開業したのは、私が小学1年生の時でした。私が医師になる前に父が亡くなり、当初は医局の先生方に当院の運営を手伝っていただきました。私自身は医師3年目からここで診療を始め、あっという間に26年がたちました。以前は、父のクリニックを継がねばという使命感で気を張っていたところもありましたが、だんだんと私にとって心地良いクリニックづくりができているように感じます。気がつけば父よりも長く、当院の院長を務めていることになり、現在は主人で内科医でもある康二先生が、金・土にいてくれるので心強いですね。
内科医として、宮古島でもご活躍されていると伺いました。
【康二先生】今年の4月から、ご縁があって月・火・水の週3日は宮古島での勤務を始めました。木曜日は、これまで勤務していた荻窪病院で非常勤医師として診療を続けていますので、荻窪病院との病診連携は強みの一つになっています。病院勤務時代は、循環器を専門として長く患者さんを診ていましたが、現在は当院で内科全般の診療をしています。ですので当院での金・土の診療では、お体の不調があれば何でも気軽にご相談いただきたいと思っています。精密な検査や専門的な治療が必要になった場合は、適切な病院へご紹介します。妻の専門分野である整形外科と内科という真逆でもある分野が一緒に診療しているからこそ、包括的に患者さんをサポートできると思います。
クリニックを拠点にしつつ、医師としての幅も広げられているんですね。

【留美子院長】以前は、目の前の患者さんに真摯に向き合うことで精いっぱいでした。子育てもしながら院長としての責任を果たそうと日々自分との戦いで、深く勉強できる時間は取れませんでした。ですが最近は、私なりの軸が自然とできあがり、少し余裕が持てるようになりました。大学に戻って運動療法としてのヨガの研究をしたり、国際スポーツ大会があった際には帯同ドクターとして大会のお手伝いをしたりと、クリニック外の仕事も少しずつ広げることができています。康二先生をはじめ慣れたスタッフも頼れますし、いい意味でこのクリニックに縛られすぎずに、方向性を広げているところです。
痛みの背景を探る診療に注力
整形外科診療ではエコー検査機器も導入されたのですね。

【留美子院長】導入以前は身体所見とエックス線による診療でしたが、エコーを使うことで大きく変わりました。丁寧に触診したり、エックス線検査でわからなかった骨折でもエコーの画像ではきちんと確認できることがあります。皮下腫瘤などもはっきり見て診断できますし、切れた靱帯や筋繊維などの治療経過もビジュアルで確かめることができます。見たい部位をスライスして断面図にすることができますので、エコーを活用してより適切な診察・診断を行っています。また、エコー画像を見ながら説明できるため、患者さんの納得度が高くなり、治療に前向きになっていただけると感じています。
患者さんとのコミュニケーションで心がけていることを教えてください。
【留美子院長】一口に「痛み」といってもいろいろなタイプがあります。整形外科だからといって注射や手術だけで対処するのではなく、生活習慣、ストレス、家族関係など、痛みの背景に隠れているさまざまな要因まで広い視野で考えていく。この方針を、とても大切にしています。そして、何より診断がついて初めて治療が始まりますから、まずは適切に診断をつけることにこだわっています。私自身が詳しくない分野に関しては、他院にいる専門科の医師の知見も聞き入れながら診断をつけるようにしています。とにかく患者さんがなるべく早くその先の治療に進めるように、という気持ちでいます。
康二先生は急性期病院を経験されていますが、普段診療中に大事にされていることは?

【康二先生】当院の内科には、心臓病ではないけれどその前段階の高血圧や糖尿病を持っている方や、かつて入院していたけれど現在は病状が安定しているといった方が多く来られます。そうした患者さんが将来心臓病を発症しないため、あるいは再入院を繰り返さないための予防に努めることが、当院の使命だと思います。常日頃心がけているのは、毎回の診療で必ず一つ、「患者さんにとって何か意味のあるもの」を持って帰っていただきたいと考えています。というのも患者さんは毎回お忙しい中来院され、待合室でも時間を費やしているわけですから、現状のままで良い場合でも改善すべき点がある場合でも、ただ薬をもらって帰るだけにならないように、今日診察を受けて良かったと思っていただける「何か」をお伝えして診察を終えるようにしています。
整形外科と内科が連携する強み
留美子先生は「手の外科」「リウマチ」「スポーツ障害」がご専門ですね。

【留美子院長】もともとスポーツは好きでしたが、いざ医局に入って手術をするとなったときに、男性のアメフト選手の脚を持ち上げたりすることは体格的にも難しくて。顕微鏡をのぞいての手術などは結構自分に向いていたので、手の外科を専門にするようになりました。また、うちの子どもたちもスポーツをよくするのですが、成長するにつれて、運動時に起こりがちな“教科書的”なケガをいっぱいしていたので、それは整形外科医としても本当に勉強になりました。成長期の体を考えるとき、やはりスポーツは大きく関わってきます。リハビリテーションや運動理論も自分自身、関心の強い分野だったので、ヨガの研究をするようになったのもそうした入り口からでした。
内科医師の康二先生のご専門はどのような分野でしょうか?

【康二先生】専門は循環器内科で、狭心症や心筋梗塞といった冠動脈の疾患や心臓の機能が低下した心不全の治療を行っています。心臓の病気と聞くとあまり動いてはいけないと思っている方も多いのですが、逆に心臓病だからこそリハビリとしての運動療法を重視しています。具体的には有酸素運動と低強度の筋肉トレーニングがメインですが、「心臓病になっても楽しく動けますよ」ではなく、「病気そのものを積極的に改善するために運動が必要」という考え方です。薬を毎日服用するのと同じように、毎日運動することで体は良くなっていくのです。
一つのクリニックに整形外科と内科の両方があることのメリットを教えてください。
【康二先生】特にご高齢の方の場合、整形外科と内科の2つの領域で問題を抱えている方が多くいらっしゃいます。内科でいえば、成人の2人に1人は高血圧症といわれていますから、整形外科で来院された方でも、内科の診療を必要とする方がたくさんいるはずです。留美子先生との連携はスムーズで、複数のクリニックに通わずとも内科と外科、2つの視点から同じ日に診療を受けていただけます。
【留美子院長】整形外科の診察をしていて、運動機能的には問題なさそうだけれど、胸が苦しくて息切れをしたり、足がしびれる、むくむといった相談を受けた場合、内科的なチェックがすぐにできるので私の安心感も大きいです。整形外科と違い、内科疾患は直接的に命に関わる場合があります。その都度他院に連絡を取ったり紹介状を書いたりというと、時間がかかってきてしまいますので、患者さんにとってメリットは大きいと感じています。
読者にメッセージをお願いします。
【留美子院長】この痛みは何科に行けばいいんだろうと迷ったら、まずは整形外科に来てもらえればと思います。そこで診断をつけることで、その先の治療に進むことができますし、専門科での治療が必要な場合には、そこにいくための窓口や過程として利用していただくのでも構いません。当院は子どもから働き盛りの方々、高齢者まで幅広い層の患者さんが来院されますので、ぜひ気軽にご相談に来ていただければと思います。