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久保田 智樹 院長の独自取材記事

勝田台クリニック

(八千代市/勝田台駅)

最終更新日:2022/09/06

久保田智樹院長 勝田台クリニック main

京成本線勝田台駅南口から5分ほど歩いたところに「勝田台クリニック」はある。開業は1980年。以来、地域に密着した医療を提供している。2015年からは先代を引き継ぎ久保田智樹先生が院長に就任、久保田先生の専門性を生かして皮膚科に特化した診療を行っている。皮膚に現れた病状から原因をしっかりと見極めた上で適切な治療を行い、病状によって必要であれば適した医療機関への紹介なども行っている。久保田院長は、皮膚科診療においてはいかにして原因をつきとめるかが重要だという。また、一般的に皮膚科の疾患や治療に関して誤解があることも危惧しているそうだ。どんな誤解があるのか、皮膚科受診の重要性などについて話を聞いた。

(取材日2017年11月14日/更新日2022年9月5日)

目に見える症状から隠れている原因を探ることが重要

こちらのクリニックはとても古く、先生の代から皮膚科専門になったと伺いました。

久保田智樹院長 勝田台クリニック1

父が開業した当初は、専門である皮膚科と形成外科、そして泌尿器科の医師である伯父も週1回手伝っておりましたのでその3科目を標榜していました。私自身は大学卒業後、日本医科大学の皮膚科に入局し、その後、同大学の付属病院や出向先で勤務していました。2010年からは父の高齢化に伴い、私が少しずつここで勤務するようになり、2015年からは大学を退職し、院長を引き継ぐ形で診療しています。患者さんにはやはり正確な医療を提供することが重要ですから、これまでの私の経験を生かせるよう皮膚科のみを診るようにしました。週に1度、大学病院のカンファレンスや回診の見学、手術などに行き、その日は前院長の父が診察していました。ただ、前院長は2017年10月で引退しました。

皮膚科を選ばれたのはどんな理由があったのでしょうか。

父の影響もありますが、一番の理由は「診る範囲の広さ」ですね。皮膚科は目で見える、手で触れられる体のすべての部位が守備範囲となります。体表に現れた症状からどんな病気が隠れているかを診断する、いわばジェネラリストとして総合診療を行える科目だと思います。例えば、湿疹、皮膚炎といってもその病態と原因はさまざまで、白血病や膠原病、糖尿病など内科的疾患が原因という場合もあります。皮膚の「しこり」ひとつとってみても、皮膚科領域疾患であることも、整形外科領域の疾患であることもあります。このように内科的、外科的、幅広くできるのがいいと思ったからです。

皮膚科診療において最も重要なのはどんなこととお考えですか。

久保田智樹院長 勝田台クリニック2

皮膚疾患の診断には、「その疾患を知っているか」、「その症状を起こした原因について思い至ることができるか」といった点が重要であると思います。仮に、湿疹の患者さんが血液検査でアレルギーが疑われた場合、それで終わりではなく、その真の原因は何なのか、まで探ることが大切です。ご本人がまったく気づいていな日常生活や趣味の中にその誘因が潜んでいるかもしれません。あるいは毎日の内服薬が原因かもしれない。治癒のためにはまず根本的原因を思いつけるかどうかにかかっているのです。最近では医療領域が細分化されていますから、専門の医師でないと知らない、気付けないということも多々あります。そういう意味で、皮膚に何らかの症状が出た場合は、皮膚科を専門とするクリニックを受診することがとても大切になるわけです。

たとえ話を用いてなるべくわかりやすく解説

こちらにはどんな患者さんが多く受診されているのでしょう。

久保田智樹院長 勝田台クリニック3

アトピー性皮膚炎や中毒疹、じんましん、水虫、とびひ、いぼなど一般的な病気が多いですね。最近は、疥癬や帯状疱疹の患者さんも増えています。特に千葉県内ではここ数年、疥癬が流行しています。その原因は老人ホームが増えたことや、医師が疥癬を積極的に疑わないという背景もあるかもしれません。不適切な治療でひどくなってから受診されるケースは以前からありましたが、特に最近目立つようになりました。忘れた頃に皮膚がんなど悪性疾患の患者さんが来られることもあります。悪性が疑われる場合は、日本医科大学千葉北総病院や東邦大学医療センター佐倉病院、千葉大学医学部附属病院などに紹介しています。また、帯状疱疹が顔に出た場合で耳や目などに合併症がある場合は、耳鼻科や眼科の先生方と連携を取り合い治療にあたっています。

ふだん心がけていることはどんなことですか。

「なるべく早く、確実に、しっかり治す」ということが大前提です。皮膚疾患による外見が強いストレスになることも多く、生活の質を低下させることになりますので、できるだけ早く完治させたいと考えています。そのためには原因や疾患の本質を探ることが必須ですから、診察の際は時間をかけて患者さんの話を聞きだすようにしています。質問はイエス・ノーで答えるクローズド・クエスチョンではなく、なんらかの話が出るオープンド・クエスチョンでするようにしています。実は……という話に大きなヒントが隠れていることも多いですね。問診票もその方の生活習慣から健診を受けているかまで詳しく聞くようにしています。ちょっとしたことでも見逃すことのないように気をつけています。慣れから来る気の緩みを許してしまいますと、思わぬところで足をすくわれますから。どんなに経験を積んでも、「初心忘れず」です。

皮膚科では薬の使い方の指導も大切かと思いますが、伝え方で工夫されていることかありますか。

久保田智樹院長 勝田台クリニック4

まずはわかりやすい表現をすることです。例えば、アトピー性皮膚炎や湿疹の治療の際、ステロイド剤を怖がって塗らなかったりする方がいますが、それでは余計にこじれてしまいます。そこで、皮膚の炎症を火事、ステロイドを消防車に例えて「家が火事の時に、水浸しになるのが嫌だといって消防車を断ったら家が燃え尽きちゃうでしょ」というように話しています。ちょっと症状がおさまると塗るのをやめてしまう人には「一見火事が鎮静化したようでも、壁の中でくすぶる火を完全に消さないと再燃しますよ」といった具合です。患者さんは口頭説明だけですと忘れてしまうことも多いので、説明内容を紙に書いてお渡しすることもあります。薬局でも口頭と文章で説明してもらって、可能な限り薬袋に細かく印字してもらったりしています。

皮膚疾患を甘く見るのは禁物。治療は根気よくまじめに

皮膚科に対する誤解が多いことに危惧なさっているようですが。

久保田智樹院長 勝田台クリニック5

皮膚科疾患を甘く見ている人が多いのではないかと思います。命にかかわるようなことはない、すぐに治るだろうなどと軽く捉えているようです。他の科の医師にも、「皮膚病なんかで死なない」と思っている人もいます。それは大きな間違いで、重篤な疾患もあります。例えば悪性黒色腫は単なる「ほくろ」と思って放っておくと取り返しのつかない事態に陥りかねません。重症の水虫の背景に、糖尿病や免疫異常をきたす疾患が潜んでいるという症例もあります。患者さん側も皮膚疾患は簡単に治るとか、ステロイドは塗らないほうがいい、などと誤解している方が多いですね。多くの皮膚疾患は一朝一夕で治るものではなく、まじめに指示通りに取り組むことが大切で、患者さんの協力も必要なのです。

これまでで心に残ったエピソードはございますか。

いろいろな治療を受けても治らなかったけれど、先生に相談できてよかった、とおっしゃっていただいたことはとてもうれしい思い出ですね。皮膚の腫瘤で受診された患者さんで、一般血液・尿検査では異常所見はなかったのですが、内臓悪性腫瘍の皮膚転移かもと思い検査したら、やはりそうでした。まだお若かったので、早期に気づけて良かったです。逆にまさか違うだろうと思い、経過観察していたらやはり悪性だったという苦い経験もあります。幸いこの方は治療できましたが、そういうこともあり、いつも気を緩めずに誠意を持って治療にあたることを大切にしています。

では最後に今後の展望をお願いいたします。

久保田智樹院長 勝田台クリニック6

クリニック全体の見直しを図っていこうと考えています。院内の改装や電子カルテの導入など時代に即したクリニックにしていきたいと思います。診療だけでなく医師会の仕事もあり、多忙ですが、これからも診療の合間をみては、大学病院や勉強会などにも出向いて幅広い医療領域の研鑽を積んでいきたいと思います。そしてこれまで以上に地域のニーズに応えうるクリニックをめざしたいですね。

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