深沢 琢也 院長の独自取材記事
深沢医院
(船橋市/津田沼駅)
最終更新日:2021/10/12

JR総武線津田沼駅から少し喧騒を避けるようにして歩いて2分ほど、住宅地の中でもとりわけ存在感のあるレンガ色のお洒落な建物に「深沢医院」と大きな看板がかかっている。丸く抜かれた窓のデザインが効いていて重厚感もあるが、中に入ると現代的でスタイリッシュな印象。1年半前に院長職を引き継いだ深沢琢也先生は3代目だが、昔からの患者さんに加え、細やかな問診や先進の設備・検査機器などをそろえることで、新たな患者のニーズにも応えている。そんな同院の診療へのこだわりや思いを深沢院長に聞いた。
(取材日2016年6月22日)
1枚の心電図が命を救うこともある
この5月に改装されたそうですね?

1947年に開院した医院ですが、2014年の秋に院長を引き継ぎましたので、いろいろと使いやすいようにしました。昔から通ってくださっている患者さんも高齢になられているので、車いすで診察室まで入れるよう、入り口も院内もバリアフリーにしたんです。それによって、ベビーカーで訪れるお母さんも入りやすくなりました。待合室も広いスペースをとり、奥のキッズコーナーは天井がサンルーフになっているので、明るく快適にお待ちいただけます。待合室とは別にテレビを置いてますので、お子さん向けにアニメなども流しています。私自身も子どもがいるので、お子さん連れの患者さんに便利なようにと特に考えてしまいますね。
ほかに改装でこだわられた点は?
処置室も2ヵ所設けました。心電図や超音波検査のほか、生活習慣病の診断に必要な検査なども10分で結果の見られる機種を入れてあります。私は循環器が専門ですが、心電図を1枚取ればそこからさまざまなことが見てとれるものなんです。大学病院での研修医時代に上級医から言われたのは、「お腹から上に痛みがあればとりあえず心電図を取れ」ということでした。心臓の疾患では、単純に胸が痛いという症状だけでなく、歯が痛い、肩が痛い、お腹が痛い……といろいろな症状が出ているものなのです。大学病院で例えば心筋梗塞と診断された人に聞いてみると、「そういえば2年前にすごく肩が重かった」とか、「すごく寝汗をかいて大変な時期がありました」などということがあるんですね。今、かかりつけ医として診る時には、そうした症状を見逃さないことが大切です。もしやと思えば検査をして、しかるべき医療機関に送るのが役割だと認識しています。
鍼灸院も併設されたそうですね?

高齢の患者さんに接していると、やはり膝や腰の悪い人が多く、整形外科に通われながらもなかなか根治は難しいようで、鍼灸やマッサージにも通っているという声が多かったんですね。痛み止めの薬などでは、副作用で胃腸障害が出ることがあったり、腎臓の悪い方は使えないなどの制約もあったりします。体が楽になるのは、他の治療全般にとっても良いことなので、改装を機に始めました。訪問マッサージも行っていますので、当院での治療と平行して受けるとよさそうな方にはご案内をしています。
何でも診る総合診療から、専門領域の在宅医療まで経験
こちらの開院は1947年ということですね?

陸軍病院の院長だった祖父が、この場所で開業しました。当時の看板には電話番号が「船橋69」となっていますから、歴史を感じます。父はこのすぐ近くに診療所を開設しまして、当院を継いだのは伯父でした。この2階が自宅でしたから、父や伯父の姿を見て、自然と医師を志すようになりました。当初は父と同じ外科を志望していましたが、勉強していくうちに生き物としての人間の成り立ちや構造、防御機能などが興味深く、内科の面白さを感じるようになりました。また、研修医時代に当直をしていると、命にかかわるのが心臓と頭なんですね。特に心臓は救命の大きな要であることを目の当たりにして、循環器内科に進むことに決めたんです。それで、東京医科大学附属病院の第2内科に所属して、カテーテル治療などに打ち込んでいました。
開業に向けての転機は何かあったのですか?
医局で勤務する中で、高知の近森病院での経験が大きかったです。各部長の先生方がものすごく意欲的な方が多く、専門分野だけ診ていてはだめだと、風邪から肺炎、脳梗塞、膠原病、糖尿病とありとあらゆる病気を診させていただき、とても忙しかったですね。そのおかげで、総合診療的な医療を行いたいと思いました。どんな大きな病気が潜んでいるか分からないから、問診で探って、疑いが少しでもあれば検査をする。そうしたスタンスは当時の経験から身についたものです。
その後は在宅医療も経験されました。

アイスホッケー部でつながりのあった他大学のドクターが、循環器疾患の在宅診療所を立ち上げるというので、見学に行って興味を持ち、そのまま一緒に始めて、足掛け1年半ほどそちらに勤めました。実は今でも週1回勤務を続けています。というのは、大学病院でも見たことのないような重症の心不全の患者さんなどを在宅で診ているんですね。在宅用の人工呼吸器というのもありますし、強心薬の持続点滴も通常は病院内の集中治療室で行うものですが、訪問看護ステーションとの連携でご自宅でも受けられます。入院ではなくて、家に帰りたいというご希望は多いですが、それが可能になってきているんです。在宅でできる対応は、今後も増えていくでしょう。当院も昼休みと夕方の時間帯は訪問診療に当てています。伯父も歳を取ってきましたし、当院を引き継いで、こうしたスタイルを取り入れて自分なりに地域のお役に立ちたいと思ったのが、直接の開業のきっかけです。
睡眠時無呼吸症候群による低酸素状態が重大疾患の原因
睡眠時無呼吸症候群の治療にも力を入れておられますね。

これも、在宅医療を学ばせてもらった、ゆみのハートクリニックでも力を入れている治療なんです。呼吸が循環器とどう関係するのかと思われるかもしれませんが、実は、高血圧、コレステロール、糖尿病、不整脈、心筋梗塞、心不全といったものの上流に位置するのが、睡眠時無呼吸症候群だと言われているんです。今までは心疾患に至る原因として生活習慣病が考えられてきましたが、そのさらに手前に、15人に1人くらいは無呼吸の治療を必要とする人がいるというのが分かってきています。診断をして、軽度の場合は、マウスピースの使用や食事指導での体重コントロールで対応します。中程度以上の無呼吸症ですと鼻CPAPといって、お弁当箱大の機械を睡眠時に装着する治療を保険適用で行っていきます。
治療の効果はどのようなものでしょうか?
心臓血管系関連の突然死のリスクの低下につながりますが、まずは睡眠の質の改善が期待できます。睡眠が浅くなっていると、集中力や記憶力の低下を引き起こしてしまうんですね。あとは、高血圧も改善される可能性もあります。無呼吸の合併症としては、心不全や不整脈、虚血性心疾患など怖いものがありますし、逆流性食道炎も関連があると言われています。
いびきも関連があるのでしょうか?

無呼吸の大半の人はいびきをかきますが、いびきの人がすべて無呼吸というわけではありません。いびきは喉の形にもよります。実は、柏の池松武之亮記念クリニックに月1回診療に行かせていただいているのですが、先代の院長はいびきを病気として国際的に広めた方なんです。今は娘さんが引き継いでおられますが、いびき博士なんですね。音で喉の状態やどんな病気が隠れているか推測できてしまう程です。こうやってどんな分野の医療でも日進月歩ですから、さまざまな場所で勉強しながら引き出しを増やしているところです。また、内科の医師であっても開業していると、泌尿器疾患や整形外科的なもの、精神科領域も診ていく必要があると感じます。実際、学校医でもあるのでお子さんの側弯症のチェックなども行いますし発達障害もチェックして専門機関の受診を助言したりもしています。病気の兆しを見逃さず、大事に至らないよう日々診断をしていきたいですね。