前島 早代 院長、森 逸平 先生の独自取材記事
山王リハビリ・クリニック
(大田区/石川台駅)
最終更新日:2023/12/06
東急池上線洗足池駅または石川台駅から徒歩9分、住宅街の中に所在する「山王リハビリ・クリニック」。同クリニックを開業した前院長の後を継いで2023年5月に院長に就任した前島早代先生は、森逸平先生らスタッフとともに「より良く生きるために」というクリニックの理念を継承して日々の診療にあたっている。リハビリテーション科と同時に整形外科、内科を掲げて広範囲の診療に対応する同クリニックでは、訪問診療にも対応するほか、デイサービス施設や運動療法施設などとも連携し診療にあたる。スタッフが束になって得意分野を分担し、強力な体制をつくりたいと語る前島院長と森先生に、同クリニックの診療体制の強みや掲げるポリシーについて聞いた。
(取材日2023年9月29日)
関連施設と連携し、デイサービスや訪問診療も充実
こちらのクリニックではどのような患者さんを診られているのでしょうか?
【前島院長】当クリニックはリハビリテーション医療をベースとして、内科、整形外科、また訪問診療と幅広く対応しています。メインとなっているのは、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によって何らかのまひがある方、あるいは失語や記憶障害などの高次脳機能障害が生じている方のリハビリテーションですね。また、近年は腰や膝の痛みといった整形疾患の患者さんも増えています。リハビリテーションは運動をするだけでなく、内科のリスク管理を行うことも大切です。例えば脳梗塞の患者さんであれば、放っておくと再発の危険性が高くなるので、リハビリテーションと並行して血糖値の管理なども行います。当クリニックでは、道路を挟んですぐ近くにある関連施設とも連携し、患者さんをサポートできるよう体制を整えています。
どのような施設と連携されているのですか?
【前島院長】当院の母体である法人が運営するデイサービス施設「ジップ・山王リハビリ」のほか、運動療法施設「ウェルネスジム山王」などと連携しています。運動療法施設については、片まひなどがあるような方も通っていただきやすい場が必要だと思い、連携するようになりました。
【森先生】また当院では、そうした施設との連携の一環として、その運動療法施設の地下にあるスタジオでは、体操のライブ配信を行っています。大田区内の他の施設に集まって来られる方々が、画面を見ながら遠隔で体操を行えるような取り組みを数年前から継続的に続けています。
治療だけでなく、予防や予後の運動も重要視されているとか。
【前島院長】病気になってしまってから治療すると、回復まで時間もお金もかかってしまいますから、まずは病気を未然に防ぐことがとても大切です。例えば女性であれば年齢を重ねると骨粗しょう症になりやすいのですが、それを早い段階でキャッチしたり予防したりすることが重要だと思います。また、回復期の途上で病院を退院せざるを得なくなった方が、引き続きリハビリテーションをしたいと来院されることもあります。患者さんの状態に合わせたリハビリテーションや装具作りなども当クリニックでは行うことができます。
地域住民がより良く生きるためのサービスを提供
お二人の得意分野についてお聞かせください。
【前島院長】以前の勤務先では脳血管障害、高次脳機能障害のある方の回復期の治療を主に担当していましが、当院では訪問診療をメインに行っています。通常、訪問診療は車で複数の区を回ることが多いですが、私たちは土地勘があり、自転車で回れる範囲の大田区内を全力で診るという方針です。というのも、患者さんとのお付き合いが長くなると、疼痛コントロールや看取りに関わることもあるため、すぐに駆けつけられる範囲で診療を行っています。
【森先生】専門はリハビリテーション科になります。医師を志したのも生活期のリハビリに関わりたいと考えたからですが、リハビリというのは総合的な診療なんですね。より良く生きるためには運動も治療も重要ですが、その人の持っている価値観、家族や環境、社会的・経済的条件などすべてが大切。リハビリはそれら全体に目を配りながら診療していくのですが、そうした点は自分に合っていると思います。
患者さんと接する際に心がけていることを教えてください。
【森先生】外来で来られる患者さんを診察室で座って待つのではなく、待合スペースに出向いて迎えます。患者さんが診察室まで来られる様子からも、わかることはたくさんありますね。前院長であった父も、同じようにしていたと聞いています。また、患者さんの価値観や感じ方は人によってさまざまですから、診察にあたっては患者さんの話をしっかり聞くように心がけています。
【前島院長】外来では、患者さんが帰るときに、痛みであれ気持ちであれ何かしらが少し軽くなって、元気になって帰ってくれるといいなと考えながら診療しています。訪問診療の際には、薬を飲み過ぎていないか、認知症の兆しがないかなど、生活全体に目を配るようにしています。また訪問診療は、ご自宅で過ごしたい方が受けられるものですから、どうすればその人がずっと在宅でより良く過ごせるかを常に考えていますね。
このクリニックを開業した前院長から受け継いでいることはありますか?
【前島院長】その地域で生きている人たちが、当院が関わることでもう一段、より良く生きられるようにと前院長は考えていたので、そのポリシーは受け継いでいますね。前院長は言ってみればカリスマ的な人物だったのですが、現在は複数の人間が束になってその代わりの体制をつくっていて、そこは以前と違う点です。けれども、それぞれに得意なことが違って分担しながらサービスを提供することで、より強力にできるのではないかと考えています。
幅広く対応するからこその強み
こちらのクリニックではリハビリテーション科、整形外科、内科、訪問診療と、幅広く対応されていますね。
【前島院長】クリニック名に「リハビリ」とついてはいますが、指を切ってしまったり虫に刺されたなどのケガで来ていただいても大丈夫ですし、当院の医師は皆、一般内科の診療もできますから、ちょっとしたことでも相談してみてください。また片まひなどで手足の筋の緊張が強くなると、突っ張ったり関節が変形したりしてしまうのですが、その緊張を和らげるためのボツリヌス毒素製剤注射の治療も行っています。ボツリヌス毒素製剤注射は、どの箇所に何単位打つのか見極めることが大切ですが、当院では専門的に学んだ医師が対応しています。また、訪問診療というとよほど重い病気でないと頼めないのではと考える方もいますが、単に加齢で体が動きにくくなったという理由でも良いのです。むしろ動けなくなっているからこそリハビリテーション等のアプローチが必要ですし、在宅で内科を診ることもできますから気軽にご相談ください。
内科もカバーしているからこその強みもありますね。
【前島院長】そうだと思います。例えば、足の裏の痛みで来院された患者さんがいたときに、採血をしてみると、実は糖尿病が進行していたということも考えられます。整形外科のみのクリニックですと、恐らくその段階では糖尿病は発見できず、もっと重い症状が現れるまで放置することになってしまうこともあるかもしれません。リハビリテーションと整形外科、内科が連携したクリニックだからこそできることがあるのです。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
【森先生】リハビリテーションとは再び適応していくということ。もちろん、リハビリテーションという言葉から一般的に連想される運動療法も行っていますが、それだけでなく内科からの診療・検査もして内服薬をお出しすることもできますし、大きな病院につなぐ必要がある場合は適切に紹介もするといったように、適応・回復のためにさまざまなアプローチを行っています。ちょっとケガをした、健康診断で高血圧を指摘されたなどのきっかけから来院していただいても良いと思います。
【前島院長】クリニックとしての入口は広いので「自分の体でちょっと気になるところがあるから」というような理由で来院していただいて大丈夫です。訪問診療についても幅広くメニューを提供できると思いますので、ぜひご相談ください。