佐野 宏行 院長の独自取材記事
佐野耳鼻咽喉科
(札幌市北区/新琴似駅)
最終更新日:2021/10/12
JR札沼線の新琴似駅より徒歩10分。新琴似通に面しており、黄色い看板が目を引く「佐野耳鼻咽喉科」は小児の中耳炎に力を入れているクリニックだ。院長の佐野宏行先生は北海道大学医学部卒業後、さまざまな病院で勤務しながら経験を積み、1993年に同院を開院。クリニックで診察を行いながらも札幌市耳鼻咽喉科医会や、札幌市医師会などの活動も精力的に行いながら地域医療への貢献に努めている。同院は開院当初より「不必要な検査、処方の少ない誠実な医療」を方針に掲げ、診療を行っている。瞳の奥に温かさを感じられる佐野院長に、診療方針を掲げるに至った経緯や休日の過ごし方などさまざまな話を聞いた。
(取材日2021年6月23日)
患者への負担に配慮した診療を大切に
まず最初に、こちらで開院した経緯を教えていただけますか?

当時は耳鼻咽喉科のクリニックも少なく需要があると思いましたが、何より医学生時代には北区に住んでいましたので、札幌の中でも特別なじみがあるエリアでした。街並みも少しずつ変わってきてはいますが、穏やかな雰囲気は変わらず、われながら良い選択だったと思っています。
「ムリ・ムダ・ムラのない診療」を診療方針として掲げているそうですね。
開院当初からたくさんの患者さんを診させていただきましたが、街中のクリニックとしては不必要な検査をしないことが、時間的にも経済的にも患者さんの負担を減らすことになるという考えに至りました。検査をしたほうが安心という方もいらっしゃいますが、耳鼻咽喉科に関しては問診と視診で判断がつくものが多いと考えています。例えば、小児の中耳炎は自然に改善に向かうことも多いのです。もちろん、まったく検査をしなくてもいいということではありませんが、初診でいきなりたくさんの検査をしなくても、経過を観察しながら、必要な時に必要な検査をしていくという考え方、つまり「ムリ・ムダ・ムラのない診療」を当院の診療方針としています。
先生の診療方針をどのようにスタッフと共有していますか?

当院のスタッフはほとんどが勤続20年以上です。私の信条とする「ムリ・ムダ・ムラのない診療」もよく理解してくれています。0歳から90歳代と幅広い年齢の患者さんが来院されますが、細かく指示しなくても適切に対応してくれるので、とても助かっています。
勤務医時代の経験を生かした診療
なぜ小児の中耳炎治療に力を入れようと思ったのですか?

市立旭川病院での研修時代の上司が、中耳炎治療の専門家でしたので、基本から応用まで幅広い症例を経験し、しっかり勉強させてもらうことができました。本当に必要な治療を見極めるためには、とにかく鼓膜の状態を注意深く観察するという基本も叩き込まれました。腫れてきたところなのか、それとも腫れが引いてきたところなのか、どの程度の腫れで発熱しているのか、などを見極められると、検査をするまでもなく視診で判断できるケースも多いのです。自然治癒に至ることも多い小児中耳炎ですので、状況を見極め少しでも通院の負担を減らし、抗生剤もできるだけ少なくて済むようにしたいと考えています。保護者さんにも症状を理解しやすいようにモニターを見ていただきながら説明をしています。
耳管通気について教えてください。
耳管通気の技術は、札幌北辰病院での研修時代に習得しました。この技術は患者さんに負担を感じさせないように行えるようになるまでかなりの経験が必要です。耳管通気は古い治療と捉えられることもありますが実際に行うと、それだけで症状の改善が見込める方も多いのです。当院は鼓膜切開をする前に、まずはトライすべき治療法の一つと考えています。
睡眠時無呼吸症候群の診療もされているそうですね。

はい。私自身、睡眠時無呼吸症候群の治療中です。現在はCPAP(シーパップ)療法といって、寝ているときに専用の機械につながったマスクを装着して、空気を気道に送り続けて無呼吸になることを防いでいく治療を続けています。私自身がCPAP療法をしていますので、マスクの装着方法など患者さんの視点でアドバイスすることもできるのが強みですね。CPAP療法は途中でやめてしまう患者さんが多いと聞きますが、当院では続けていただけるように努めています。
睡眠時無呼吸症候群について、どのような人は受診したほうが良いでしょうか?
昼間に眠気を感じることが頻繁にある方は、まずは受診してご相談いただきたいですね。例えばテレビを観ているときに眠ってしまう、観たい映画の最中に眠ってしまうなどです。一人暮らしだと気がつきにくいと思いますが、昼間の眠気を頻繁に感じる場合は睡眠時無呼吸症の疑いがありますので一度ご来院ください。
開業医として地域医療に貢献し続けていく
医師をめざそうと思ったきっかけを教えてください。

不器用な性格なので、漠然とですが一つの専門分野を極める職業に就きたいと思っていました。宇宙関係の仕事にも興味がありましたが、当時は夢のまた夢のような世界で、もう一つの興味ある分野の医学に焦点を絞りました。今は、直接さまざまな患者さんと接することができて、仕事の結果もダイレクトに把握できるクリニック診療にとてもやりがいを感じています。いろいろな病気を診断できるホームドクターとまではいきませんが、患者さんが安心して暮らすための身近な開業医としてこれからも尽力していきたいと思っています。
先生の休日の過ごし方や体調管理の方法を教えてください。
休日は家で音楽を聴くか、ゴルフに行くことが多いです。普段は無機質な診察室で一日中過ごしていますので、太陽光を浴び、体を動かしリフレッシュします。冬場はもっぱらジム通いです。以前は健康のために自宅からクリニックまで往復15kmを毎日徒歩で通勤していた時期もありましたが、徒歩から自転車、そして自動車へと年齢とともに楽なほうに流れてしまっていますね。最近は札幌市耳鼻咽喉科医会の責務も増えて休日も忙しくなり、あまり趣味の時間が取れなくなりましたが、やりがいがありますので充実しています。
今後の展望について教えてください。

開院して28年、これまで本当に多くの患者さんを診てきました。赤ちゃんの頃から診ていた患者さんが社会人になって受診されたり、またはお子さんを連れた保護者さんとなって来院されたりすることも多くなってきました。これは非常に感慨深いものですが、同時に責任を痛感します。これからも当院を受診される患者さんに真摯に向き合い、身近なクリニックとして「ムリ・ムダ・ムラのない診療」を続けていきたいと思います。

