熊川 まり子 先生の独自取材記事
林田医院
(さいたま市中央区/与野本町駅)
最終更新日:2025/08/08

与野本町駅、与野駅から徒歩10分の住宅街に立つ「林田医院」。ログハウス調の温かい外観が印象的な同院では、林田和也院長と娘の熊川まり子先生、息子の林田啓(さとし)先生の家族3人が、それぞれの専門性を生かして診療にあたっている。中でも熊川先生は消化器分野・肝臓内科分野に加えて、「超音波機器は私の第2の手」と語るほど超音波検査に情熱を注ぎ、診察中でも気になる所見があればその場で検査を行う。「医師だからと気構えることなく、心配な時になんでも相談できる人と考えていただければ」と明るく話す熊川先生に、父から受け継いだ地域医療への思いと、家族3人でつくり上げる理想の医療について聞いた。
(取材日2025年7月18日)
父から受け継ぐ地域医療と家族の専門性
1993年の開業から30年以上、地域医療を支えてこられたそうですね。

父である院長は、さいたま赤十字病院で消化器外科の副部長を務めていましたが、子どもたちとの時間を大切にしたいという思いと、地域医療への貢献を望んでこの医院を開業しました。当時私は小学生でしたが、医師になるよう言われたことは一度もありません。自然なかたちで医師をめざすようになったんです。開業当初は両親の働く姿を見ていただけでしたが、今では父の思いを受け継いで、弟とともに3人で診療にあたっています。父への尊敬の念は子どもの時から変わっていません。内科・消化器分野を専門にする父、内科・消化器・肝臓疾患・超音波を専門にする私、内科・循環器専門の弟。それぞれの専門分野を結集して、より良い医療を提供できるよう尽力しています。
熊川先生が消化器内科、特に超音波検査の道に進まれたきっかけは?
初期研修の時に、父の姿を見ていたこともあったり、おなかを診て幅広い治療ができる消化器分野に興味を持ちました。転機となったのは、大学時代に出会った超音波の世界です。日本大学病院(旧・駿河台日本大学病院)で小川眞広先生という超音波の専門家に出会い、「林田やってみるか」と声をかけていただいたことがきっかけでした。技術的に習得が難しく、上手になるまでものすごく時間がかかるため若手の医師に敬遠される分野なんです。でも使いこなせるようになると見えることが格段に違う。こんなにいい機器なのに活用されていないのがもったいないと感じました。その魅力を伝えたいと研究班に入り、発表の機会もいただきながら9年間ほど超音波を追究しました。当院で行う超音波を用いる検査・治療に非常に生きていますね。
弟の啓先生も含め、家族3人で診療されている強みとは?

地域のかかりつけ医でありながら、一般内科から生活習慣病、内視鏡検査、超音波検査、消化器内科、循環器内科まで幅広い医療サポートが可能なことです。弟は心電図やいろいろな検査データから病状を読み取っていくのが得意で、循環器の世界の面白さに魅せられたそうです。結果的に私たちの専門分野がうまく分かれました。3人とも専門的な研鑽を積んできましたので、幅広くも専門性の高い医療を気軽に受けられるのが利点です。患者さんが循環器の症状で来院しても消化器疾患が見つかったり、その逆もあったり。お互いの領域の疾患を行ったり来たりしても大丈夫なように、患者さんのあらゆる面を診てあげられる、小回りの利く「小さなチーム医療」を実践しています。
超音波検査への情熱と患者本位の診療体制
「超音波機器は第2の手」とおっしゃる超音波検査の魅力とは?

超音波はCTやMRIと違って、自分で手を動かした結果を自分で判断しなければならない責任の大きい検査です。しかも、やればやるほど奥が深く、だからこそエキスパートをめざして極められる分野でもあるんです。通常は臨床検査技師さんなどに任せることが多い中、私は検査から診断、治療まですべて自分で行います。2階には先進機器も完備した検査室もありますが、1階の診察室にも超音波検査機器を置いているのが当院の特徴です。診察中に患者さんから「おなかのこの辺りが気になる」と聞いたら、その場でベッドに横になってもらい、すぐ超音波を当てます。別日に検査となるより、気になる箇所がわかっているその場で診ることでわかることも多く、何より患者さんをお待たせせずに安心させてあげられるのではと思っています。
内視鏡検査や各種検診など、幅広い検査体制について教えてください。
内視鏡検査についても基本的に私が担当していて、胃カメラに関しては鼻からの経鼻内視鏡のみで行います。口からよりも患者さんの負担が比較的少ないですからね。拡大観察機能のついた内視鏡による鎮静下での大腸カメラ検査とポリープ治療も行っています。年間を通して数多くの消化器系の検査を行っていますが、超音波検査の場合は甲状腺や頸動脈など、いろんな部位の検査ができるので件数は特に多いですね。さいたま市の検診も婦人科以外はすべて当院で完結できるので、かかりつけで通っていただいている患者さんには、すべての方に受けていただくようお話ししています。また当院では、便秘や過敏性腸症候群に特化した外来も設けています。一般的にあまり注目されない疾患ですが、きちんと診療することで患者さんのQOL向上にもつながりますので、お悩みの方は一緒に診て差し上げたいと思っています。
診療で大切にされていることは?

父の代からの方針ですが、薬を処方する際は必要最小限にしたいという思いがあるので、本当に必要な薬だけをその方にとってベストな量で処方するよう心がけています。また、ガイドラインに沿った治療を大切にし、わからない領域については専門の医療機関に紹介するなど、しっかり線引きするようにしています。診察では治療や検査、薬について、何が必要で何が不必要なのか丁寧に説明していますが、患者さんのお話もしっかり伺うようにしています。患者さんとのお話では、父や弟は真剣に診療するあまり、少々固い一面もある一方、私は砕けたような印象を持たれるかもしれません(笑)。私としてはお友達のような感覚で相談ができる人になれたらと思っているので、患者さんには、医師が相手だからと気構えず、診療と関係ないようなことでもまずは話してほしいですね。
地域とともに歩み続ける、温かいクリニックをめざして
スタッフの皆さんとの関係も素晴らしいそうですね。

スタッフの多くが10年以上勤務していて、私が小学生の頃から知っているスタッフもいます。新しいスタッフも「長く勤務している先輩スタッフがいるなら安心」と思うようで、そういった居心地の良さや働きやすさは患者さんにも雰囲気として伝わるのではないでしょうか。患者さんの中には「最近ワンちゃん元気?」とスタッフに話しかけてくださる方もいて、長年の関係性があるからこそのアットホームな雰囲気です。私の理想は「医師とスタッフの壁がない」こと。小学校の頃から私を見ているスタッフなので、全部バレちゃっていますが(笑)、これからも皆と仲良くできたらと思っています。
今後の展望についてお聞かせください。
基本的にはずっとこのまま、今の体制を崩さずに、この地域で診療を続けていきたいですね。医院の規模を大きくしたいといった思いはなく、今までどおり勉強会などに参加して研鑽を続け、先進の医療を皆さんに届けていきたいというのが、当院の共通した思いです。来年度からは弟が常勤医となるので診療体制も充実します。おじいちゃん・おばあちゃんからお孫さんまで世代を超えて通い続けてもらえるよう、私たちも患者さんと一緒に世代交代をしていけたら、地域のかかりつけ医として理想的だと思います。
最後に、地域の皆さんにメッセージをお願いします。

ちょっとした風邪でもいいので、心配なことがあったらいつでも気軽に足を運んでほしいと思います。「こんなことくらいで受診してもいいのかな?」というときでも、それがきっかけで何か病気が見つかることもあるかもしれませんから、遠慮は不要です。当院には、それぞれの分野で専門家がいて、精度の高い検査・診断には自信がありますし、病診連携も患者さんに合った医療機関を見極めて紹介いたします。父も弟も私も、マニアックになってしまう気質があるので、ぱぱっと診るような診療ではなく、もう一歩踏み込んだ診療を提供していけると思います。温かい家庭的な雰囲気の中で、専門性にこだわった医療が受けられるクリニックとして、これからも地域の皆さんのために尽力していきます。