鈴木 洋平 院長の独自取材記事
札幌南内科クリニック
(札幌市南区/真駒内駅)
最終更新日:2025/08/08

札幌市南区の真駒内に位置する「札幌南内科クリニック」。2023年4月の事業継承に伴い院長に就任した鈴木洋平先生は、大学卒業後の初期研修では、消化器疾患や呼吸器疾患を含む医療全般を経験し、その後も循環器疾患や腎疾患、内分泌疾患を中心に研鑽を積んできた。また、救急の現場を経験する中で、重症に至る前に健康状態の把握をし病気にかからないようにする一次予防や、一度かかった病気を繰り返さないようにするための二次予防の重要性を実感したと振り返る。同院では、一般内科診療や生活習慣病、循環器疾患など幅広く診ることで、地域医療を支えている。「病気になる前段階で患者さんを救いたい」という信念を持つ鈴木院長に、同院を継承するまでの経緯や今後の展望について尋ねた。
(取材日2025年6月17日)
循環器内科の医師としての立場から、全身を診る
医師になろうと思ったきっかけを教えてください。

私、もともとは北海道大学の工学部に入っているんですよ。大学院にも進学したのですが、就職活動を考えた時に、電子系の物づくりに進むのが自分の本当にやりたいことなのかと考えたんです。大学に入ってから生物学方面に興味を持ち始めていたのもあって。工学や電子は、新しいものをつくって、もともと豊かな人をさらに豊かにするための学問ですよね。それと比べて医学はもっとベーシックというか、基礎的な部分で、皆を幸せにするための学問なのかなと感じたんです。他にも、ちょうどそのタイミングで親族の不幸もあり、いろいろ考えた結果やってみようという気持ちになったんですよね。そこから札幌医科大学に入り直して、1年生からやり直しました。結構大変でしたが、やりたいと思った医学を学べて、今こうして医師として活躍ができているので、満足しています。
ご専門はどのように選んだのですか?
人の命を救う仕事をしたいという想いから、最初は救急科や脳神経外科、循環器内科などを考えていました。そんな中で、じっくり考えて治療をする内科医が性に合っていたんですかね。循環器内科は内科の中でも心筋梗塞などもあるので、急いで処置しないといけないことが多い分野ではあります。札幌医科大学では高度救命救急センターで、循環器救急をメインでやっていました。高度救命救急センターは、ほとんどの方が心肺停止の状態で運ばれてきて、蘇生法を行うような施設になるので、本当に1秒を争うんです。24時間体制でそういう仕事をしていましたので、日々一生懸命修行していた感じでした。最初はもう本当にオロオロしながら、自分でできることを少しでも見つけて、少しでも戦力になれるようにという一心でしたが、徐々に自分でできることも増えていき、自分の力で人の命を救うために働けることにやりがいを感じていました。
循環器内科は、やはり心臓の治療がメインですか?

心臓がメインではありますね。私は札幌医科大学循環器・腎臓・代謝内分泌内科学講座にいたんです。内分泌代謝疾患というのは、甲状腺や糖尿病などの病気のことです。そこは心臓だけではなく体全体を幅広く診ている講座でした。やはり体を総合的に診るというのがすごく大事で、例えば糖尿病患者さんの診療をする場合、血糖値だけ診れば良いわけではなくて、糖尿病が原因で起こる合併症を防がなくてはいけないんです。足の血管が詰まって足が腐ったり、腎臓が悪くなって透析治療が必要になったり、あとは動脈硬化疾患で心筋梗塞や脳卒中を起こしたりとかするんです。心臓や足の血管もそうだし、腎臓もそうだし、その辺りを全部、体を総合的に診られる科だったので、そこに魅力を感じたというのがありましたね。心臓を中心に全身を考える科だと思います。
予防医学に注力し、病気になる前に患者を救いたい
クリニックの継承に至るまでの経緯を教えてください。

胸の痛みを訴えて心臓が止まったり、救急に運ばれてくる方の多くは、健康診断や治療を適切に受けていない方がほとんどなんですよね。こうなる前にちゃんと治療を受けられていたら、と思うことがとても多くあったので、その辺りのプライマリケアを行うクリニックの仕事に興味を持つようになりました。病気になる前の段階で救いたいという想いが強くなったんですね。もちろん病気になった人を救うのは大事ですが、病気にならなければそれが一番良いことですよね。なので、チャンスがあればそういう仕事をやってみたいと思っていたんです。そんな中、「竹嶋内科クリニック」の院長先生が引退されるタイミングで、ご縁があって事業継承のお話をいただきました。そして2023年の4月にクリニック名を変え、引き継がせていただきました。
継承する一番の決め手になったのは何ですか?
この地域で医療過疎が進んできているなという印象を持ったんです。この奥の常盤地域とかになると、もう内科クリニックがないんです。そうなると、このクリニックがなくなると困る人がたくさんいらっしゃいますよね。位置的にすごく重要な場所だなと思いましたし、地域の人たちの助けになれたら良いなというのもありました。あとは、札幌市南区はご高齢の医師が引退されて、どんどんクリニックも閉まってるんです。そういう状況を考えると、ますますこのエリアで医療を続けていくというのはすごく重要なんだろうなと感じまして。だからこそ、ここに決めたという感じですね。
クリニックのコンセプトを教えてください。

基本的には予防医学に力を入れていくことです。健康診断を受けていない方や、健康診断を受けて病気を指摘されていてもちゃんと治療されていない方というのがかなり多いんですね。そういう人たちにどうやって適切な医療を提供するのかがすごく大事だなと思っています。リニューアル開業をした当時はまだ新型コロナウイルス感染症全盛期で、ワクチン接種も積極的にやっていましたので、その際に聴診したり血圧を測ったりと、丁寧に診察することで、普段医療へのアクセスのない方も必要な治療を始められるように努力していました。今も変わらず発熱者専用の外来にも力を入れており、制限はありますが、他院で受け入れてもらえなかった方についてもお断りせず、診療を行っています。
先進の知識に基づいた医療で地域医療に貢献をめざす
力を入れている診療や気をつけていることを教えてください。

動脈硬化疾患を特に力を入れて診療しています。最近、近隣の患者さんたちにも、少しずつ認知されてきているのかなという印象ですが、まだまだ課題は多いように感じています。血圧やコレステロール値の異常、糖尿病などは、症状として現れにくいんですよね。症状が出ないまま動脈硬化が進んで、どんどん血管が悪くなっていき、放っておくと脳卒中や心筋梗塞のような命に関わる病気をボンと発症するという病気なので、サイレントキラーと呼ばれています。知らない方が多いので積極的に啓発しています。あとは、古い間違った医療を信じてる方も多いと感じます。新しい知識や常識をしっかり取り入れて、伝えていかなくてはいけないなと思っています。
医師になって良かったと思うのはどんな時ですか?
「先生のおかげで助かったわ」と、患者さんが直接感謝を伝えてくれる時が、すごく満足度が高いというか、いい仕事だなと思いますね。緊急性の高い病気と思われた場合は適切にしかるべき病院へ紹介しています。私は病気を見逃さないという使命を持ってやっていますので、そういう方が手術や治療を受けて、また当院に元気に顔を出していただけた時にうれしさを感じます。
今後の目標と読者へのメッセージをお願いします。

今までどおりの信念を貫くことが大事かなと思っています。とにかく私がすごく気をつけていることは、きっちりと標準医療をやることです。標準医療というのは、今現在の医学の見地で一般的に推奨される医療のことです。医療の常識はだいたい5年間で半分が入れ替わるといわれています。そのためきちんとした医療を提供するためにはちゃんと勉強しなくてはいけないですし、しっかりと勉強を続けて、新しい知識に基づいた最適な医療を提供したいと思っています。皆さんに、ただ長生きするだけではなくて、健康でいられる時間を少しでも長く持って、幸せに生きていただきたいんです。あとは、本来だったら防げるはずの病気で不幸になる人が少しでもいなくなればと考えています。皆さんの力になれたら良いなと常に思いながら診療しておりますので、少しでも気になることがあれば、お気軽に相談してもらえたらうれしいですね。