神谷 文雄 院長の独自取材記事
川口並木クリニック
(川口市/西川口駅)
最終更新日:2025/09/04

西川口駅から徒歩7分、商業・住宅地域に位置する「川口並木クリニック」。神谷文雄院長は2014年の開院以来、老若男女を問わず地域の一次医療を担いながら、神経内科の専門家として県内各所から訪れる患者の診療にあたっている。「頭痛の診療で一番大事なのは問診です」と語る神谷院長は、患者やその家族の視点に寄り添い、根気強く説明することを心がけている。獨協医科大学埼玉医療センターでの週1回の外来診療で得た知識を地域医療に還元しながら「可能なことは大学と同一水準の医療をめざしています」と語る。7人の非常勤医師とともに、頭痛や認知症、睡眠障害など幅広い神経疾患に対応。地域に根差しながら専門性を持つクリニックの特徴や、10年間の歩み、今後の展望について話を聞いた。
(取材日2025年8月8日)
地域に根差す神経内科専門クリニック
2014年のご継承以降、どのような診療を行っていますか?

内科、神経内科、小児科を標榜し、老若男女を問わずの一次医療と神経内科の専門領域の診療を行っています。専門領域は神経内科で、頭痛や神経変性疾患、認知症、睡眠障害を長年診てきています。大学病院勤務時代では脳卒中を専門にしていましたが、クリニックでは外来で来院される頭痛の患者さんが特に多いですね。物忘れ、意識障害、手足の震え、歩行障害、感覚異常などの診療が得意分野ですこの10年を振り返ると、診療できる疾患や病状が増え、だいぶレベルアップしたと思います。地域の患者さんが長年来てくださるのとともに遠方や外国人の患者さんも気軽にご来院いただいていることはありがたいことです。
幅広い年齢層の患者さんが来院されているそうですね。
0歳から認知症の95歳まで、本当に満遍なく来院されています。若い人は頭痛が多く、高齢者には認知症やパーキンソン病のような神経変性疾患が多いですね。睡眠障害は中年男性、特にメタボリックシンドロームの方に多い印象です。この地域の特色として外国の方が多くいらっしゃるので、英語中心となりますが可能な限り翻訳アプリなどを活用して対応しています。
県内各所から患者さんが訪れているそうですね。

はい、地域の一次医療を担いながらも、専門的な神経内科診療にも対応しているので、神経内科の患者さんは各所からいらっしゃいます。連携先医療機関も多く、済生会川口総合病院、川口市立医療センター、埼玉協同病院、川口工業総合病院、かわぐち心臓呼吸器病院、益子病院などが紹介先にあります。三次医療機関では、私が週1回外来を担当している獨協医科大学埼玉医療センターをはじめ、日本医科大学・帝京大学・順天堂大学・東京大学など都内の大学病院にも紹介実績が多数あります。MRI・SPECT・DAT-scanなどの専門的な検査を連携施設と協力して実施し結果の説明をクリニックで行っております。こうした広域に対応できる要素を持ちながら、地域密着の医療も両立させているのが当院の特徴だと思います。
問診で見極める頭痛と認知症への取り組み
頭痛診療で大切にしていることを教えてください。

頭痛の診療で一番大事なのは問診です。頭痛の病気でMRIやCTの画像で異常所見が出るケースは圧倒的に少ないのです。画像を調べる理由は、脳出血、脳腫瘍、動脈瘤といったごくごく少数の異常を見逃さないためです。検査を行った結果、画像上は問題のない場合が多いです。問診では頭痛の出る場所、時間、拍動感や吐き気を伴うか、前兆の有無、頻度、女性なら生理周期との関連、気候との関係など、細かく聞いていきます。強い片頭痛は市販の消炎鎮痛剤では対応できないので、トリプタン系薬剤やCGRP阻害薬の注射なども使います。
認知症診療にも力を入れているそうですね。
認知症の診療に関しても細かく診ています。軽度認知障害(MCI)に対するアミロイドベータ除去のための点滴治療も連携施設と協力して行っています。レカネマブとドナネマブという薬があり、初期投与は急性期対応ができる施設で行いますが、半年ぐらい経過して病状が安定した方はこちらで継続投与しています。認知症の場合、ご本人よりもご家族が心配されていることも多いので、ぜひご家族の方と一緒に来てほしいですね。年配の方は認知力や聴力が低下している場合もあるので、ご家族との同伴をお勧めしています。認知症以外にも多発性硬化症や視神経脊髄炎などの脱髄疾患や重症筋無力症などの神経難病に対しての先端の抗体医薬の治療も行っています。
診療で心がけていることはありますか?

患者さんやご家族の視点に寄り添って診療を進めるように気をつけています。病気の正しい理解を促すために丁寧に、根気強く説明しています。認知症の方で何か違うことを言っても否定はせず、ただし言うべきことはきちんと言います。できないことを無理やりできるようにするのではなく、できるだけ得意なところ、良いところを伸ばすためのサポートを心がけています。地域で診られるものは診て、通院が困難な人や経過が長くて落ち着いている人の受け皿として機能していきたいと考えています。
医院スタッフたちと描く地域医療の未来
非常勤医師の先生方について教えてください。

非常勤医師は7人いて、うち女性医師が2人います。皆さん優しくて親切な先生ですし、それぞれ専門分野があり、脳血管障害が専門の先生や神経免疫が専門の先生方がいらっしゃいます。私から非常勤の先生方には「じっくり落ち着いて診てください」とお願いしていることもあり、患者さんの話をしっかり聞いて、状況について細かく問診を行うようにしています。専門性を考慮して、相談を受けて次回この先生に診てもらったほうがいいなという場合は、適切な先生につなげています。私も先生方を信用していますし、先生方の信頼関係があるからこそできる院内の連携だと思っています。みんなで協力して、神経内科診療を提供できる体制を整えています。
今後の展望をお聞かせください。
神経内科の専門的な地域での受け皿として機能できるといいですね。これからの10年で重点的にやっていきたいところです。地域に根差した医療をやっていくことと、神経内科に関しては幅広く患者さんを受け入れ対応していきたいと考えています。地域のニーズに応えながら専門性も発揮していくバランスを大切にしたいです。通院が困難になった高齢の患者さんも増えていますので、そういった方々への対応も考えていく必要があります。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

気になる症状があったらお気軽に受診してください。しびれや手足の震え、歩行障害、感覚異常など、続いている症状があれば一度ご相談いただければと思います。ご本人よりもご家族が心配されている方は、ぜひご家族と一緒に来てください。お手紙を書くこともできますので、ご家族からの相談も受けつけています。ただし、風邪症状の方は申し訳ないのですが、発熱の有無にかかわらず予約で対応させていただいています。感染拡大を防ぐという意味でも必要なことなので、ご理解とご協力をお願いします。内科、小児科、そして専門の神経内科まで、地域の皆さまの健康を支えていけるよう、これからも邁進していきます。