大西 五郎 院長の独自取材記事
Gクリニック
(今治市/今治駅)
最終更新日:2021/10/12

肛門外科と胃腸内科・皮膚科・アレルギー科を診療する「Gクリニック」は、大西五郎院長の父が1963年に開業した「大西病院」がその始まり。2002年に「おおにし肛門科ひふ科」に改称し、そして2020年7月、建物も医院名も新しく生まれ変わった。痔の手術に1ヵ月の入院を要した開業当時は、大西病院も56床の有床診療所だったが、その後治療技術の進歩で入院期間が短くなり、今や日帰り手術や痔核注射療法が主流となっている。痔の治療の変遷とともに時代のニーズを捉えた診療をめざす大西院長に、肛門疾患と関わりの深い大腸がんの話や内視鏡検査のこと、女性のための肛門内科の診療など、さまざまな取り組みについて話を聞いた。
(取材日2020年8月19日)
痔の症状と似ている大腸がんの初期症状
まずはクリニックの診療内容や特徴について教えてください。

肛門外科・胃腸内科・皮膚科・アレルギー科を標榜し、肛門外科では、痔核注射療法や痔瘻手術、便秘や便漏れに対する肛門内圧検査・治療にも対応しています。胃腸内科では経鼻胃内視鏡や大腸内視鏡を用いた検査を行い、がんの早期発見やポリープ切除などに力を入れています。皮膚科・アレルギー科の診療は日本皮膚科学会皮膚科専門医である妻が担当しており、アトピー性皮膚炎、ニキビ・水虫などの一般皮膚科診療を行っています。あと当院では女性医師による女性のための肛門内科専門の外来を開設し、安心して通える環境づくりに努めています。
どんな患者さんが来られていますか?
多いのは、痔に代表される肛門疾患の患者さんです。痔には痛みや出血・下血という症状があります。痛みだけですとその段階で来られる方は少なく、市販の軟こうで済ませるようですが、出血や下血が起こると皆さんびっくりして受診されますね。出血・下血で来られる患者さんのほとんどは、内痔核を含めた肛門疾患である場合が多いです。しかし、痔の診療は触診できる範囲が限られているので、例えばここ1年以内に大腸の内視鏡検査をしていない方、特にがんの発症リスクが高くなる40歳以上の方は、肛門疾患の診断がついた後でも大腸の内視鏡検査をお勧めするようにしています。
痔と診断された後でも大腸の内視鏡検査を勧めるのはなぜですか?

出血があった場合、それが痔だけの症状かどうかはわかりません。出血の原因は一つとは限らず、痔だけでなく大腸がんが見つかることも。実際、痔の症状で来られてがんやポリープが見つかることは多いですし、たまたまお勧めした内視鏡で大きなポリープが見つかり、その中にがんが含まれていたということもあります。また、大腸がん以外にも、難病の潰瘍性大腸炎や口から肛門まで消化管の至るところに潰瘍ができるクローン病は、肛門周囲に初発症状として出てくる場合が多いんです。そうなると肛門のその先の大腸やその上にある消化管もしっかり診る必要があるわけです。
女性医師による女性のための肛門内科診療
大腸がんが疑われる症状にはどのようなものがありますか?

下血と下痢の症状を訴えて来られる方は注意が必要です。そういう方にお話を聞くと1日に何度もトイレに行く方が多いのですが、実は直腸にできた腫瘍によって頻繁に便意をもよおす「テネスムス」という症状で、長年の痔のせいだと思っていたら実はがんが原因だったなんてこともあるので要注意です。あとは便秘もそうですね。「トイレに行っても出ない=便秘」と思っておられる方が多いのですが、腫瘍があるせいで直腸に栓がされ便が出にくくなるということがあります。このように、便秘や下痢を繰り返す、出血・下血があるという方は、一度内視鏡検査をお勧めします。
大腸や胃の内視鏡検査は、痛い、つらいというイメージがあります。
そうですね。なので当院では少しでも検査時の負担を軽減したいとさまざまな工夫をしています。まず挿入方法。大腸内視鏡の場合、大腸という臓器は曲がりくねった形状でそこに無理やり管を押し進めると腸が伸びて痛みが出るので、腸をたぐり寄せるように縮めながら最短距離で管を進めていく軸保持法を採用しています。あと、腸に空気を入れない無送気の検査を行っています。ただ、まったく入れないとカメラと腸壁の距離が近過ぎて病気を見落としてしまう可能性が高まるため、代わりに炭酸ガスを入れます。炭酸ガスは空気よりも早く体内に吸収されますから、検査後におなかが張ってつらいということもだいぶなくなりました。あとは鎮静剤ですね。眠気を催す鎮静剤を積極的に使い、患者さんが緊張したり、こわばってしまうことがない状態で検査を受けてもらうようにしています。
検査でポリープや腫瘍が見つかった場合は?

当院の大腸内視鏡は、粘膜表層をより鮮明に観察できるNBIシステムがついています。これによりポリープの性質を見極めて、将来がんになりそうなポリープについては、内視鏡検査時に切除します。しかし、すべてのポリープが内視鏡で取れるわけではありません。このポリープは根が深そうだなとか、進行しているがんが見つかった場合は、連携している愛媛県立今治病院、済生会今治病院、今治第一病院などに紹介しています。病変の状態によって適切な医療機関につなげる、その見極めも地域のかかりつけ医として大事だと思っています。
女性のための肛門内科診療も行っていますね。
そもそも肛門科自体、悪い意味で敷居が高いですし、女性にとって医師が男性の場合、抵抗があるのではないでしょうか。その敷居を少しでも下げたいと、女性医師による女性のための肛門内科診療を行っています。担当するのは私の妻で、日本大腸肛門病学会大腸肛門病専門医の私の指導のもと、問診や内診を行います。肛門科疾患やそれが疑われる症状は、誰にも相談できず悩む女性も多いと思いますので、同じ女性として気軽にご相談いただけるような外来をめざして診察しています。なお、症状や病気によって詳細な検査が必要となる場合や、手術が必要な場合は、私がその後を引き継ぎます。とにかく、敷居が高いと敬遠してがんを見落としてしまうことが一番残念なことですから、そうならないように、肛門科の悩みの最初の窓口として活用していただけたらうれしいです。
排泄に関するデリケートな症状も親身に対応
ところで先生が医師を志したきっかけは?

父の影響ですね。子どもの頃から医師として働く父の姿を見てきました。父は仕事が終わって家に帰ってくると、その日の診療の話をしてくれたんです。「今日はこんな患者さんが来てこんな治療をしたよ」とか「患者さんがすごく喜んで帰られたよ」とうれしそうに話してくれたものです。父は6年前に他界しましたが、こうしてクリニックを引き継いだ今、自分もあの時の父と同じで、患者さんに「ありがとう」「来て良かった」と言っていただけることが日々の診療の大きな支えになっています。
クリニック名について伺います。
「G」は、私の名前の頭文字と、「胃腸」を意味する「gastrointestinal」の頭文字、あと「good」のGにもかけています。「グッド」には「いい」という意味以外に「巧みな」「親しみが持てる」という意味もあるので、それらをすべてひっくるめたグッドなクリニックをめざそうという思いも込めています。あとGの音は「痔」を連想させますよね。まあこれは後になって気づいたんですけど(笑)。
先生のリフレッシュ方法は何ですか?

スペインギターです。「50の手習い」として、50歳になるちょっと前に習い始めました。でもスペインギターらしい楽曲はまだ教えてもらえず、昭和の古い歌謡曲で練習しています(笑)。あとは休みの日に時間を見つけてはスポーツジムに通って走っています。一時期は走りすぎて腰を痛めてしまったので、今は週に1〜2回ぐらいの無理のない程よいペースで続けています。
今後の展望と、読者へのメッセージをお願いします。
高齢化に伴い、便が我慢できない便漏れ、便失禁の患者さんが増えています。これは肛門周りの筋肉である骨盤底筋の衰えから起こるもので、解剖学的な構造から女性に多いとされています。これらの症状には肛門内圧検査を行い、肛門の圧力が落ちている場合はトレーニングを指導したり、便の固さ・やわらかさを調整して改善を図っていきます。排泄はデリケートな問題なので恥ずかしいなと思ってこられる方は多いんですけど、まず最初の取っかかりとして女性のための肛門内科診療を受けていただきたいですね。どなたでも気軽に受診できる通いやすいクリニックをめざしていますので、ぜひご相談ください。