深沢 琢也 院長の独自取材記事
深沢医院
(船橋市/津田沼駅)
最終更新日:2024/09/09
JR総武線津田沼駅北口から徒歩2分という便利な立地に立つ「深沢医院」。ここは75年以上の長きにわたって地域住民に寄り添っているクリニック。時代を感じさせるレンガ壁と白くスタイリッシュなエントランスが、歴史を大切にしながらも常に進化している姿を彷彿させる。2014年から3代目院長を務めているのが深沢琢也先生だ。深沢院長は、地域のかかりつけとして総合診療や在宅医療など、地域のニーズに応じた医療を提供。コロナ禍においては感染予防対策を講じ、スタッフ全員で知恵を出し合いながら対応。クリニックの特徴などについて深沢院長に話を聞いた。
(取材日2022年6月21日/更新日2024年9月2日)
スタッフの役割分担により外来診療と感染症対応を両立
こちらは長い歴史があると伺いました。
陸軍病院の院長だった祖父が1947年にこの場所に開業しました。当時の看板には電話番号が「船橋69」となっていますから歴史を感じますね。父は近くに診療所を開設し、当院は叔父が引き継ぎました。その後、2014年から私が継承しました。その際、昔から通ってくださっている患者さんも高齢になられているため、車いすで診療所に入れるよう入り口から診療室などすべてバリアフリーにしました。処置室も2室設け、検査体制も整えました。ご高齢の患者さんと接していると腰や膝の悪い方が多く、整形外科に通われながらもなかなか根治は難しいようで、針灸やマッサージに通っているという声が多かったんです。それで改装に伴い鍼灸院を併設しました。
2020年には2階の改装もなさったようですね。
はい。2階を多目的ルームに改装しました。ちょうどコロナ禍が始まった時期で、当初はスタッフの研修会などに使おうと考えていたのですが、新型コロナウイルス感染症の対応やワクチン接種会場として活用できたのが大きかったですね。複数ある丸窓を開けて換気し、広いスペースがあるので大人数でもしっかり間隔をあけて対応できました。当院では発熱時の外来も受けつけていて、発熱症状のある方や感染の疑いのある方は外の駐車場で診察し、検査はLamp法という簡易的な遺伝子検査を行っています。この検査は精度が高く、かつ検査結果は15分程度で出ます。 重症化させないためには早期に診察して診断し治療を行うのがとても重要です。そして、検査後は、オンラインで経過観察を続けるなどして、院内の感染リスクを徹底的に管理し、スタッフも一人ひとり役割分担して対応してきました。
具体的にどのような工夫をなさったのですか?
当時は毎日夜の8時、9時までミーティングして今後の対応を探っていましたね。患者さんからはいろいろ不安の声も聞かれましたから、それらに対してどうしようか、どうすれば患者さんたちの安全を守れるか、常に話し合いました。そして、スタッフ一人ひとり、電話を受ける人、検査をする人、外来診療を行う人、というように役割を決めて効率的かつ安全性に配慮した診療体制を築きました。情報も刻々と変化していく中、医師会や船橋市の保健所とも連携しながら臨機応変に対応しました。船橋市の保健所の動きが早かったことも助かりましたね。おかげでこの2年間、新型コロナウイルス感染症の対応と外来診療の両立ができたと思います。スタッフも疲弊することなく、また、スタッフひとりも院内感染者も出さずにすみました。
何に一番困っているか、話をよく聞いて解決策を提案
普段の診療ではどんなことを心がけていますか。
患者さんが今、何に一番困っているか、何に一番悩んでいるかをよく聞いて、それに対してどんな解決策があるのか、解決策の中で何が最も良いのか考えています。中には病気が治らない場合もあり、その時にはどのように向き合っていけばいいか、その方の状況に即して提案しています。また、心疾患や脳血管疾患は時間との勝負になりますので緊急性があるかどうか確実に見極めるよう努めています。患者さんの私生活について聞くこともありますね。よくお話を伺うと、仕事や会社の人間関係、家族の介護などいろいろな不安やストレスを抱えている方がとても多いのです。頭痛や胸の痛みなどを訴えた時、検査などで内科的要因が見つからない場合、ストレスやメンタルが原因というケースがあり、特にこの2年間は増えていると感じます。体と心は密接な関係があり、そのような患者さんには自分の診られる範囲でアドバイスなどしています。
こちらでは睡眠時無呼吸症候群の治療にも力を入れていると伺いました。
睡眠時無呼吸症候群は、高血圧、脂質異常症、糖尿病、不整脈、心筋梗塞、心不全といった疾患の上流に位置するといわれています。これまでは心疾患に至る原因として生活習慣病が考えられてきましたが、そのさらに手前に15人に1人くらいは睡眠時無呼吸症候群の治療を必要とする人がいることがわかっています。診断をして軽度の場合は、マウスピースの使用や食事指導による体重コントロールで対応します。中程度以上の無呼吸ですと、CPAPという機器を睡眠時に装着する治療を保険適用で行っていきます。
この治療を行うことで患者さんにはどのようなメリットがありますか。
心臓血管系関連の突然死のリスク低下につながりますが、まずは睡眠の質の改善が期待できます。睡眠が浅くなっていると集中力や記憶力の低下を引き起こしてしまうのです。無呼吸の合併症として心不全や不整脈、虚血性心疾患など怖いものがありますし、逆流性食道炎とも関連があるといわれています。CPAPは継続して使用することが大切なのですが、最近では、メンタルの不調からこの機器を使えないというケースも増えています。先ほどもお話したようにメンタルの不調から内科的症状が引き起こされることもあり、これからメンタルケアはさらに重要になると考えています。
5つのクリニックと連携して地域医療を支える
在宅医療ではどのようなことを大切になさっていますか。
ご家族のケアですね。介護している方のケアがとても重要と考えています。患者さん本人が家で過ごしたいと考えていても、介護している方が、もう無理、と言えば無理なのですね。ご家族の方がどんな思いでどのような環境で介護しているのか、何が問題なのか。そこには経済的なことや身体的なこと、精神的なことなどいろいろあると思いますが、どのようにしたらご家族や介護者の負担を軽減できるか考えるようにしています。患者さんの生きがいや趣味の話をよく聞くことも多いですね。その方にとって好きなことや趣味は、治療を続けていく上で一つの大きな強みでもあるんですよ。
地域での連携についてはいかがでしょうか。
地域にある5つのクリニックと「マルゲリータの会」という地域連携ネットワークを作っています。消化器内科や泌尿器科など専門分野の異なる先生方と毎月ミーティングをしています。やはり1人の医師、1つのクリニックだけで地域の方々を支えていくのは限界があると思います。 常に情報の共有、共感をしながら地域に必要なことは何か、ともに考えていくことが、地域の患者さんのためになるのではないでしょうか。私が診られない場合は他の先生に依頼するなど医療の相互補填も図っています。
最後に今後の展望についてお願いいたします。
これからも自分にできることをやりながら社会貢献できればと思います。地域社会で何が求められているか、地域の人々にとって何が必要か、何が大切か、よくアンテナを張って素早く発見して、どうするべきか、自分に何ができるか。決して無理することなく、自身のできることを行っていきたいと思います。