ペースメーカーの手術で
心不全の回避をめざし快適な日常を
須賀医院
(さいたま市西区/大宮駅)
最終更新日:2025/08/13


- 保険診療
意識を失ったり、心拍が遅くなったり、一時的に止まったりする症状は、放置すると心不全に至ることや、命の危険に及ぶこともある危険な兆候だ。心拍が遅いことで起こるさまざまな不調や病気の進行を食い止める手段が、ペースメーカーを体内に入れる手術となる。意識障害、失神発作などの症状はたいへん危険なため、ペースメーカーを体内に入れるための手術は準緊急手術に該当する。ペースメーカーは大学病院などで手術を行うイメージがあるが、手術を行うクリニックもある。埼玉県さいたま市にある「須賀医院」は、そんな数少ないクリニックの一つ。院長の須賀幾(すが・ちかし)先生は循環器部門のスペシャリストで、ペースメーカーを体内に入れる手術を得意とする。そんな須賀先生に、手術の流れや留意点について解説してもらった。
(取材日2025年7月10日)
目次
検診・治療前の素朴な疑問を聞きました!
- Qどのような方が対象になるのでしょうか?
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A
意識を失ったり、心拍が遅くなったり一時的に止まったりすることで失神発作や心不全を起こす方が、ペースメーカーを体内に入れる手術の対象となります。また心拍が遅いことで活動に制限が出る、息切れや倦怠感が強く健康的な日常生活が送れないといった方も対象です。これらはとても危険な症状で、手術を2~3週間待っていたら患者さんは心不全となり動けなくなるリスクが高く、場合によっては命に関わります。迅速な処置が病気の進行を防ぐため、ペースメーカーの手術とは準緊急手術にあたります。一方で心拍が速い方は心臓に特化した人間ドックを受けたり、循環器内科や循環器外科で、投薬や手術による治療を受けたりすることが適しています。
- Q大学病院や総合病院でなくても手術は受けられるのですね。
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A
クリニックでペースメーカーに関する手術を行っているところは少ないですね。しかしクリニックでも、医師がペースメーカーに関する知識、経験、技術を十分に持っているケースはあります。先述のように、ペースメーカーを体内に入れる手術は緊急性を伴います。当院に来たことのない患者さんで手術を希望される場合は、患者さんのかかりつけ医より相談のご連絡を受け、その数日後には手術を行う流れです。また、手術の時間がかかると患者さんの出血量が増えたり合併症のリスクが高まったりするため、正確性と迅速性が必要とされます。当院では通常30分程度から、難しいケースであっても長くて1時間半ぐらいで手術を完了しています。
- Q日帰りや1泊入院で手術を受けられるのは安心ですね。
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A
初めてペースメーカーを体内に入れる手術を受ける方は、当院では24時間滞在となるため、入院のためのお部屋をご用意しています。既に体内にペースメーカーが入っていて、電池切れなどで本体を交換するための手術を受ける方は、半日滞在で終わります。この場合、朝の8時過ぎにお越しいただき、夕方の5時にはお帰りいただく流れです。当院の手術は日帰り可能というメリットのほか、先ほど少しお話ししたように手術時間が短い点が挙げられます。これにより、患者さんの体の負担や合併症のリスク軽減が望めるのです。
検診・治療START!ステップで紹介します
- 1問診と術前の注意点
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どのような症状がいつから始まったかなど、診察で詳細な問診を行った後に手術が決まるため、手術当日の問診はない。術前には、手術日までの過ごし方の注意点が伝えられる。ペースメーカーの手術を受ける人は意識を失ったり、心拍が遅くなったり一時的に止まったりするなど、危険な症状を持っているので、術前にそのような症状が発症した時には、速やかに救急車を呼ぶ、同院を受診するといった注意点が伝えられる。
- 2前夜から手術当日の準備
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食事は前日の夜の8時くらいまでに終える。手術当日に朝食を取ることはできないが、少量の水分補給はできる。術後感染を防ぐため、皮膚上のばい菌が少ない状態にするために、入浴を済ませてから自宅を出よう。検査は術前にすべて済んでいるため、当日に行うのは酸素濃度、呼吸、心拍数を監視するモニターの設置。モニターは手術台の横に設置され、体に装置を取りつけ、手術が終了するまで装着したままにしておく。
- 3手術前の準備
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手術では左側の血管からペースメーカーのリードが入ることが多いため、左腕に点滴を受ける。点滴からは抗生物質と、痛み止めと鎮静剤を合わせた液体が注入される。手術中、メスが入る直前には、この管から造影剤も注入される。手術中の尿量はモニタリングされるため、膀胱にはカテーテルが装着される。手術後は安静の必要があるので、カテーテルの装着はトイレに行かずに済むメリットも。
- 4ペースメーカーの手術
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手術室に入り、麻酔注射を受ける。呼びかけられたら目が覚める程度をめざす。麻酔が効きすぎると呼吸が止まってしまう恐れがあるため、状態を確認しながら調整してくれるそうだ。手術時間は個人差があるが初めての人は40分から1時間半ほど。交換手術だと30分ほどで終了する。しかし交換前のペースメーカーが皮膚に近い場所に入っていた場合は、新しいペースメーカーを大胸筋の下側に入れるためさらに20分ほど時間がかかる。
- 5手術後のフォロー
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手術の翌週に2回通院する。その時に傷の状態の確認を受け、皮膚の表面を止めているステープラーを外してもらう。手術は日帰りや1泊入院なので医師による傷の確認が難しいため、傷口を止めるものは溶ける素材の糸ではなくしっかりと止まるステープラーを使用する。その後はペースメーカー機能のチェックのため3ヵ月ごとに通院し、手術から1年が過ぎると、通院は半年から1年ごととなる。