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三浦 裕正 院長の独自取材記事

愛媛大学医学部附属病院

(東温市/愛大医学部南口駅)

最終更新日:2019/08/28

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1976年の開院以来、“患者から学び、患者に還元する病院”を理念に掲げ、県民から「愛大(あいだい)病院」と親しまれてきた「愛媛大学医学部附属病院」。大学に付属した病院として、医療、医学教育、医学研究を三本柱に、愛媛県全体の地域医療を支えている。大災害や致死的な感染症の発生時に拠点病院として迅速に傷病者を受け入れ、県内各地域の医師不足に対しては医師の派遣や技術向上の支援を行うなど、さまざまな取り組みを行い、大規模病院としての使命を担っている。今回、三浦裕正院長がそれらの一つ一つをわかりやすく説明してくれた。
(取材日2019年2月21日)

大地震、原発災害、感染症などから県民の命を守る

大規模な災害が起きたとき、どのような役割を担うのでしょうか?

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災害拠点病院として、被災地域の傷病者を受け入れる役割があります。そのために年1回、大規模災害訓練を実施します。昨年は11月18日に当院のスタッフ、東温市医師会、消防、ボランティアの方々など約600人が参加して、リアリティーのある訓練を行いました。夜間や早朝、そして休日に災害が起きた場合は、まず、職員を集めなければなりませんが、当院ではウェブ上で職員の安否や被災状況、病院に来ることができるかを確認し、直ちに災害対策本部を立ち上げて各種の指示を出します。訓練では、そうした初動の部分から、模擬患者の受け入れ、トリアージなど、一連の活動を実際に行います。大規模災害訓練の1週間ほど前には、予行演習も行い、細かく役割分担を決め、できるだけ多くの診療科、部門のスタッフが参加するように促しています。

実際に訓練を重ねてこられて、スタッフや参加者の反応はいかがでしょう?

毎年、だいたい同じ人が同じ役割を担当するような形で訓練をしていますので、回を重ねるにつれ、スタッフの動きはスムーズになってきました。愛媛県は南海トラフ地震の被害が危惧される地域ですから、当院も行政もボランティアの方々も本気で取り組み、訓練後には反省会を行って改善点を見つけます。昨年の訓練では、最初からトリアージポストが立っていましたから、そうではなくて、何もないところから立ち上げるリアルな訓練をしなければ、といった話が出ていましたね。もちろん、当院自体が大災害時に診療継続できるように、耐震化や電気、水、薬品、食料などの確保にも万全を期しています。

他に、災害医療で県民に知っておいてもらいたいことはありますか?

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当院と県立中央病院からドクターとナースを派遣し、ドクターヘリを共同運航しています。当院にヘリポートはないのですが、近くの重信川の河原に離着陸場があり、そこから救急車で迅速に重症者を受け入れることが可能です。また、原子力災害拠点病院として、伊方発電所で事故が起きたときは、八幡浜の病院などから当院に搬送するように協定を結んでいます。原爆医療の経験豊富な広島県から、専門の先生に来ていただいて訓練も実施しました。また、広い意味の災害に感染症がありますが、当院は2016年に第一種感染症指定医療機関となりました。エボラ出血熱やペストなどの一類感染症の患者さんが入院できる病床を有する病院です。まだ、一類感染症の発生はありませんが、県や警察と共同訓練も実施しました。患者さんを当院に搬送して隔離し、検査・治療し、検体を中央まで運んで原因菌を確定し、感染拡大を防ぐ対応が必要になるからです。

地域医療に貢献できる高い技量を持つ人材を育てる

地域医療の支援活動を積極的に行っておられると聞きました。

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救急では、昨年から今治市、今治市医師会と協定を結び、当院の医師2人、看護師2人を毎週土曜の夕方から日曜の夕方まで派遣して休日救急医療を支援しています。開業医の先生方も高齢化していますから、少しでも役に立ちたいという思いです。特に小児科や産科は医師が足りませんので、愛媛大学は地域の基幹病院へ若い医師を派遣し、小児周産期の救急医療を支えています。松山医療圏では松山市内の県立中央病院に救命救急センターがありますので、当院では患者さんが来るのを待つだけではなく、スタッフが県内各地に出て行って地域医療を支援するスタイルを取っています。

医学教育を行う大学病院としての特徴を1つ挙げるとしたら、何になりますか?

大きな特徴は、医学部の手術手技研修センターを活用し、ご遺体を使った実践的な手術訓練“カダバートレーニング”を行っていることです。これは、厚生労働省の実践的手術手技向上研修事業として2012年度からスタートしたもので、年間500~600人の医師が全国から受講されます。外科系はもちろんですが、カテーテル検査・治療に関わる診療科も含め、17診療科が訓練に参加します。手術手技のトレーニングには、動物を使う、シミュレーターで行うなどの方法もありますが、やはり人体を使うのが最もリアルで技術向上に役立ちます。私も2週間前に、全国から集まった10人ほどの若手医師に膝人工関節手術をカダバートレーニングで指導したところです。1人が1膝ずつ最初から最後まで執刀し、とても貴重な体験をしてもらえたと思います。

カダバートレーニングを大規模に展開されているのですね。

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これだけ大規模に実施できている施設は、あまりないかと思います。これが行えるのは、愛媛大学の解剖学教室が全面的に協力してくれているからです。その効果は大きく、外科医師の技量を高めるのは当たり前ですが、未熟な医師がいきなり患者さんにメスを入れることがないようにという医療安全面からも、カダバートレーニングの導入は世界的な流れだと言えますね。手術訓練後に、解剖で人体の構造をより詳細に再確認することも行います。例えば、「血管がこんなところを走っている」と実際に確かめることにより、より安全な手術への意識が高まります。献体いただく団体のご理解があり、医学生の解剖実習用だけでなく手術訓練用にご遺体を使うことに多くのご遺族が同意してくださっていることに、深く感謝します。

愛媛発の技術を医療の現場に届ける取り組みも行う

医師教育の面では、地域医療支援センターという施設もあるそうですね。

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はい。ここは、県内の病院で働く研修医や若手医師に対してさまざまなサポートを行う施設です。センターの3階には、60種類を超える先進的な診療シミュレーターがそろっています。ほとんどの診療科をカバーし、例えば整形外科だと関節鏡手術がバーチャルリアリティーで体験できますし、産科には高度な分娩シミュレーターもあります。勤務がハードな診療科は慢性的な医師不足ですが、この施設で興味を持つ研修医が増えればと願っています。これだけ充実したシミュレータールームは珍しいと思いますので、専門性に特化したい若手医師には特に役立つ施設ではないでしょうか。

先進的な医療技術の開発では、どのような取り組みをされていますか?

当院の予算で、先端医療創成センターという組織をつくりました。これは、愛媛県発の技術を実用化する橋渡し研究を推進する組織で、現在は5部門に分かれて先進的技術を臨床応用する取り組みを行っています。例えば、バイオメカニクス部門では、臨床医と工学系の研究者が協力して高機能な人工関節を製品として世に送り出しました。今、当院で使用する膝人工関節のうち3割程度は、ここで開発した製品を使用しています。眼科の羊膜移植、がん遺伝子分野などでも新技術が臨床応用に近づいています。

最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお聞かせください。

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まず、手術件数を増やすことが目標です。現在、手術枠を大幅に見直していますので、2019年度からかなり増やせるでしょう。もう一つは、当院のブランド力強化です。私はラジオ番組で少し柔らかい話もするなど、当院は受診しやすい病院だと発信しています。当院は、患者さん向けのさまざまな支援を1ヵ所に統合した総合診療サポートセンターを設置しています。多職種が協力し、入院する前、入院治療、そして退院して自宅や施設に戻るという一連の流れを細かく計画し、サポートし続ける組織です。例えば、整形外科の人工関節手術だったら、入院される前から退院後はどこに移っていただくか相談して決めますので、退院間際に困ることはありません。どうぞ安心して、当院に足を運んでください。

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