村上 光右 院長の独自取材記事
クリニック津田沼
(船橋市/津田沼駅)
最終更新日:2025/05/13

JR中央・総武線の津田沼駅から住宅地に向かって3分ほど歩くと見えてくる「医療法人社団佑仁会クリニック津田沼」。2025年に開院40周年を迎えた歴史あるクリニックで、年齢・性別を問わず悩みを抱えやすい泌尿器科と肛門外科を主軸に幅広い診療を行ってきた。院長を務める村上光右先生は千葉大学医学部附属病院で研鑽を積んだエキスパート。その豊富な経験を生かし、患者の痛みに配慮した診療を心がけている。村上院長は、ベテラン医師でありながらチームで協力して行う診療を大切にし、真摯に一人ひとりの患者と向き合ってきた。昭和・平成・令和という長きにわたり医師として尽力してきた村上院長ならではのエピソードが胸に響く取材となった。
(取材日2025年4月18日)
大病を乗り越えたからこそ、医師としての今がある
クリニックの開院は1985年だそうですね。この地域で開院したきっかけを教えてください。

津田沼という地になじみがあったことが大きいです。私は広島県の出身なのですが、千葉大学の医学部に入学してから、かれこれ60年ほど津田沼に住んでいることになりますね。大学卒業後は、千葉大学医学部附属病院の外科に勤務し、救急医療と腎臓移植の手術に携わっていました。手術の現場を離れてからは、それまでの経験を生かせる泌尿器科に移り、診療を続けました。当時の大学病院は手術だけを行う医師、外来の診療だけを行う医師といった具合に、1人の医師が担う役割が限定されていましたから、全体の流れを見通すことが難しい環境でした。その中で患者さんをトータルで診ていきたいという思いが強くなって、ここに開院することに決めたんです。
人生の大半を医師として過ごす中で、印象に残っている出来事はありますか?
若い頃に大きな病気をしたことですね。大学病院で救急医療の現場で働いていたこともあり、夜遅くに帰宅して早朝に再び病院に出勤するという激務の日々を送っていました。それで体が大きなダメージを受けたのでしょう、今でいう肝機能障害で半年ほど入院することになってしまって、命の危機にあるような病状だったのです。今、医師として仕事が続けられていることは奇跡だと思いますね。病床にいる時は置いて行かれてしまったような気持ちになり非常に寂しい思いをしたものですが、今は「病気をして良かった」と思えますよ。復帰後は、泌尿器科に移って研鑽を積んでいきました。そこで苦労して身につけた技術や知見があるからこそ現在の私があるので、大きな転換点だったといえます。
闘病生活も含めて、開院前の経験が生かされていると感じる点は何でしょうか。

「医師の教師は患者さんである」という思いに至るようになったのは自分の病気が影響しています。長期間の入院を余儀なくされたことで、患者さんの立場や気持ちをより理解できるようになりました。診療をする上でも、患者さんから教わることが多々あります。学術的なことは大学で学びますが、「この疾患の時は、体にこんな症状が出る」ということは実際に患者さんの体を診察してわかることです。また、いち早く患者さんの痛みを取ることに念頭に置くようになったのは、私が大学病院に勤務していた頃に、救急医療の現場で培った経験からです。当院は麻酔科を標榜していますので、患者さんの痛みに対して貢献できているかなと感じています。
1人で悩まずに、まずはクリニックに相談を
村上先生がご専門とする泌尿器科の診療についてお伺いします。

開院当初は、性感染症で通院する若い男性の患者さんが多かったのですが、現在はさまざまな年代の患者さんが性別問わず来院されます。例えば、若年層の女性では膀胱炎の患者さんの割合が高いですね。尿漏れで悩む高齢者も多いですよ。なかなか人に相談しづらい症状なので、自分だけだと思い込んでしまって我慢してしまう傾向にあります。しかし、外出が面倒になったり旅行が楽しめなくなったり、生活にも支障が出てしまいますから、ぜひ泌尿器科に相談していただきたいと思います。私は患者さんが安心できるように「年を取ると尿漏れはよくあること。症状がまったくない人の方が少ないぐらいですよ」とお伝えすることもあります。それから、前立腺がんの早期発見のために当院ではPSA検査を行っています。血液検査の数値から、がんの疑いがある場合は適切な医療機関をご紹介いたします。
クリニックのもう1つの柱である肛門外科の診療についてはいかがですか?
肛門外科の主訴はお尻の痛み、出血、それに便秘の方が多いですね。便秘の症状が重くなると1週間以上排便がないというケースもあります。私は患者さんの負担を考慮して、入院が不要な日帰りの手術で済むように心がけてきました。痔の治療は、軽い症状であれば薬を使って症状のコントロールを図ります。1日に1~2回、トイレの中で頑張らなくてもスムーズに便が出てくれる状態で、出血も痛みもなければ、それが一番幸せなことですよね。皆さん「そんなのは当たり前だ」と軽視しがちですが、実はとても難しいことなんです。「痔の治療が済んだからもういいや」と油断して元の生活に戻ってしまうと、また便秘と痔を繰り返してしまうことになりかねません。
私たちが生活する上で、留意すべき点はどんなことでしょうか?

特に高齢者は体力も落ち、食も細くなる傾向にあるため、便秘にならないように注意が必要です。便秘は放置しても痛みが出づらく、医療につながりにくいという一面があることから、ご本人はもちろん付き添いのご家族にも私からお話をするようにしています。便秘になると便が太くなってしまいますし、肛門が裂けてしまって痔の原因にもなります。便や尿の漏れは、布団や衣類が汚れてしまうので、多くの方が気にして医療機関を受診するのですが、便秘は「手がかからないからいいか」と思って、後回しになってしまいがちなんです。体に必要ないものが便や尿になって出るべきものが、体に蓄積してしまうリスクをもっと深刻に考えていただきたいなと思っています。
チームで患者を支えるクリニックづくり
診療の行う上で大切にしていることは何ですか?

開院当初から私1人で診療を行うのではなく、複数の医師でチームを組んで診療を行う仕組みづくりを大切にしてきました。それに、これからの医療は医師だけではなく、クリニック全体が一丸となって総合的にやっていく時代になってきていると感じます。私は院長という立場ですが、ピラミッドの頂点にいるとは考えていません。私は診療部門の技術者であり、組織の一員という考えで仕事をしています。当院のスタッフはそれぞれが一生懸命に勉強をしていますし、今は私があれこれ言わなくても自分から率先して動いてくれます。患者さんの気持ちに寄り添うことのできる優しいスタッフがそろっているので、ありがたいと思っていますよ。まさに「チーム・クリニック村上」ですね。
医師としての長い道のりを振り返ってみて、改めて感じることを教えてください。
これまでさまざまな人と接してきましたが、医師としてこれまでやってきた蓄積があるから、自分の話を納得して聞いてもらえるのでしょうし、そういった点では医師になって良かったなと思いますね。もともと私は自分の信念を言葉にするタイプの人間だったので、将来の職業について考えた時に、会社勤めは向いていないと感じて、何か技術を身につけようと決めたんです。当初は獣医師になろうとしたのですが、高校の担任から「人間を診るのはどうか」と言われたのがきっかけで医学部に進学しました。今こうして振り返ってみると、医師という仕事は患者さんを診るのが好きで、こつこつと努力できる人がやるのが、社会のためにも役立ちますし一番良いと思うようになりましたよ。
最後に、読者へのメッセージをお願いいたします。

病気は誰でもなるものですから、なるべく軽い症状のうちに治療をしていきたいですよね。残念ながら治らない病気もあるのですが、基本的に患者さんは自分で治す力を持っているのです。その治す力を技術と薬でサポートするのが医療の役割だと考えています。患者さんは自分で通院する医療機関を選ぶことができますから、規模の大小に関わらず、ご自身が「この先生がいいな」と思った医師の診療を受けることが心の安らぎにもなりますし、病気にも良い影響を及ぼすのではないでしょうか。特に泌尿器科や肛門外科はなかなか人に相談しにくい部分でもありますから、相性の合う医師に診療してもらうことで、心も体も楽になれると思っています。