野口 寿行 院長の独自取材記事
のぐち内科呼吸器内科クリニック
(幸手市/幸手駅)
最終更新日:2024/10/10

東武日光線幸手駅から徒歩約10分。内科・呼吸器内科を標榜する「のぐち内科呼吸器内科クリニック」は、長年幸手市で地域住民の健康を支えてきた。住宅街の一角にあるクリニックで、駐車場が整備され広々とした清潔な待合室もあり患者の通院の負担に配慮している。「気になる症状があったらまずはご相談いただきたいです」と穏やかな口調で語る野口寿行院長。野口院長の専門は呼吸器内科で、クリニックではさまざまな呼吸機能検査も可能だ。呼吸器疾患にとどまらず、生活習慣病や発熱まで幅広く診療する野口院長に診療ポリシーや患者そして地域への思いを聞いた。
(取材日2024年8月26日)
患者から求められる開業医をめざして
クリニックの成り立ちや、医師になったきっかけを教えてください。

曾祖父が幸手市で当院を開業したのは、70年ほど前です。父が3代目院長としてクリニックを引き継ぎ、母も小児科の医師として診療していました。祖父や両親の姿を見て育ち、職業として医師がイメージしやすい環境で過ごしていたためか医師になる以外の選択肢はあまり考えたことがありませんでしたね。
研修医時代は、どのようなことを学ばれていましたか?
私は愛媛大学の出身です。大学卒業後の1年目は、愛媛大学医学部附属病院の血液内科で初期研修を受けました。当時そこでは血液疾患のほか感染症や膠原病などの病気や原因がはっきりとわからない病気の患者さんたちを診療していたので現在の「総合診療科」に近い診療をしていたんです。実家のクリニックを継ぐためにも「内科系の診療科でさまざまな病気を診られるようになりたい」と考えたこともあり、血液内科での研修を選びました。そして、初期研修2年目は兵庫県立淡路病院で勤務しました。そこでは、救急科外来と病棟で消化器内科・呼吸器科・循環器科・血液内科など診療科に関わらず多くの患者さんを診させてもらいました。
呼吸器を専門とし、クリニックを継承された経緯について教えてください。

愛媛県松山市の基幹病院で働いていた頃、呼吸器内科の部長から外来診療の担当を頼まれたことがきっかけで呼吸器の診療をするようになりました。愛媛から東京に戻ってくる時に、東京都老人医療センター(現・東京都健康長寿医療センター)で勤務することになり呼吸器内科への所属を決めました。血液内科は病院での治療が中心の分野ですし、街の開業医としてより患者さんに求められるのは呼吸器内科だと考えたのです。日本呼吸器学会呼吸器専門医となり、2012年から厚生連久喜総合病院(現・新久喜総合病院)の呼吸器内科での外来勤務と並行し当院での診療を始めました。そして、2022年に私が院長に就任したタイミングで「のぐち内科呼吸器内科クリニック」に名称を変更しました。
生活習慣病から呼吸器疾患まで幅広く診療
患者さんの病状や治療内容には、どのような特徴がありますか?

高血圧症・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病の患者さんを多く診療させてもらっています。また、私が院長になった頃は新型コロナウイルス感染症が流行した時期と重なり発熱のある患者さんが圧倒的に多くなりました。その後も継続して発熱の診療を行っていて、発熱患者さん用に隔離した部屋も設置しています。
呼吸器疾患の患者さんは、どのような症状で来院されていますか?
新型コロナウイルスなどの感染症罹患後の咳が、2週間から1ヵ月続いて困っていらっしゃる患者さんが多い傾向にあります。他には、気管支喘息、間質性肺炎、慢性閉塞性肺疾患などの呼吸器疾患の方も受診されています。感染症罹患後に咳がある患者さんがしっかり検査すると気管支喘息が判明する可能性もあり、気管支喘息で通院される方は増えている印象がありますね。最近では「睡眠時に呼吸していない」と家族に指摘されて睡眠時無呼吸症候群の検査目的で来られる患者さんも増えています。埼玉県加須市や、茨城県などの遠方からいらっしゃる患者さんもいます。遠方の患者さんに当院を受診した理由を聞くと「近所に呼吸器内科がないので、インターネットで探して来院した」と言われることも多いですね。現在は原則的に小学生以下の小児は診ていません。私と父で中学生を含めて成人の患者さんを診療しています。
こちらでは、さまざまな呼吸機能検査が可能と伺いました。

スパイロメトリー(肺機能検査)、FeNO(呼気一酸化窒素濃度)測定、モストグラフ(呼吸抵抗検査)などの呼吸機能を調べるための検査が可能です。咳が続いている時は、FeNO測定をよく実施します。FeNO測定は、気管支喘息の患者さんに多い「好酸球性気道炎症」と呼ばれるアレルギー反応の一種が肺の中でどの程度起こっているかを調べるための検査です。気管支喘息の診断基準にFeNO測定結果は含まれていませんが、参考所見として役立ちます。FeNO測定器のマウスピースをくわえていただき、10秒程度息を吐くだけで測定でき、息苦しさがある方でも比較的負担が少なく測定できる検査です。また息を吸ったり吐いたりする時に、気道へかかる抵抗の値を調べるための検査がモストグラフで気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患の方に行う検査です。モストグラフの結果はグラフで見られるので、患者さんは検査結果が理解しやすいと思います。
検査方法の選択で、意識されていることはありますか?
患者さんの病状に応じて、なるべく負担がかからない検査を選ぶようにしています。本来なら、気管支喘息は肺の機能を検査するためのスパイロメトリーで診断基準を満たすかどうかを調べるのが基本です。しかし、発作や息苦しさがある方にとってスパイロメトリーはつらい検査でもあります。スパイロメトリーは、機械を使って患者さんに息を吸ったり吐き出したりしてもらう検査で1度実施した後に吸入薬を使用し、再度実施する必要があるからです。そのため、まずは簡便なFeNO測定をしていただき数値や症状をもとに気管支喘息の可能性があるかを説明することもあります。その上で、スパイロメトリーを希望される方は実施することもできます。
患者に伝わる話し方を大切に
患者さんと接する際や、診療で大切にされていることはありますか?

診察中はなるべく専門用語を使わず、患者さんにわかりやすい説明をするようにしています。例えばFeNO測定の結果説明だと、「息の一酸化窒素の量を測って、好酸球性気道炎症というアレルギー反応が起きているかを調べました。数値が低くても気管支喘息の方はいらっしゃいますが、これぐらいの数値から上だと気管支喘息の割合が多くなります」といった要領で説明をしています。「FeNOの値が高いから気管支喘息でしょうね」と言うだけでは患者さんには伝わりませんよね。
理想とする医師像、クリニック像はありますか?
クリニックのあるこの地域は高齢化が進んでいるため、祖父、父の代から長く通院されているご高齢の患者さんも多くいらっしゃいます。そうした患者さんたちを、最期までしっかり診ていきたいです。一方で、咳で受診されるような若い年代の方も増えています。新たに来院される方にも「ちゃんと診てもらえた」と安心していただけるように診療して、次も来ていただけるような環境をつくりたいですね。当院は患者さんの受診しやすさを考えて予約制は採用せず新患枠も設けていません。新患枠をつくるとクリニックとしては予約管理がしやすいのですが予約外でいらっしゃる患者さんは受診しにくくなってしまうため、あえて設けていないのです。
最後に、地域の皆さんにメッセージをお願いいたします。

地域にお住まいの方には、気になる症状があったらまずはご相談いただければと思います。甲状腺ホルモンの数値を心配されている方が来院されて、気管支喘息が発見されたケースもあります。患者さんにご相談いただいて、当院で治療が難しい病気に関しては適切な医療機関を紹介いたします。私に相談しづらいと思われる方も、当院のスタッフは患者さんに温かく接するスタッフばかりですので気負わずにご相談ください。